第79話 守りたいポジション
ルー プ 8
「さぁ、始めますよ」
「始めるって何を?」
「あなたを削除します」
「本気?」
「はい」
「僕を消したら主人公がいなくなるよ」
「大丈夫です、この作品では
みんなが主人公になるので」
「確かに、みんな主人公らしい
立ち位置にいるけど
1番前に立つ人はいなくなるよ」
「1番前に立つ人は違う人でもいいです」
「僕は、嫌かな」
「そんなに、目立ちたいんですか?」
「ううん、違う」
「じゃあ、なんなんですか?」
「1番前に立って盾になる人がいない」
「盾?」
「そう、僕は主人公だからとかじゃないけど
なるべく危ない時には
みんなの前に立ちたい」
「それで、最後の一撃を?」
「そう思ったことはないかな
そうなる展開もあるけど多分主人公だから」
「では、どういう?」
「正直、僕は主人公だとかどうでもいい
主人公だから生き残るっていう
展開も要らない」
「じゃあ、今その展開を
無くすチャンスでは?」
「でも、それは今じゃない」
「では、いつ?」
「それは、分からない
ただ、今じゃないってことはわかる」
「……よく分かりません」
「僕も分からないけど
多分主人公のポジションとか
関係なしにみんなとこの世界を冒険するのが
好きなんだと思う」
「この世界を?」
「そう、過去にでてきた設定も伏線のように
出てきたセリフも
いつの間にかなかったことに
なっているこの雑な世界を」
「ポジションを気にしないのに
なぜ、そんなに主人公としてのポジション
を守るんですか?」
「主人公しかできないことだから」
「できないこと?」
「さっき言ったみんなの盾になる」
「それは、ほかのポジション
でもできるのでは?」
「前にすぐ飛び出せるのは主人公だから」
「……削除されたら生まれ変わって
もっといいポジションになる
可能性だってあります」
「僕は、この世界がいいんだ」
「削除されればもっと
自由にできるのでは?」
「それでも、嫌だと言ったら?」
「どんなに嫌だと言っても
どうにもできないことだってあります」
「だけど、ここは夢の世界だよ
夢は、自分の頭が見せてる幻覚」
「この世界は、自分の頭じゃないです」
「だけど、幻覚なのに変わりは無い」
「……諦めの悪い人ですね」
「そういう君たちは
僕がループに気づいた時
すんなり受け入れたね」
「夢の世界の人はそんなもんです」
「じゃあ、そろそろいいかな?」
「現実の私達もあなたを
削除すると思いますよ」
「……それは、どうかな」
「え?」
カチ、HP 70




