1話
僕は背を伸ばして屈伸した。長時間の片付けで身体が強張っていたからだ。
片付けをしていると、なにやら懐かしい物がいっぱい出てきた。
小学生の頃にやっていた剣道の大会の優勝のトロフィー。
中学生の頃にやっていた剣道の大会の参加賞。
高校から始めたソフトテニスの準優勝のトロフィー。
あらかた片付いたかな、と一息つく。
すると、まだ押し入れには触っていないことに気づいた。
しょうがないな、と気合を入れ直して押し入れを開ける。
すると奥から埃の被った箱が出てきた。
心当たりがない。
なんだろうと思って、その箱の上に付いていた埃を払って開けてみた。
中には昔使っていたノートがあった。
表紙には『設定ノート』と書いてある。
ノートを持つ手が止まった。
なぜここにある。
中学を卒業すると同時に燃えるゴミに出して捨てたはずなのに。
僕はおそるおそるめくり、一ページ目を見る。
『漆黒の騎士』
僕はノートを見なかったことにしようか迷った。
だが見間違いだと信じて、またノートを開いた。
『漆黒の騎士』
『漆黒の黒炎を身にまとい。
3組のさゆりちゃんを魔王軍から救うべく立ち上がった。
†漆黒の騎士たかし† 』
…なんでこれがここにあるんだよ。
そう。
これは。
厨二ノートだ。
うん。
まあ、いい。
今となっては良い思い出だと考えた方が幸せだ。うん。
このノートのページをめくっていくと、過去の記憶が蘇ってきた。
ああ、僕って学校に長ネギを持って行って、伝説の剣だと言い張っていたっけ。
あだ名はナイトくんだったな。
そして忘れもしない。
中学生最後の剣道の大会の団体戦の大将戦。
当時の僕は必殺技にハマっていた。そして突きと同時に試合中に叫んでしまった。
『シャイニングセイバァアアアアアア!!!!!!』
よし!!決まった!!!!
…ふつーに反則取られた。
うん。
仲間たちの目が痛かった。
それからはセイバーくんが僕のあだ名になった。
中学の卒業アルバムの寄せ書きには
『たかしくん、私は姫ではありません。』
『ナイトくん、卒業おめでとう。』
『セイバー、卒業しろよな。』
『セ……』
いや、これ以上語るのはやめよう。
僕の名前はたかしだ。
セイバーではない。
シャイニングセイバーが心を抉りながらも、ノートの最後まで読んでいく。
今となっては良い……良い思い出だったと自分に催眠術をかける。
目を走らせていくと、最後のページの余白部分に僕の字じゃない文字が書かれていた。
『それをすてるなんてとんでもない』
by 母より
その文字を見て僕はキレた。
『やりやがったなァ!!!!!!!!許せねェ!!!!!!』
上等だよ。
僕を舐めやがって…。
おっ、冷蔵庫に長ネギがあるじゃないか。へへっ中学生時代を思い出すぜ…。
そう憤って僕は長ネギを持って玄関から飛び出した。
するとそこには一台のトラックが!
あ、コレあかんヤツや…
ドッカーン!
あ、周りがゆっくりに見えてくる……。
最後に見えたのはカーブミラーに写っている漆黒の鎧だった。




