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八ノ理、九ノ断 ─満つる望月、反逆の楔─  作者: 常夜千怜
一栄一辱 ─破壊、それ即ち再生なり─
2/2

第壱話 失 -八尾辰連続失踪事件-

 都内の端くれにある八尾辰(やおたつ)地区では、過疎化の影響から「ゼロから作り直す」をスローガンに大規模な再開発が行われている。その内容は、地区内のほぼ全ての建物を取り壊し、高層ビル街を作るという誰が考えても無茶な計画だ。

『……八尾辰駅前を中心とする再開発事業は好調な滑り出しを迎え……」

 自分の町が綺麗になるからか、いつもより機嫌の良さそうなニュースキャスターの声が寝起きの耳に響く。そう。誰がどう考えても無茶な計画なのに、どういうわけか好調な滑り出しを迎えてしまっている。

 かく言う僕の家にも、立ち退き依頼が来ている。依頼というか、半分強制のようなものなのだが。

 僕は二人暮らしだ。僕と彼女……ではなく妹。ブラコンの妹。鬱陶しい妹。都内の大学に通っているのだが、実家が地方なので僕の家に居候している。僕は社会人で、アニメグッズショップで働いている。

 本当にこんな計画がうまくいくのかね。そんなことを考えているうちに朝食を食べ終え、出勤の支度をする。制服はないので適当な服を着て家を出る。センスなぞ知るか。適当適当。僕は白と黒しか着ないのです。あと無地ね。

 八時出勤、十七時退勤。アニメが好きだから、という理由だけで職を選んだのだが、とても楽しい仕事とは言えない。毎日同じような作業の繰り返しで飽き飽きする。仕事ってどれもこんなもんなんですかね。まあ、僕の仕事への愚痴なんか聞いても楽しくないだろうから、これくらいにしておこう。

 なんだかんだで退勤時刻になり、帰路に着く。信号待ちで持て余した暇に、駅前のビジョンに映ったニュースを見る。こういう時にスマホをいじらないのが僕。偉い。

『三ヶ月前から八尾辰地区で発生している連続失踪事件に、十五人目の被害者が出ました……」

 八尾辰地区連続失踪事件。あんまり詳しくはないが、この地区で起こっている原因不明の失踪事件らしい。犯人が誰なのかは愚か、全くもって手がかりがつかめていない。被害者の共通項もいまいち掴めていないらしい。なんだ、お前詳しいじゃねえかと。そうだよ。勤務先で聞いたんだよ。ほえ。怖いなあ。その時はそのくらいにしか思っていなかった。

「ただいまー。」

 返事が返ってこない。まだ帰ってきていないのだろうか。おかしいな。夕方には帰ってくるって言っていたのに。私の妹─真弥(まや)は高校生で、最近神社巡りにハマっているらしい。今日も昼から神社に行くと言っていたのだが。

 夜九時。流石におかしい。遅すぎる。連絡もつかない。でも警察に連絡するのもなんかな、と思って、とりあえず神社に行ってみることにした。確か、「八板(やいた)神社」と言っていた。GPS共有アプリも、真弥のスマホは八板神社を示している。八板神社は、八尾辰地区のほぼ中心に位置しているらしく、僕の家からも自転車で十分ほどの距離だった。

 こんな時間に神社に行くというのはなんとも言えない恐怖があるが、妹が行方不明なのだ。そんなことは言ってられない。神社中を探し回ってみたは、真弥は見つからない。少しずつ焦り始めてきた。最初から焦ってはいたのだが、変な汗が次から次へと出ている。冬だから、暑いわけではないはずだ。GPSは動いていない。スマホを落としているのだろうか。だとしても真弥はどこへ行ったのだろうか。まずい。かなりまずい。過去にないくらい焦っていると、後ろから声が聞こえた気がして、振り返った。

「あの、何かお探しですか?」

 後ろにいたのは巫女服をきた少女だった。この神社の巫女なのだろう。とりあえず真弥がいなくなった旨を説明して、GPSがここを示していることを説明した。

「あら、それは大変ですね。妹さんはここには見当たりませんし、スマホを落としているんでしょうか。一緒に探しましょうか?」

 巫女さんのご好意に甘えることにして、とりあえずスマホがないか探してみる。そんなことよりまず警察に連絡しろと思うかもしれないが、かなり焦っていたのである。仕方ないではないか。

 結果から言うと、スマホは見つからなかった。そして、巫女さんの勧めで警察に連絡した。とりあえず明日詳しい話を聞くとのことで、明日は朝イチで警察署に行くことになった。

 何かわかったら連絡をしてくれるとのことだったので、巫女さんとLINEを交換した。やたら僕のプロフィール画面を慎重に見つめている。

「どうかしましたか?」

「え?あ、なんでもないです。九条蓮さん……?とてもいい名前ですね。」

 突然自分の名前を褒められて少し動揺しながらも軽く感謝する。巫女さんのアカウント名は「八重」だった。シンプルでかつ神社に似合う名前だなと、妹が失踪していると言うのになぜか冷静に考えている僕がいた。

 ああ、これからどうなってしまうのだろう。真弥は戻ってくるのだろうか。いや、戻ってくる。絶対に戻ってくる。そう信じるしか、その時の僕にはできなかった。

 読んでいただきありがとうございます。次話は2026年1月17日(土)に更新予定です。読んでいただけると幸いです。

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