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どちたの〜?どこから来たのかなあ〜



 ある一室。

 21時に差し掛かり、街の光がまばらになり始めた時間帯。

 男はタブレット端末を片手にビールを飲んでいる。


「惜しいなぁ」


 そう言いながら見ているのは、ある配信者のアーカイブだ。

 配信を始めたばかりの頃、この娘は珍しいプレイスタイルでバズったが、最近のチャンネル登録者は伸びもしないし離れもしない小康状態。


「ま、俺は最古参だから見続けますけどね」


 得意げな表情で酒を呷る。

 小康状態の理由は理解できなくもない。

 

「…まあ、いつかハジけるでしょ」


 どこか不思議とそんな予感がした。



◇ ◇ ◇


「…なんか綺麗…しかも、道が枝分かれしてる」


 薄緑の光を発する苔が洞窟を照らす。

 岩の隙間から水が漏れているようで水音がどこかから聞こえる。


 ナナイの目の前にはどこへ繋がるかも分からない道が3つ見えた。


「…ただの洞窟ってこんな感じなの?」


:自称トレジャーハンターがダンジョン探しとかしてるけど、当然ハズレもある。

:たしかただの熊の巣穴で、入る前にぶっ飛ばされてた

:草


「熊の巣穴て笑」


 リスナーと談笑しながら、周囲の警戒もせずに歩みを進める。

 3つの道の始点である広間にやってきた。


「どれにしようかな〜」

「きゅ」


「?…リスナーはどの道がいいと思う?」

「きゅ〜」


:おーい

:?じゃないが


(やっば〜…警戒してなかった…!)


 ナナイも当然、「きゅ」という謎の鳴き声を聞いていた。

 初日の突然のデスペナルティが若干トラウマになっており、今すぐ死んでもおかしくない状況がとんでもなく嫌いになっている。

 【鋸斧】を握りしめ、決死の覚悟で振り向いた。


「きゅ〜」


(…凶悪な形相の目、見るだけで怖気を誘う爪、トドメにこわい牙…!)


:あら〜^^

:かわいい


(…うん、なんか思ってたんと違う)


 クリっとした青い目、申し訳程度の小さい爪、トドメに木の実を食べるのに適した歯。


 ネズミ…というよりハムスターに近い生物がそこにいた。


(かわいいっ!!)


「かわいいいっ!!」


 できるだけ姿勢を低くしてハムスター(?)を見る。

 首を傾げるその姿にナナイは血を吐きそうになるが、それよりも気になったのは、額の宝石だった。


「…?なに?宝石が着いてる…かわいいねぇ〜」


「きゅ〜」


 もっちゃりしているハムスター(?)の頬を指で撫でれば、目を細めてナナイの指に体重を預けてくる。


:額に宝石付けたハムスター?

:それってカーバンクルでは?

:まさかの魔獣発見で草生えますよ


「どちたの〜?どこから来たのかなあ〜かわいいっ!」

「きゅっ!」


:草

:草


「…この子魔獣なの?」


:額に宝石が付いてるネズミって言う描写は大体カーバンクル


「カーバンクルってなに?」


:捕まえると富や幸運をもたらすという未確認動物

:UMA扱いはされてるけど、ファンタジーゲームにも出てたりする


「へ〜…カーバンクルって言うんだね〜かわいいねぇ〜!」


 そんな情報はあってもなくても変わらないと言わんばかりにカーバンクルのふくふくした頬を堪能するナナイ。


「きゅきゅ〜」


「びゃあああ」


「きゅ?!」


:そんな顔すんなよww

:カーバンクル「びっくりしたぁ」

:草


「がわいい…あ、ふふ、こんなことしてる場合じゃなかった」


 微笑んでから、チョンとカーバンクルの宝石を指先で触ったあと立ち上がる。


「さて、探索続行!」

「きゅー!!」


 「おー!」とばかりにカーバンクルもちっちゃな手を上げる。


「……カーバンクルちゃんも着いてくるの…?」


:なんで?!

:どうして?!

:魔獣ってレアMOBでもっと気高いと勝手に思ってたんだけど…?


「カーバンクルちゃんもくる?」


「きゅ!」


「…う、うーん…この先危ないかもしれないんだけど…」


「きゅ…?」


 ここでカーバンクルの必殺技が炸裂する。

 首を傾げて、「ダメなの…?」とばかりに目が潤む。

 そして、ナナイに効かないはずもなかった。


「守護らなきゃ…!」


「きゅ〜!」


:どうして…?

:なんで…?

:なんで魔獣の好感度が最初から高いの…?


「いやうん…それはなんで…だろうね…」


 しゃがんで両手を差し出せばカーバンクルは何故か直ぐに乗ってくれた。


「みて…みて…手乗りカーバンクルだよ…」


 ナナイが口をもにょもにょさせながら配信結晶にその手を向ける。


:ホンマに嬉しそうやな…

:まあ今まで1人だったから…

:本拠点の第1村人が魔獣ってマジ?


「なんてかわいいの…」


 そのまま、【狼革のポンチョモドキ】のフードにカーバンクルを乗せて歩き出す。


「よっしゃ、カーバンクルちゃん。捕まっててね!」


 3つの道のうち、1番右を選んで入っていく。

 光る苔が生えていたのはどうやら広間だけ、という訳ではなく所々に生えていて視界は明瞭だ。


 だからこそ、道中にいるモンスターも明瞭に見える。


「GYAGYA」


「む、モンスター…!」


 小さい身長、尖った耳に耳元まで裂けている口。

 ゴブリンだ。


「あれは知ってる。ゴブリンだね…!」


 【鋸斧】を構え、突撃した。


「おりゃあああ!!」


「GYA!」


 全力を込めた一閃。

 袈裟懸けにゴブリンの胴体を傷つけるが、まだ生きている。


「うそ?!倒せなかった?!」


「…!GYAAA!!」


 ゴブリンが噛み付いてこようとする。


「こんっにゃろおおお!」


「?!?!」


 わざと噛みつかせてから、頭突き。

 強い力と人体で最も硬い頭骨のダブルパンチでゴブリンは吹っ飛び、そのまま黒い煙になって霧散した。


「…っふー!よし!」


:ヨシじゃないが

:なんだその戦い方?!

:肉を切らせて骨を断つが過ぎる


 事前登録特典の回復ポーションを遠慮なく使って傷を直してからゴブリンが消えた場所に向かう。

 残っていたのは尖った耳と濁った色の宝石だった。

 

「これは?」


:……あ、ああ、コイツただの【鑑定】すら持ってねぇんだったわ

:それは【ゴブリンの耳】と【魔石】ですね


「ただの【鑑定】って?」


:チュートリアルで誰でも貰えるスキル

:アイテムの名前が分かる。分からないのもあるけど

:成長させると他の分野の鑑定スキルが出てきたりする

:ナナイの【自然物鑑定】とか

:無から生やしてんのはナナイぐらいですね


「……え?!鑑定スキル?!名前だけでもわかる…?!」


(ほ、欲しすぎる…!!)


 【ゴブリンの耳】と【魔石】をアイテムボックスに入れて、先に進んでいく。



感想ありがとうございます。

VRゲーム、すべてのカテゴリーで17位になりました。

皆様のおかげです。

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