第39話 たぶん、これが正解だ!!
「どういうことだ?」
手にした宝剣に話しかけるハージン。
その横で立ち止まるシレイス。
(簡単なことだ)
光りだす宝剣。
魔人の炎のそれとは違って、夜の暗闇を消し飛ばすほどの輝き!!
そのまばゆさに目を細めるが、視界が奪われたのは一瞬だけで、驚異的なスピードで回復したハージンの視力を奪うことは無かった。
「!!!!!!!」
驚くハージンの感情と腕の動きは同時だった。
上段から、スッと振り下ろされる剣。
切っ先はシレイスに向けられた。
驚くハージンの表情が自らの意志でないと伝えていた。
「な、なにしてるハージン?」
剣の閃光に視界をうばわれそうになったものの、手で防いでいたため視界消失を免れたディエマがシレイスに注意を促したが間に合わない。
剣の向かう方向を変えようと試みるも、上手くいかないハージン。
「う、うわぁ~~」
まるで剣に引っ張られるように姿勢を崩されてしまった。
勢いそのままに、剣は振り返り掛けたシレイスに当たる。
「シレイス!!」
あわてるディエマとハージン。
しかし、肩から胸を割いたかに見えた剣先は防御姿勢を取るシレイスの手に刺さるのみ…
「・・・・・・・」
何が起こったか解っている…
解っているが、シレイスを傷つけてしまった事実を受け入れられず立ち尽くすハージン。
その横で異変に気付いて追いついてきたジョーと村人たち。
それぞれの手に握られた数本のたいまつが周りを照らし出す。
シレイスに深々と刺さる剣先。
それを握るハージン。
ハージンの行動が理解できずに立ち尽くすしかない。
「お、おい!!!」
最初に動いたのはディエマ。
剣を持つハージンの手をムンズとつかむ。
「てめぇえ!!ハージン!!」
裏切り?
なんで?
様々な疑問符を振り払うような声を上げるディエマ。
そんなディエマに冷静に声をかけるシレイス。
「待ってください」
「??でもよ?」
「痛くない…痛くないんだ」
光の剣がぶっ刺さる腕。
血がでてない?
いや、そんなことが気にならなくなるほどの違和感に気づくジョーの声は早かった。
「な、治っていく?」
そう、シレイスの化身が解けていく…
「マジか…」
驚くハージンの脳裏に響く声がある。
(化身の法など、相反する魔力を行使すれば簡単だ…遠い昔、そう教えてくれたのは貴様だぞハージン…)
「な?俺が?」
声の主は神の弟フェルティス。
たしかそう言っていたか…
心の琴線にふれる名前。
だが、やはり顔すら浮かばぬ存在…
無論、教えたという記憶など浮かんでは来ない。
理解できないハージンは問いかける。
「誰なんだ?」
剣の中に眠ると言われる意思に語り掛けるハージンだが、
(余計な詮索は無用だ…時が戻れば再び…いや、わかる時がくるさ)
「誰と話してる?」
ディエマの問いかけに我に返るハージン。
「あ、いや…」
何と答えたらいいのか言葉の詰まるハージンに、
「あのぉ…これ以上は治せないんでしょうか?」
シレイスの泣きそうな声が響く。
見れば、化身が解けたのは肩回りまでで、そこで止まっている。
カラン……
無意識に手を離してしまっていたらしい。
落ちる剣の柄。
光の刀身は消えてしまっていた。
落ちた柄とハージンを見比べるように行き来する魔人の目線。
再び柄を握るハージン。
伸びる光の刀身。
見合うシレイスとハージン。
了解とばかりに頷くと、今度は意志を持って刀身を振り上げるハージン。
しかし、
「待って!!!」
その声にハージンの動きがとまる。
いつのまにか追い付いてきたレナンの声だった。
「何だよレナン?」
不服そうな声はディエマ。
「せっかく戻りかけたって時に邪魔すんなって…」
「違う…邪魔なんて…」
相手にしてられないとばかりにハージンに向き直るレナン。
「危ないよ。ソレはたぶん、違う」
双剣の光を指さすレナン。
ソレとは今ハージンが双剣で発動させた魔力の事らしい。
「え?」
驚くのはハージン。
「違う?」
ショックを隠せない。
「イフリートの魔力に相反する魔力を当てるってファリエスの宝剣は言ったんだが?」
「違うよ。それは攻撃する光にしか感じられない」
「何?」
「レナンの言うことは当たってると思います」
こくりとうなづくシレイス。
「あぁ、昔っからそういう不思議な感覚があるよな、お前ってばよ」
同調するディエマ。
表情の曇るハージン。
光を失う宝剣。
「迷わせちゃった?でも、その…違うと思ったから…」
申し訳なさそうなレナン。
「確かに、まだ、俺には迷いがある。相反する魔力といっても、水を主体とした魔力しか思い浮かべられなかった」
剣を握る手をおろすハージン。
「もう一度その剣に宿る意思とやらに…」
頼めないか…
ディエマが言いかけた言葉を遮る声がある。
シレイスだ…
「待ってください!!そうか?そういうことでしたか…相反する魔力…なんで気づかなかった!!一番基本的なことじゃないか!!」
「シレイス?」
「見てくれディエマ!!たぶん、これが正解だ!!」
差し出されたシレイスの手に宿る光。
?????
輝くそれは、今ハージンの手に握られている剣から発せられていた光と遜色ないものとしか感じ取れないディエマ。
キョトンとするディエマをよそに、シレイスが光を化身の残る左手にあてた瞬間、ふわっと浮き上がる鱗のようなイフリートの表皮。
「よし、成功だ!!」
シレイスが声を上げると同時に、イフリートの魔法が解け始めた。
~第40話に続く~
この小説、はじまりは中学生の時に中途半端な気持ちで描き、数ページで描くのをやめてしまった漫画でした。
でも、いつか完成したいという気持ちだけは本物でした。
そこから数十年かけて、ようやくハージンというキャラクターと向き合うことができました。
僕にとって、ハージンは同志であり、戦友です。
僕の中にあるヒーローそのものです。
絶対に後悔しない物語にしたいので、自己満足に陥らないよう、最後まで読んでてよかったと言っていただける作品を目指してまいります
すこしでも気になったら、ご一読いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。




