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103 精霊使いは協力する



「ようやく会えたな。」


「こんな所まで来て頂きありがとうございます。」


礼をとる黒髪の青年。礼を受け取る男。


「よせ。ここではアイゼンが大将だ。」


「いいえ。私は貴方に助けられなければ奴隷のまま朽ち果てていた事でしょう。ですから、私の主である事にはいつまでも変わりません。」


真面目な男アイゼンは義理堅い男でもある。またそんなアイゼンに忠誠を誓う周りの者も上位者であると認めているようで、誰一人不服な顔をする者は居ない。


「わかった。気にする事は止めておこう。」


「そうしてください。」


「では、挨拶はこれ位にしておこう。早速本題に入りたい。」


「わかりました。どうぞこちらへ。」


アイゼンに伴われ奥の部屋へと入るラムザ達。基地の奥の指令室と言える場所を抜けて会議室の様な場所へ通される。そして奥の場所へラムザは勧められ座る。そしてその左右にエリザ達ラムザの従者が座り逆にラムザの正面にアイゼンが座りアイゼンの部下が左右に座る。


「ラムザ様。今回はどのようなご用件でこちらへ来て頂けたのでしょうか?」


「言わずとも分かっているだろうが、アイゼン。お前の味方になるべくやって来たのだ。」


「やはり、そうでしたか。お気持ち感謝いたします。」


アイゼンは頭を下げて感謝を表す。そして続ける。


「ですが、そのお気持ちだけで結構です。今回の事は私個人の事。ましてやクーデターを起こした身です。ラムザ様を煩わせて申し訳ないと存じますが、ご協力頂く訳にはまいりません。」


アイゼンは言葉を選びながらも言い切った。がそれを聞いたラムザは感心した表情と想像通りと言わんばかりの顔になる。が、目が笑っている。


「そう言うと思ったよ。アイゼン。」


「え?」


「お前ならそう答える事を予想していたという事だ。しかしな、個人的な私闘を俺はしてきた。それにアイゼンを筆頭とした皆を巻き込んだのは俺だ。その俺が自分の仲間の力になる事は決して間違っていないと断言できる。逆にこんな時に協力しないなんて選択肢は俺には無い。」


強く言い切ったラムザにアイゼンは返す言葉を失ってただ聞いているしか出来なかった。


「ですが、」


「アイゼン君。無理だよ。ラムザさんは決めてここに来ているんだから。勿論私達も同じよ。」


エリザの言葉に同意するように他の面々もそして精霊達も頷いている。それを聞いて周りを見たアイゼンは感激のあまりなのか涙をその目に浮かべた。


「勝手な事をしている私に勿体ない事です。本当に良いのですか?」


「勿論だ。」


「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」


アイゼンはただ涙を流し頭を下げるのであった。



◇◇◇◆◇◇◇



【アイゼンの祖国と状況】

この世界には5つの大きな大陸がある。その中でも中央に位置し最大級の大陸がイグナシオ大陸である。そのイグナシオ大陸の中央部南に位置する山と山に囲まれた緑豊かな国は古くから魔族の王である魔王が治める国である。その魔王の系譜はかの有名なエスクダートに連なる一族であると言われているが本当の所は現在わからないというのが正しい。しかし代々魔王の名に相応しい人物が王になっており歴代魔王は一人で小国ならば10日あれば潰せる程の力があるとされている。しかし、歴代魔王が他の国へ侵攻したという話は統一国家の滅亡後には記録がない。一説によるとエスクダートが子孫に他国への侵攻をしないようにと遺言を残しているという。しかし、直系のアイゼンは先代魔王の子息でありながら隣国のスーディの人族とのハーフという背景の元、叔父にあたるヨリトモにより魔王の座を奪われる事になってしまった。そしてアイゼン本人は奴隷として売られるが、ラムザにより買われ現在は解放奴隷となっている。そして祖国の混乱を治める為に現在叔父に対してクーデターを起こしている。だが、アイゼン率いる軍は1万程度であり対するヨリトモの軍は30万を越える。30倍の軍勢に正面からぶつかる事が出来ずゲリラ戦にて対抗している現状である。



◇◇◇◆◇◇◇



「以上のように、30倍の軍勢に立ち向かうには正面からの撃破は難しく現実的ではありません。」


黙って聞いていたラムザはふうと息を吐くとアイゼンに質問する。


「聞きたいのだが、アイゼンが抑えている街はあるのか?」


「一か所だけあります。港町でヨコダテという街です。人口は10万に程の中規模な街です。」


≪ほう。よくそれほどの街を抑える事が出来ているな。≫


「ペレ様。それには理由があるのです。隣国のスーディとの貿易拠点であるので、スーディ国の援助を得やすい上に父の直轄地でもあったので縁が深いのです。」


「では決まりだな。」


「はい?」


「アイゼン。そこを王都として都市国家を設立しよう。」


「都市国家?ってあの都市国家ですか?」


「そうだ。兵は一万だが、この国が荒れている以上独立派たやすい。スーディ国に国家として認めさせて援助を求めるのだ。しかも港町であるならば、俺達【シャルマン】商会とクラウン【シャルマン】のメンバーを即座に派遣できる利点もある。これが最終では無く最初の一歩だ。」


突拍子もない発想に皆は驚愕しているがラムザ本人はニコリと爽快な笑顔を見せるのであった。





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