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どんどん川を作ろう!畑はその後ね!!



「んっしょ…よっこらせ」


 滴り落ちるポリゴンが無くなったため、血抜きは完了したと判断したナナイは狼の身体を作業台に乗せた。


「結構重いね…」


 とりあえず、やるべきは皮を剥ぐことだと考えたナナイは石ナイフを取り出して狼に突き立てようとした。

 その時、目の前に結晶板が現れる。

 そこにはこう書いてあった。


【解体を開始しますか?】

【※解体に使用した刃物によって成功率が前後します】

【石ナイフ 完成度 : 劣悪→5%】


「ひょ?」


:ひゃ?

:ひゅ?

:ひょ?


「うるさいよ」


:こんなのあるんだね

:魔物はドロップアイテムと魔石残して消えるんだけどね

:動物とか好き好んで狩らないし…


「うーん…5%かあ…よし、石ナイフを作り直そう」


 ひとまず狼を退けてから、木の棒を取り出し斧でナイフの柄にちょうどいいサイズに切り出す。

 その後、ナイフで樹皮を取り除いていく。


「まあ、確かに石を打って作っただけのやつだし…何気最古参なんだよ?この子」


 その調子で話しながら柄を完成させた後、作業台の横に置いてある岩を乗せ、ナイフの頭用の石を添えて、さらにその上から石を叩きつける。

 変な形にならないように冷静に打っていけば頭が完成する。


「やっぱり、岩に叩きつけるように下敷きにして上から叩いた方が良いね!見てこれ!綺麗じゃない?」


:ほんま手先器用ね

:なんか博物館で見たことある


「そりゃ石器だし…」


 柄に予め開けられた隙間に刃の根元を噛ませたあと、紐で固定していく。


「完成!」


【石製ナイフ】

完成度 : 高


「よし!このナイフで解体試してみよ!」


 作業台に狼を再び載せて、石製ナイフを添える。


【※解体に使用した刃物によって成功率が前後します】

【石製ナイフ 完成度 : 高→30%】


「しっぶ…」


:草

:まあ、石だし

:さすがに草


「まあ、いっか。今の目的は肉!解体します!」


 するとポンッと音がしたあと、ピンポン!という音がした。

 狼がコミカルに煙を立てて、肉と皮と骨に変化した。


【成功!】

【狼の毛皮×1 / 狼肉×10 / 獣骨×15を獲得しました】


「GET!!」


:30%通した?!

:88888

:ついに肉が食える

:だがジビエ


 毛皮と骨を手際よくアイテムボックスに収める。

 肉を1つだけ手元に置いてから宣言。


「それじゃ、焼いてくよ!」


 肉を枝に刺して、焚き火で焼いていく。

 脂が弾ける音と肉の焼ける匂いが辺りに充満している。


「じゅるり」


:うまそう

:うまそう

:飯テロやめてください


「美味しそう…」


 肉の赤みが無くなっていくのを確認してから、ナナイは串肉を取り上げて、クリスタルに向ける。


「焼肉だよ!調味料は…ないから…木の実と一緒に食べるね!」


 アイテムボックスから木の実を取り出してから、一気に肉にかぶりつく。


「ンンンッ!!」


 ゲーム内で初めて食べる肉。

 調味料は無くても、味は薄いが血由来の塩味は確かに残っており、普通に美味だった。


「うんま!これぞ野性的な味ってやつ!」


 一緒に木の実を食べれば先日まで辟易していた味でもいいアクセントになる。


「おいしー!」




◇ ◇ ◇



 翌朝。

 テントから這い出でてきたナナイ。


「…おはよう…ございます…」


 朝日が目に沁みるのか、とんでもないしかめっ面で配信結晶に挨拶する。


「…寝不足っす…」


 欠伸をしながら立ち上がり、身体を伸ばす。

 

「作業、テント、焚き火、道具数種…畑作れるかな?」


:最低限って感じやな

:家庭菜園レベルなら?

:ナナイがいつか語ってた理想には遠いな

:自然の水源を利用した云々のやつ?


「…自然の水源…」


 ナナイの想像していた畑の完成系は、鳥がなき、木漏れ日が川を照らしその傍らに輝く野菜たちが萌えている畑。

 そして、致命的なことにここには川がない。

 少なくとも傍らに流れていることはない。


「…川、ないね」


:草

:土地探しからやり直す?w


「やめてよ…」


 しょもしょもと萎れていくナナイ。

 そんなナナイにも1本の蜘蛛の糸が垂らされた。


:バッカロア湖って結構川が分岐してるから、探せばあるんでない?

:でっけえ水源で標高も高めだから川も多い。

:まあダメだったら湖から掘って川に繋げれば自ずと川になると思うよ知らんけど


 最後の最高に無責任なコメント。

 それが運の悪いことにナナイの目に止まってしまった。


「川を…ほる」


:あ

:やめとけ

:工事するんか?

:草

:1人で?

:近場に川があるか確認してからやりなさい


 そのナナイの様子からリスナーは焦り、どうにか止めようとする。

 最後の案もどうせ近くに川はないと思ったための発言だ。

 だがナナイはそうは思わなかった。


「そうだね!まずは近くに川があるか確認しよう!」


 そこから、ナナイのある意味無謀で心躍る探索が始まった。

 

 ナナイにも勝算はあった。何故なら、本拠点は水分と魔力が豊富だからだ。

 近くと言ってもそれなりに歩くバッカロア湖の影響なのかナナイには分からないが、川を探す理由にはなる。

 【自然物鑑定】をしながら、野菜、薬草、時々木の実を回収していく。


【野生の根菜】

・ 食用

・ 栽培可

・ 品質 : 中

・ 備考 : 水分が豊富な土地でしか育てない。


 掘り棒で丁寧に回収した根菜。

 備考が目に入る。


「ん?あれ?少し違う?」


 今まで常食していた根菜を鑑定する。


【野生の根菜】

・ 食用

・ 栽培可

・ 品質 : 中

・ 備考 : 水分の多い土地で見られる。


 比べてみれば、サイズと色も違う。

 水分が豊富な土地でしか育たない。


「近くに川がある…かも?」


 聞き耳を立てる。

 鳥の声と葉の擦れる音。


 さらさら


「っ!」


 バッと顔を上げたナナイ。

 確かに聞こえた。


「水の音!」


:ほんまに?

:嘘をおっしゃい!

:なんにも聞こえないが?


 水の音がする方向へ走る。

 相も変わらず足は遅いが、斜面を下ってついに水の音の正体を見つけることができた。


「小川!しかも高低差で言えば本拠点の方が高い!湖から水を引いて繋げられる!!」


 目を輝かせて配信結晶を見つめる。


「ね!!」


:あ、はい

:…えーまあ、はい

:…川の作り方なんぞ知らんけど、はい


「どんどん川を作ろう!畑はその後ね!!」


:でもどう作んの?


「…鍬?」


 先行きの不安がとてつもなく大きく、配信者の楽観的な雰囲気との落差に何人かのリスナーは思わずため息をついた。


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