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25-1

 冬場は社交の場は少ない。秋に入る頃、グラーゼ家の令嬢リラーシャも正式に社交界デビューを果たし、トーハンだけでなく近隣のパーティーにも出るようになった。遠い場所へは泊まりで行くこともあり、忙しく過ごしていた。当然ジーナのドレスにこだわっていたが、養蚕関係の仕事をグラーゼ家が要請したこともあり、泣く泣く諦めることになった。冬が近づくにつれてせわしさも落ち着き、今年は普段着で冬に着れるものを1着だけ作って、グラーゼ家との契約は終了となりそうだった。

 冷え込みが厳しくなってきた頃、グラーゼ家では久々にジーナとヤン、それにシシリーを招いた茶会を催していた。

「結局夏のパーティーのドレスまでで終わってしまいましたわ。」

久々のお茶会で悔しさをにじませた声でリラーシャはいった。

「私、ジーナの結婚話をなんにも聞いてませんのに。知らないところで着々と進んでますし。」

ヤンはラルフに会いに来てはいたが、ラルフは余り根掘り葉掘り聞くタイプではないし、リラーシャ以外は温かく見守る態勢のため、リラーシャを満足させる情報がなかったのだ。

「進んでません!」

焦ったジーナが止める。

「申し訳ありません。確実になったらご報告しようかと。」

「ヤン様!」

にこやかに答えるヤンに、ジーナがこれまたびっくりして抵抗している。

「ジーナ、無礼が過ぎますよ。」

シシリーが嗜めると、全員の視線が集まって、ジーナはしゅんとカップを手にとる。

「シシリー様はこのままこちらに?」

グラーゼ夫人が訊ねると

「と思っていたのですが、どうやら戻らねばならないようで。」

このまま残ろうかと思っていたが、再三に渡る手紙(お願い)が届き、段々厚みが増えていくそれに、仕方なく戻ることにしたのだ。

「まったく困ったものです。足りないなら新しく雇えば宜しいのですよ。」

シシリーは納得出来ないようすだが、ジーナ以外はカトロワ家の自己評価の低さを感じていたので、領主館での仕事ぶりが何となく想像できた。

「きっとシシリー様が居るかどうかで、皆様の気のいれようが違うのでしょう。使用人の教育もなさっていたそうですし、そういうものは中々取り替えが効くものではないですからね。」

マリラはお茶のおかわりを用意しながら、

良くわかると言った風に言うと

「確かに怖いのが居るかいないかは大事ですわね。」

シシリーはチラッとヤンを見る。ヤンは涼しい顔して茶を飲んでいる。ジーナはキョトンとした顔だ。

「?」

「そうですね、おかげさまで大苦戦中です。ねぇジーナ。」

ヤンがジーナに話を振ると、やっと自分が関係してることに気付いてワタワタとどこかを見る。

「知りません!」

親しげな気安いやり取りに、あらあらと夫人やマリラが目を丸くする。リラーシャは悔しそうで、ラルフは何故か満足げだった。これは微笑ましい面白いものを見た、といった感じで、シシリーも優しく見守っている。そこで周りが話を変えてくれて、ジーナはからかいまではいかない雰囲気にホッとしつつ、ヤンの様子を窺う。ヤンがふいにジーナを見て笑いかける。その表情がとても優しくて、ふっとジーナの中にこの笑顔を見ながら生きていく予感がした。自然な笑顔を返して前を向く。ジーナはこの気持ちに名前が付くまでは、顔を赤くされっぱなしの仕返しに内緒にしておこうと思った。

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