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ゴルン教異変編 生命波動

「…生命波動?」


ユキナは聞き馴染みのない魔法であろうワードに、グランに「知っている?」的な目線を送るが、グランも首を横に振る。聖王都魔法学校の主席であるグランですら知らない、聞いたことが無い魔法であった


「そうね…ここは映像を交えて私も説明に参加しようかしら」


リーノは指を鳴らして、部屋一帯に映像魔法を展開する。そこに映るのは生命のクラブの戦う姿であった


「これは?生命のクラブ?」

「妖魔大戦時代当時の先代のアリエスが記憶に残っていた生命のクラブの戦いの記録よユキナ。生命のクラブは僧侶や神官が扱うカテゴリーの魔法、結界や浄化や回復、神に由来する魔法を扱う」

「所謂、プリーストような立場なのか…魔装鎧の見た目はそれっぽいけど…ただ戦い方と武器が」


生命のクラブの魔装鎧のデザインは、グランの言う通りにプリーストを彷彿させるようなものであるが、映像に映る生命のクラブは、大鎌を振り回して結界魔法を駆使しながら妖魔を倒す姿であった


「一部では、死神のクラブって言われてるぐらいだしねぇ…だけどグラン、死神の名はこの大鎌だけに由来するモノだけじゃない。生命のクラブは、即死魔法を扱う」

「…即死魔法…それって黒魔法ってことか?現在どころか、100年前ですらあまり使われない概念なんじゃ?」


このオリュートスにおいては、主に白魔法と黒魔法の2種類の概念があり、わかりやすく言えば白魔法は合法的な魔法であり、自身の魔力と研鑽と研究で行使されるものであり、魔装魔法の大半はこれに該当している

グランの言う黒魔法は、呪いや呪術、生贄や非人道的で非合法的な魔法等がこれに該当する

現在においては黒魔法の概念は魔法使いレベルであればほとんど対策される為に、非効率過ぎる魔法として扱うものがほとんどいない

即死魔法と言うからグランはてっきり黒魔法の類かと思ったのだ。しかしリーノは首を横に振り


「いいえ、概念的に言ってしまえば白魔法よ。生命のクラブの即死魔法は対象の魂と肉体を分離させる。言ってしまえば魂を自在に操る魔法なのよ…生命のクラブは相手の魂を分離させて殺すという手段を用いることが出来る」

「な…!?」


グランは絶句し、ユキナも同様に驚く。魔法の知識ある二人ならわかることであるが、魔法で人を殺めることが出来ても、魔法で魂を操るのは聞いたことがなく、もしそれが出来るとすればほとんど反則級の魔法であることを理解したからだ


「それもほぼ普通の魔法として発動できる上に、対抗策が無ければ防ぎようがない。驚いたことに妖魔相手にも有効だったから生命のクラブはかなり戦果を挙げていたって話らしいけど…ホントなの叔父上?」


リーノはあくまでも先代のライブラであるドーマの記憶や十二騎士達の情報を知っているだけであり、リーノとしても信じ難い魔法なのである為に、実体験、実際に見たことあるカノンに確認を取るが、カノンは即答で頷き


「本当だ。クラブは命のある生命体であれば、魂を抜き取ることは出来る。ただ、オレ達のような魔力を持つ相手や、上位の妖魔はある程度の注意を引くか、ダメージを与えて抵抗力を弱らせないと魂を抜き取っての即死魔法は出来なかったから、その魔法だけじゃなかったんだよ。生命のクラブは抜き取った魂を燃やしたり、それをぶつけて対象の肉体と魂ごと燃やすという手法を使っていたな」

「聞いているだけでも滅茶苦茶ぶっ飛んでません?カノン先生」

「それだけじゃないんだぞグラン。魔力変換で疑似的な魂を作ったり、疑似魂を与えて一時的に生命を与えたりとかも出来たから…故に生命のクラブは魂を操る魔法の使い手、”生命波動”という新しい魔法の概念を作ってしまったんだよ…それで、こんなトンデモない魔法の存在を世に知られる訳にはいかないということで禁術、世間一般では封印された魔法として扱われていたんだ。このことを知っているとしたら当時を知る十二騎士とサイクの図書館の管理者であるリーノ、そして魔法省のごく一部ぐらい…それと紅の魔女とかぐらいだな」


