逃げ道のないカフェで泣きそうになる(届いて、私のSOS)
無理
逃げ道のないカフェで泣きそうな私(届いて、私のSOS)
カフェに連れてこられたせなは、心臓がずっと早鐘を打っていた。
店内は明るいはずなのに、視界の端がじんわり暗く感じる。
「ほら、座って」
おじさんは当然のように席を指さす。
せなは逆らえず、ぎこちなく腰を下ろした。
(どうしよう……どうしよう……)
頭の中がぐるぐる回る。
なぎととしゅいの顔が浮かんで、胸がぎゅっと痛んだ。
「あ、あの……トイレ、行ってきます……」
震える声で言うと、おじさんはにやりと笑った。
「逃げんなよ?」
「に、逃げません……」
言いながら、足はすでに震えていた。
トイレの個室に入ると、せなは鍵を閉め、壁にもたれかかった。
「っ……はぁ……はぁ……」
息が乱れる。
涙がこぼれそうになる。
(今しかない……!)
震える指でスマホを開き、なぎととしゅいにメッセージを打つ。
『ナンパされた。駅の近くのカフェにいる……助けて!』
送信ボタンを押した瞬間、涙が一粒落ちた。
(お願い……気づいて……)
深呼吸を何度もして、なんとか顔を整える。
でも、震えは止まらない。
席に戻ると――
「おかえり♡」
ドンッ。
突然、壁に追い詰められた。
おじさんの腕がせなの横で壁を塞ぎ、逃げ道が完全に消える。
「か、壁……っ」
「可愛いねぇ。あ、そういえば名前なんていうの?」
顔が近い。
息がかかる。
せなの喉がひゅっと鳴った。
「……せ、せな……です……」
「へぇ、せなちゃんって言うんだね♡」
おじさんの目がいやらしく細まる。
「ねぇ、せなちゃん。僕と付き合お?」
「む、無理ですっ……!絶対……!」
せなは首を横に振る。
しかし、その瞬間、おじさんの表情が変わった。
「……は?」
低い声。
空気が一気に冷えた。
「付き合わないと……どうなるか、分かるよね?」
「っ……!」
足が震える。
声が出ない。
喉が固まって、息すらうまく吸えない。
「ほら、黙っちゃって……可愛いねぇ」
おじさんがゆっくりと顔を近づけてくる。
「付き合ったし……キスしよっか♡」
距離がどんどん縮まる。
逃げられない。
壁が熱い。
心臓が痛いほど跳ねる。
(やだ……やだ……誰か……)
(なぎと……しゅい……助けて……)
おじさんの顔がさらに近づく。
せなはぎゅっと目をつぶった。
(もう……ダメ……っ……!)
ナンパ男、マジ終わってる。




