神などいない(28)
泣きはらした目…
シレイスを見ながら、いい年こいて情けないと思うディエマ。
想いながらも、やはりコイツは絵になる男だと嫉妬する。
そんなシレイスの顔が崩れる。
ぷっ…
「何ですかディエマ。その顔!!」
突然の反応に戸惑うが、
「あ~~おっかしい♪」
笑い声は止まらない…
楽しそうに笑うシレイスに、
「てんめぇ!人が悲しんでる顔見て、なに笑ってやがる!!」
「いや、だってねぇ?」
ハージンに同意を求めるシレイス。
ちらりと見たハージン。
歪みかけた顔を隠すように後ろを向いた…
「あ~あ~っ!!!ひでぇなハージン!!お前まで?見損なったぞ!!」
後ろ手に、いいからとでも言うように手を振るハージン。
肩が震えてる。
その様子を見ながら、あきらめるように、座るディエマ。
ハージンたちもそれに従い、シドを乗せたマントをおろす。
「フン、笑いたきゃ笑え…臆病者にはふさわしいさ…」
いじけるディエマ。
その様子に、真顔に戻るシレイス。
…………
待っていても機嫌は戻りそうにない。
「すみませんでした」
元気出そうぜという気持ちだった…
素直な気持ちで謝る。
「不謹慎でした…」
この間も、ハージンの肩は震えてる。
ツボにハマった?
確かに、目元から鼻先まで真っ赤になって、太眉の濃い顔のピエロといった顔にはなっているが…
そんなハージンの様子には気づかないディエマ。
「シドの足…治って無かったら…俺…逃げずに戦えてたんだろうか…」
「さぁ、でも、助けようとしたんじゃないでしょうか…シドと同じく…」
「そっか…そうだよな」
「えぇ、シドに頼れない以上、私達が守るしかなかったはずですから」
「ハージン…俺があの化け物に立ち向かってたら、勝てたと思うか?」
ディエマが聞く。
後ろを向いたままのハージンだったが、ようやく笑い収めたところだったらしい。
「…答えにくいが、完全にスピード差で負けてただろうな…」
普通に答えるハージンにホッと胸をなでおろすシレイス。
「…だよな」
肩を落とすディエマ。
胸を貫かれた記憶がよぎる。
「あの時、避けれなかったんだからな…やっぱ、俺は足手まといだったわけだ…」
「もうやめましょうディエマ。私も気持ちは一緒です。何度考えたところで、過ぎた時は戻ってきません…」
「そうだ。後ろを見ていても始まらない。それに、あの何本にも剣が見えるヤツ、爆発剣とでもいうか、あの技、初見だったら、中々いい線いってるぜ」
「チェッ!それって、ほめてんのか、けなしてんのかどっちだ?」
「けなしてるんじゃないですか?」
よせばいいのに、あおるシレイス。
案の定、瞬間湯沸かし器が作動する。
「んだとぉ!!」
立ち上がるディエマに、焦るハージン。
「ちょ、待てって!!前に言おうと思ったけど、あれって一点に集中して打てるのか?」
「いや、バカですか?んなもん方向読まれたら、隙だらけになんだろうが!!」
「馬鹿はどっちだ。いきなりってんじゃない、お前も剣を知ってるなら、何回か交わすうちに見えてくる防御点てものががわかってるだろう?必ず防御する展開、ここ来たな、次はどっちだって時…誘うのさ、防御した!次はこっちか!と思わせて、相手がのった瞬間、動こうとしたのと違う方向に踏み込んで一気に叩き込む!!それだったら、技として凄いモンになると思うけどな」
………
考えるディエマ…頭の中で、ハージンの言ったことを実践しているらしい。
だが、
「いや、使えるかもしれないが、爆発剣は、あくまでおとりにすぎない…速さを追求した分、軽く、与えるダメージも少ねェ…さっきの怪物相手じゃさっぱりだ…やっぱり俺が目指すのは、一刀両断…あのシドの剣だ…」
「そっか……」
「いや…でも、アイデアは一応、なんだ…参考にさせてもらうぜ」
「もう、素直じゃないですね」
この会話をしてる間、三人が意識的にシドの亡骸を見ないようにしてるのがわかったのは次の瞬間である。
ディエマの向ける視線につられ、三人が転がしたままのシドに目を向けた瞬間、動きが止まったのだ。
時が止まったかのように凍り付く。
絶頂の間…
ハッとする気持ちと葛藤する心…
抑え込む…
泣くんじゃねぇ…
もう、泣かないって決めたんだろ?
「前…見るしか無いよな…この先、不安な事しかないけど…」
やっとという感じで言葉を発するディエマ。
「そうですね…まずはどうして村が無くなったのか…ですね」
「いや、その前に腹ごしらえだ」
「やれやれ、謎解きより食い気ですか…」
「ほとんど一日何も食ってないんだ。あったりまえだ…へ…はっ…ハックシュッ!!」
くしゃみをするディエマ。
口元を覆っての事だったが、汚いなという不快感を示すシレイス。
と、その表情が変わる。
「????」
「どうした?」
ディエマの口が動くと同時に再び崩れる男前…
まさか?
流石に二度目はやばいと思ったか、堪えようとするが、
ア~ッハッハハ~
響く笑い声。
ブッハァッハッハ♪
なんとハージンの笑い声も重なる。
「あぁ駄目だ!!!おっかしい!!」
「お、俺も…ブハァッハッハ♪」
笑い転げるハージン、シレイス。
「こんにゃろぉおお!!なぁにがおかしいんだ!!」
太眉が吊り上がった瞬間、笑いのボリュームが増した…
「だ、だってよ~」
見れば、ディエマの鼻水が、輪っかのようにつながっている。
太眉に真っ赤な鼻と相まって、さながら牛の様な顔に…
「か、鏡はよぉお?」
訳の分からないディエマは屈辱すら覚える始末…
「殺す…」
「あんたじゃ、敵いませんて…」
「お前からだ。シレイス。短い付き合いだったな…」
「わぁ、ちょい待ち~」
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開けた場所…
オリオストが作った土煙る雲の塊が見えてきた。
湖も小屋もある。
どうやら、ここは変わりないようだ…
「くあぁあ流石に、このままじゃ痛すぎる」
ボッコボッコの顔二人…
どうやらシドを乗せたマントの位置から察するにシレイスとディエマらしい。
ハージンは巻き込まれなかったか、綺麗なままだ。
「あなたが悪いんですよ」
「何言ってやがる!お前が…」
「あなたが本気で殴るから…」
「うるせぇ、お前だって、あんなもん出しやがって…」
!!!!!!!!
言い合う二人とハージンに緊張が走る。
「おい、あれ!!!」
ディエマの指す指の先に、ラリスが生活していた小屋が見える。
緊張が走った理由…
それは、誰もいないはずの小屋の窓が光っていたからだった。
~第二十九話に続く~
この小説、はじまりは中学生の時に中途半端な気持ちで描き、数ページで描くのをやめてしまった漫画でした。
でも、いつか完成したいという気持ちだけは本物でした。
そこから数十年かけて、ようやくハージンというキャラクターと向き合うことができました。
僕にとって、ハージンは同志であり、戦友です。
僕の中にあるヒーローそのものです。
絶対に後悔しない物語にしたいので、自己満足に陥らないよう、最後まで読んでてよかったと言っていただける作品を目指してまいります
すこしでも気になったら、ご一読いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。