ここでグランは一つの答えに行き着く、生命を与える、生命、魂を操作できることから導き出される結論


「…もしかして、聖剣のゴートの魔装鎧にユーゴ様の魂と意思が宿っているのは…」

「ご明察だグラン…魔装鎧に魂を移し替えるという芸当はクラブなら容易く出来る。異次元空間での決戦時に、ゴート、スコーピオン、クラブは自爆特攻を仕掛けて自身の肉体を犠牲に異次元空間内にいた数多の上位妖魔を道連れにした。3人とも致命傷を負って助からないと悟った上での判断で、生命波動で霊体化というトンデモない芸当をやってな」


グランとユキナは言葉を失い、リーノもある程度のこの時の戦いの事情を知っているが、3人が想像を絶する戦いであったことを思い知らされる

グランとユキナは少なくともユーゴの実力、ユキナに関してはスコーピオンの焔の魔女の強さを知っており、生命のクラブのとてつもない魔法を以てしても、肉体を失う結果になる戦いであったのだ


「話を戻すぞ」


止まった会話の流れをカノンは断ち切り、仕切り直すように説明を続ける


「結果的に、ゴート、スコーピオン、クラブの魔装鎧にはそれぞれに魂と意思が宿っている状態だ。自律的に動けるのはどうやらユーゴのゴート魔装鎧だけだが…どういう訳で動いてるかはよくわからんがな」

「よくわからない?」

「色々と所説アリって感じだユキナ。まあ、そのうちわかるかもしれんが…そんなトンデモなく危険性のある魔法をクラブだけが扱えるとは言え、存在自体もそうそう表に出す訳にはいかない」

「クラブだけが扱える…特異性のある魔力神経だったってことですか?」


グランの回答にカノンは静かに頷く。魔力神経には生まれ持っての個体差があるが、その中でも突出した魔法の分野の適正に開花することが稀にあり、生命波動はそれに該当する


「生命波動は白魔法でありながらも、生命や魂を操る魔法として成立させ、歴史上その能力に開花した者は生命のクラブただ一人であり、妖魔大戦終結からこの類の魔法や能力に目覚めた者、魔法として成立させた者はいない…少なくとも、数時間前のオレが知る限りな」

「…ちょっと待って叔父上、まさか?」


リーノの予想しているであろうことを、カノンは静かに頷く


「…数時間前にセバスチャンを通じて、ライブラから連絡が来た。”生命波動を使う者が現れた、そしてウロボロスの関係者らしき者達が狙っている”ってな」

「ウロボロス…!!」


グランとユキナはテーブルから立ち上がらんと言わんばかりの反応をする


「そう焦らずとも、今回はお前たち二人の力を借りる。想定される敵が敵なだけにこちらも持てる戦力で対応する…無論、お前も力を貸せ、起きてるだろ?ユーゴ?」


カノンが振り向かずにユーゴを呼ぶと、ユーゴはギロチン台を強引に壊して拘束を解いて立ち上がる


『クラブの話を持ち出されては寝ていられねぇからな。話は聞いた…なるほど、道理でライブラの奴がカリバーン王国から離れていると思ったら、奴が直接その生命波動を扱う者を監視…護衛しているな?』

「話と理解が早くて助かるな…いや、お前がライブラの行動をわからない訳がないか。ライブラは半年近くその生命波動を扱う者を監視の為に、カリバーン王国を不在にしていたらしい。それこそセルゲイが倒れたと知っていても離れなれないぐらいにはな。流石に百年祭の時は首都の聖王都かつ、国王ユーダが狙われたから急遽駆け付けたらしいがな」

『その言い方だと、聖王都の外か?』

「その通りだユーゴ」


カノンはカリバーン王国領地内の地図を取り出し、一つのポイントに示す


「場所は聖王都から数百㎞にある、ミールス村の十字教の信徒…シスターって言った所だな。名前はアヤメ・クローズ」


カノンは写真を取り出す、それは金髪碧眼のシスターの写真であった


「クローズの姓ってことは、十字教の孤児院の出身の者かしら?」

「その通りだユキナ、アヤメ・クローズは十字教に保護された孤児だ」


オリュートスにおいて、もっとも信徒、信者が多いとされている十字教。その中で十字教が営む孤児院の出身者、身寄りのない孤児たちはクローズの姓を与えられ、名乗ることを許されている


