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「それで、何で私に相談なのかしら。」
グラーゼ家に呼び出されたシシリーは、ヤンに訊ねる。
「俺、今のところジーナの夫最有力候補ですよね。」
「自薦でね。」
「…他にいないでしょう。」
「まぁ自信家ね。今頃、運命の出会いをしているかもしれないわよ。今日はジーナに内緒で来てるし、ジーナってば最近、更に綺麗になったしね。」
いらん不安を煽るだけ煽って、ヤンの話に戻った。
「まぁ、うちのジーナはとりあえず置いといて、そのバカ夫婦をシめたいんでしょ?」
「私事でごたついて申し訳ありません。グラーゼ家に取り入って、養蚕の仕事にも首突っ込みたいようです。グラーゼ家絡みで腕の良い仕立て屋のジーナの事を知れば必ず寄ってきます。贅沢なことが大好きですから。」
「じっくり陰謀巡らす貴方の家の方にしては随分、楽天家というか浅慮な人ね。どうして上手く行くと思うのかしら。」
「陰謀って、誉めてます、それ?」
「一応誉めてるわ。」
「…ともかく、俺だけにくるなら無視しとけますし、馬鹿にされても関係ないです。でもジーナの周りには絶対近づけたくない、それにはバカ夫婦を徹底的に仕事に近づけないのが一番かと。」
バカ夫婦で定着した弟たちを否定もせず、淡々と続ける。
「何故か昔から、自分の方が何でもできると思ってまして、弟の中では、俺は能力がなくて後を継がないということになってます。俺は上の学校に進んで、あいつは読み書きがやっとだったんですがね。親も末っ子を甘やかしたため、何かあれば人に甘えて当然、やってもらって当然な性格。どうやら嫁も似た人間のようです。」
「失礼だけど弟さんは読み書き以外は優秀な方?」
「凡人スレスレ。詐欺に引っ掛かりそうなプライドだけ高いやつです。」
ばっさり評価を下したヤンに、シシリーは試してみた。
「じゃあ貴方は?」
「プライド“も”高い役人です。役人としての適性はあると思います。なので仕事の邪魔する奴にはとてつもなく陰険です。」
「結構。協力しましょう。ただしジーナには内密に。」
「もちろんです。」
ジーナはなんとなく家族というものに、憧憬がある。ヤンのせいでぶち壊す必要はない。
「よろしいですか?ラルフ様。」
意外に、一番不愉快そうなのはリラーシャではなく、ラルフだった。
「こてんぱんにします。」
静かに言い切るラルフは、背後から湯気がたつような気配だった。
「怒ってくださって嬉しいですが、裏工作はダメですよ。ズルで勝つと後々面倒くさいことになりますから。」
嬉しかったがやんわりと釘を指したのに、横からまた火を放つものがいた。
「ジーナに指一本触らせないわよ。ラルフ、グラーゼ家は今日から修羅の家よ!」
リラーシャが修羅になったら街が全滅だろうと、これまたヤンが止めにはいる。
「万が一弟たちが嗅ぎ付けて、ジーナに近寄ったら責任もって段取り無視でぶっ飛ばしますから。女性陣は精神的にチクチクする担当をお願いします。ラルフ様も大人しくしててください。」
「茶会で陰険に苛めるのではないの?」
「苛める理由がいるでしょう?」
「?」




