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私、肉食系エルフです! ~有り余る才能の全てを肉に捧げたエルフの食い倒れ道中記~  作者: 加藤伊織 「帝都六家の隠し姫」発売中
新生活の始まり

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第38話 金策金策

38 金策金策


 私には、まずふたつやらなきゃいけないことがある。

 お金を稼ぐことと、名前を売ることだ。


 お金を稼ぐことについては、前にもやった薬草の促成栽培と、マンドラゴラの捕獲(収穫ともいう)でなんとかすることにした。

 これをエイリンド様にやってもらう。


 私は働かないのかっていうとそんなことはなくて、私のやる「金儲け」にはまず下準備がいるんだよね。

 アニューズに来て気づいたけど、パン屋さんごとに若干パンの味が違う。前世のようなドライイーストなんて便利なものはないから、パン屋さんごとにそこで使っている自家製酵母の内容が違うみたいなんだ。


 市場を見ながらザムザさんとフランカさんに説明してもらったんだけど、パン屋は免許制らしい。パンを焼くためにはパン用の竈がいるし、酵母も昔から伝わってきた「パンを膨らませる素」で、おいそれと他人に渡せるものではない。

 そもそも、麦をわざわざ粉にして、手間を掛けてパンにするのはそのまま麦粥にするより面倒。でも麦粥は貧しい食べ物でパンが上等という意識が浸透してる。

 多分、共同体じゃないと持てない大きな粉挽き――水車とか風車を使った奴ね――と、パン屋の釜に領主が税金を掛けてるからじゃないかって。


 ここまではフランカさんたちの一般的な知識で教えてもらった。

 パンはお金が掛かる食べ物だけど、やっぱり麦粥より美味しいし、保存も効く。だから生活に欠かせない。

 生活に欠かせないからこそ税金を掛けるのが容易で、でもそこら辺のさじ加減を間違えると領民が食べていけなくなって逃げちゃう。なかなか根深い問題ですな!


 まあ、そんな面倒な下地があるせいか、結果としてパン屋ごとに少しずつではあるけど味が違うんだよね。パン職人はパン職人のツンフトに加入しなきゃいけないけど、職人の養成所もあるし、商人ギルドとは別の互助システムがあるんだって。

 これはパン屋さんに教えてもらった。市場の人に片っ端からリサーチして、「口コミで美味しいパン屋3選」を自分なりに出したんだよね。一番いいのは自分で全部のパン屋を食べ比べることだけど、それはさすがに時間もお金も掛かるから無理。


 白パンが美味しいのか、ライ麦パンが美味しいのか――とにかく、人から聞ける無料の情報はもらいまくってその中で厳選した。

 私が求めるパン屋さんは、白パンが美味しくて、膨らみのあるパンを作れるところだ。

 そして、辿り着いたのがバッヘムさんのパン屋さん。お父さんのマティアスさんと息子さんのユリアンさんがやってるパン屋さんだ。

 一連のパンの話は、このユリアンさんに教えてもらった。養成所を出たばかりで、野望に燃えてるところがすっごくいい。


「そんなユリアンさんに、作ってもらいたいパンがあります。隣の大陸の貴族の間で大評判(になる予定)の、三日月パンです!」


 マティアスさんとユリアンさんは最初はうさんくさいものを見る目で私を見ていたけど、私が羊皮紙にサラサラと材料を書き出すとふたりの表情はがらりと変わった。


「何だこのパンは、正気か」

「パン種はパン屋の秘伝なんですよね? 私はそこには触れませんので、まずこのパンを私が作るのを見て、食べてから判断してもらえませんか?」


 マティアスさんはレシピを見て腕を組み、渋い顔で唸っていた。でも、ユリアンさんに「革新的だ! 試してみたい!」って説得されて私の提案を受け入れた。

 私が探していたパン屋さんは、三日月パン(クロワツサン)を一番美味しく作れる、膨らみのいい白パン向きの酵母を使っているところだったのだ。


 ターチィの街はパン屋さんが一軒しかなかったから、選択肢も何もなかった。

 でも、ターチィとここアニューズでは街の規模が全然違う。だから、パン屋さんを選ぶこともできた。

 ここで断られてたら、次の候補に話を持っていくつもりだったけど、ユリアンさんに一部手伝ってもらって、ターチィの時のように精霊たちの力を借りながら三日月パンを焼き上げる。

 うーん、前もそうだったけど、香りが殺人的! このいい香りだけでパンが食べられる! バター(乳脂肪)って偉大!


お読みいただきありがとうございます!

面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブクマ、評価・いいねを入れていただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします!


挿絵(By みてみん)

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