『…そんなことがあり得るのか?カノン、本当にこれが生命波動を扱う者…なのか?』


ユーゴは驚いたように写真を凝視する。彼にとっては信じられないものが写っていたからだ


「正直、オレも驚いたよ。別にオレは十字教の信者という訳でもなく、さほど神様を信仰しているわけじゃないがな…ある意味、これは運命なのか、それともそういう仕組みなのか」


ユーゴとカノンのリアクションに、ユキナとグランは”何事なのか”という表情をする


「…アリエスの記憶からこの顔に見覚えがあるわね…叔父上、この娘は生命のクラブ、アイリス・クローズに瓜二つじゃない?」


リーノは映し出している生命のクラブの戦いの立体映像に別の画像を表示する。それは写真のアヤメ・クローズにそっくりなシスター、生命のクラブことアイリス・クローズの画像であった


「その通りだリーノ。生命のクラブことアイリス・クローズそっくりなんだよ、アヤメ・クローズは。同じ容姿に、十字教のシスター、クローズの姓、そして同じく生命波動に目覚めた…十字教の神様の導きを疑いたくなる程にな…そして故郷もこのミールス村のオマケつきだ」

「…生まれ変わりとか?東の大陸なんかは、そういう概念というか信仰があると聞いたことがあったような…」


ユキナの言葉に、カノンとリーノは感心する


「よく知っているなユキナ。東の大陸のジパンとチャイズにはそういう考え方もあるな、輪廻転生的な…ただな、アイリスの魂もクラブの魔装鎧に宿っている…転生的な考えはどうなのかな…ただ、生命のクラブの魔装鎧もミールス村にあるという状況だ…」

「ここまで来ると運命を感じるどころか、不気味なんですがカノン先生」


ここまで来ると凄いを通り越して、グランは引き気味なリアクションをしていた


『アイリスの言葉を借りるとすれば”主の導き”かもな。生命波動も、アイリス曰く、神様が与えてくれた力らしいからな…、まあ、十字教の神様はまともな相手に力を与えたって所かもな…心優しいアイリスは、生命波動を決して悪用することはなかった。容易く命を奪える危険な力を、アイリスは妖魔か悪党相手にしか使わなかった…こいつは幼い頃からアイリスを知っているオレが断言出来る』


ユーゴは真剣に、訴えるようにアイリスという人物、そして生命波動を悪用するような人間ではないということをユキナやグランに言う


「ライブラ曰く、そのアヤメという人物もアイリス同様…というよりアイリス以上に優しすぎるらしい、生命波動を間違った使い方をするような人物ではないってな…ただ、ここ最近この能力を気付いて近づいている輩がいるらしいから、ライブラ本人と数人の配下で護衛、そして怪しい連中を追っていたようだが…蜘蛛の怪人とやり合った時に相当な痛手を負ったのと、怪しい連中を調査したライブラの配下が数人、行方不明になったという話だ。最優先でアヤメを保護、そして怪しい連中を素性を明かし、殲滅する」


カノンは指を数えながら、同行する者を指名する


「ユキナ、グラン…そしてユーゴとオレでミールス村に向かう。リーノは隠れ家に待機、万が一聖王都内でウロボロスが動いた時の為の戦力として任せる。ユキナ、それでいいか?」


カノンはユキナに確認を取るのは、ユキナ自身が現状の聖王都を離れるのを良しとしなかったからであった。もしかしたらユキナがまたゴネる可能性があるかなと思っていたカノンであったが


「構いませんけど…もしかしてカノン先生、私が反対すると思いました?」

「一応だよ」

「どのみちウロボロスが絡んでいる相手に積極的にいかないと、ナナコの暴挙を止めることが出来ないし…それに、尊敬するライブラ様が私を…私達を頼ってくれる、そしてここに窮地に陥るかもしれない人がいるのに、それを見捨てることなんて出来ない」

「…そうか」


予想以上の答えをユキナが言葉として出したことに、カノンは驚きつつも、嬉しい気持ちであった


「それでカノン先生、一体に何者なんですか?ウロボロスに関わりのある怪しい連中というのは?」


敵の素性を聞いてきたグランに、カノンは答える


「悪党の影に、宗教組織の影ありって所かねぇ…オレも初めて聞いたが、ここ最近出来た新興の宗教組織、ゴルン教。それの関わる司祭や神父、信者達だ」

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