君の寝顔に心臓が跳ねたのは、多分気のせい
無理
君の寝顔に心臓が跳ねたのは、多分気のせい
なぎとはせなを抱き上げたまま、
水族館の静かな通路を歩いていた。
青い光が揺れて、
せなの髪に反射してきらきら光る。
その寝顔は、
さっきまでの混乱が嘘みたいに穏やかで――
「……っ……」
なぎとは思わず息を呑んだ。
(……なんだよこれ……
可愛すぎんだろ……)
無愛想な顔のままなのに、
耳だけ真っ赤。
しゅいは横で歩きながら、
ちらっとなぎとの横顔を見て小さく笑う。
「……なぎと、顔……赤い」
「赤くねぇ!!」
即答したけど、
声が裏返っていた。
そして、三人は水族館の端にある休憩スペースに着いた。
大きな窓から海が見えて、
青い光が静かに差し込んでいる。
なぎとはベンチに腰を下ろし、
せなをそっと膝の上に寝かせた。
――膝枕。
「……っ……近い……」
なぎとは固まる。
(なんで俺……膝枕なんか……
いや、でも……床に寝かすのは……嫌だし……
てか……近……)
せなの頬が自分の太ももに触れていて、
その温度がじわっと伝わってくる。
「……なぎと、
それ……完全に彼氏のやつ」
しゅいが小声で言う。
「ちげぇし!!
こ、これは……その……!
床が冷てぇから……!」
言い訳が苦しすぎる。
でも、
せなの髪をそっと耳にかけ直す手つきは
どう見ても優しかった。
その時。
せなが小さく息を吸い、
まつげがぴくりと動いた。
「……ん……」
「っ!!」
なぎとは跳ねるように背筋を伸ばした。
(やべ……起きる……!
膝枕とか……絶対見られたくねぇ……!
どうすんだよこれ……!)
せなの頭が少し動く。
「……ん……なぎ……と……?」
寝言のように名前を呼ばれた瞬間――
「っっっ!!?」
なぎとは完全にフリーズした。
耳まで真っ赤を通り越して、
首まで赤い。
しゅいは横で口を押さえて笑いを堪えている。
「……なぎと……落ち着いて……」
「落ち着いてる!!
落ち着いてるから!!」
全然落ち着いてない。
なぎとは慌てて膝枕をやめようと、
せなの頭をそっと持ち上げた。
「お、おい……起きんなよ……
いや起きてもいいけど……
今は……その……!」
でも――
せなは寝ぼけたまま、
なぎとの手首をぎゅっと掴んだ。
「……や……」
小さく、弱い声。
「……離れないで……」
「っ……!!」
なぎとは固まった。
しゅいも固まった。
青い光の中で、
せなの寝顔はあまりにも無防備で、
あまりにも可愛かった。
なぎとは震える声で、
「は、離れなければいいんだろ……離れなければ……」
と呟いた。
無理




