表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪賦ナイル YA  作者: 城山古城


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

259/281

第十一話 その陰は人の道を失わせるものなり

 法西が訪れた次の日、竹中は堂々と(まこと)のもとへ訪れていた。それを見た浩平はため息を吐き、近藤は楽しそうにし、遠山は悪態をつく。


「何しに来た! この腹黒メガネ!」


「何しにって、敵情視察さ」


 竹中はいつものように笑みを浮かべて答え、傍若無人のように応対席に座る。


「あんたね、こういうときは友達に会いに来たとか言えないの?」


「じゃあ、茉莉花が怒る姿を見に来た」


「相変わらずの減らず口。その口を取ってやろうか!」


 遠山は竹中に近づき、唇を掴もうとしていたが、浩平が遠山の動きを止める。その姿を見て、竹中は声に出して笑っていた。


 真はその間に竹中と相対するように座った。


「それで、今日はどうしたの? この前みたいに賀茂くんを使わないの?」


「うーん……それは難しいね。最近、僕が賀茂くんに近づくことを、由美子が警戒しているみたいだし」


「神宮が警戒しても、亮君ならなんとでもできるでしょ?」


 竹中は笑みで真に返答した。


「昨日、法西が来たよ」


「そうか」


「反乱の手助けをしてくれと言われたけど、一応断っておいた」


「すまない」


「謝られることじゃないよ。僕は君に法西を押し付けたんだから」


「えええええ!!!」


 遠山は声を挙げる。


「あれ? 遠山は知らなかったっけ?」


「知らないよ! よりよって、この腹黒メガネに相談するなんて! 今回のことだって、この腹黒メガネとアイツの共謀じゃないの!?」


 遠山は竹中を睨みつけるも竹中は涼しそうな顔をしていた。


「アヤシイ! 吐け! この腹黒メガネ!」


「遠山、今回の件は亮君の考えじゃないよ」


「どうして言い切れるのさ!?」


「だって、亮君が共謀してたら、こんなに速く来ることないよ」


「あ、そっか……」


 遠山は真の言葉に納得するも、すぐに真を問い詰める。


「真くん! こいつが来ること、分かってたんだ! 来るなら来るって言ってよ!」


「言ったら、遠山はもっと罵詈雑言を浴びせるだろ? それじゃあ話したいことが話せなくなる」


 遠山は頬を膨らませる。


「茉莉花は真の前ではタダの犬だな」


 竹中は笑う。


「うるさい! 腹黒メガネ!」


 浩平と近藤も笑うが、浩平は遠山に睨まれて、すぐに笑うのを止める。


「それで、そちらの生徒会長選は順調かな?」


「由美子くんなら大丈夫だろう。属校からも好意的な話を聞く。逆に絹張くんのやり方は反対されているみたいだが……」


「いいのかい? 側に居なくて」


「さっきも言っただろう。僕が居なくても由美子くんは大丈夫だよ」


「そうじゃないよ。絹張にだよ」


「らしくないな」


「そうかな? 僕は助言のつもりだけど」


 竹中は眼鏡に触れる。


「よく分からないなぁ……。何が言いたい?」


「法西のことは気にしなくていいよ。アイツは舞台から降りた。いや、正確に言うと降ろされたんだ」


「それはそうだろうね。僕も手段を選んで――」


「違うよ、亮君。君じゃない。神宮に降ろされたんだ」


「真、どういうつもりだ」


「僕らだって、君たちの選挙戦が気にならないわけじゃない。外から見ていると分かることがある」


「何をだ?」


「君がいつもの君じゃないってこと。そして、神宮は君の思い通りになる駒じゃない」


「それは誰の評価だ?」


「うちの近藤も浩平も同じ意見だ。周藤くんも」


「そうか、周藤くんもそういう意見か」


「亮君、君にも法西と同じ事を聞くよ。亮君はどんな未来が欲しかったんだい?」


 竹中からはいつもの笑みが消えていた。その表情を見た、遠山は腕を組む。


「残念だけど、亮君。僕は、今の君が作る未来に手を貸せない。むしろ、神宮と組むよ」


「それは僕と手を組むと同じことじゃないか?」


 真は首を振る。


「違うよ。神宮は神宮が望む未来を作っている。君が作ったレールには居ない」


 その言葉は竹中には受け入れ難いものだった。幼い頃からの友であり、ライバルである真から言葉。これまで戦いの中で思い通りに行かなくても、それを受け入れられることはできた。だが、この言葉だけは何故か認めたくなかった。


「真、それは勘違いじゃないか」


「勘違いじゃないわよ!」


 遠山が口を挟む。


「あんた、今、どんな顔をしてるか、分かってんの?」


「いつも通りさ」


 遠山は深い溜め息をする。


「大体、翼志館の現生徒会が分裂するなんて、オカシイでしょう!? 手段を選ばない? なにそれ、結局、あんたは一方的に自分の望みを叶えようとしてただけじゃない! 相手の気持も知らないでさ! 本当最低!! そんなんだから、神宮由美子にいい様にやられるのよ!」


「おい、バカ!」


 浩平は急いで遠山の口を塞ぐ。それでも遠山は暴れながら叫び続けていた。近藤は腹を抱えて笑い、真は苦笑いをする。


「亮君、今からでも遅くはない。君の思いを安藤や絹張にちゃんと話しておいたほうがいい」


「もう話してあるよ。僕は由美子くんを生徒会長にする」


「そうじゃないよ。君の本当の思いはそうじゃない」


 竹中はその言葉が不愉快で、席を立ち、黙って部屋から出ようとする。口が塞がれた遠山の言葉が「この甲斐性なし!」と、なんとなく聞き取れる。


「亮君!」


 竹中は足を止める。


「亮君が敵であっても変わらないことがある。僕にとって、君は親友だ。だから、心配をすることだってあるし、余計なことだって言ってしまう。それに、君の命に関わるときは必ず僕は助ける。人っていうのはそういうものじゃないかな?」


「ああ、ありがとう」


 そんなことを恥ずかしげもなく言えるお前が一番嫌いでもあり、最も親しい友である理由だと竹中は心の中で呟く。


 竹中は校門の前で改めて岐湊を見る。その夕暮れかかった校舎は訪れた中で一番憎らしく見えた。その校舎を見ながら竹中は忠陽へと電話を掛ける。

高評価、ブックマーク、感想もよろしくね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