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甘い予定の前に、怖い影が差し込む

無理

甘い予定の前に、怖い影が差し込む

まずは、予定表で今日の予定を確認する。

スマホの画面には、楽しみにしていた“水族館”の文字が光っていた。


「じゃあ……まずは水族館いこ!」


「分かった」


 なぎとは地図アプリを開き、真剣な顔でルートを確認する。

窓から差し込む朝の光が、三人の影を柔らかく照らしていた。


「まずは……ここのバスに乗るぞ」


「はーい!」


 せなは元気いっぱいに返事し、勢いよく部屋を飛び出す。


「ちょ……! 先行ったら……!」


 しゅいが慌てて手を伸ばすが、テンションMAXのせなには届かない。


 外に出ると、朝のひんやりした空気が頬を撫でた。

ホテル前の道には車が少なく、静かな朝の匂いが漂っている。


「んー、いい気分!」


 せなは深呼吸しながら、しゅいとなぎとを待つ。


「……遅いな……。よし!」


 せなは連絡アプリを開き、

「先、バス停まで行っとくね!」と送信。

スキップしながら、軽い足取りでバス停へ向かった。


 10分後。

バス停に着いたせなは、ベンチに腰を下ろす。

朝の光がベンチの影を長く伸ばし、風が髪を揺らした。


 その時――。


「そこのねぇちゃん」


 低い声が背後から聞こえた。


 あ、ナンパだ。

誰かがされてるんだろうな……可哀想に……。


 そう思っていたら、声がもう一度。


「そこのねぇちゃん!」


「……え?」


 スマホを見る手を止めて顔を上げると、

知らない男が目の前に立っていた。


「……わ、私ですか?」


「そうだよ。君、可愛いね。近くにいいカフェ知ってるから一緒に行かない?」


 にやけた笑顔。

距離が近い。

息がかかるほど。


 きもちわる……。


 まさか、自分がターゲットだとは思わなかった。

心臓がドクンと跳ねる。


(絶対行きたくない。こんな人についてく人いないでしょ……。よし、こういう時は……)


「す、すみません……。行きたいのは山々なんですが、彼氏を待っているので」


 震える声で言う。

嘘だけど、これで大体のナンパは引くはず――そう思っていた。


 しかし。


「そんなこと言わずにさ。彼氏にバレなかったら大丈夫♡」


 男は一歩近づいてくる。

笑顔の奥に、ぞわっとする気配があった。


(待って……やばい。こいつ、しつこすぎ……。無理無理無理……!)


「あ、あの……。……よ、用事思い出したので!」


 せなは立ち上がり、ホテルの方へ戻ろうとする。

だが――


 ガシッ。


 手首を掴まれた。


「いいから。早くいこう」


「っ……!」


 握力が強い。

痛い。

逃げられない。


(このままじゃ……連れてかれる……!)


「は、離してください……!」


 必死に振りほどこうとするが、びくともしない。


「ほらほら、行くよ。抵抗したら……分かってるよね?」


「ひっ……」


 耳元で低く囁かれ、背筋が凍る。

周りには誰もいない。

朝なのに、世界が急に暗く見えた。


 引っ張られるまま、足が勝手に動いてしまう。


(先に行くんじゃなかったよー……!

 なぎと……しゅい……早く来てよ……!)


 せなの心は、恐怖でぎゅっと縮んでいた。

 

無理

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