百年祭決着編 第二王妃エリザ・カリバーン
百年祭、国王ユーダ・カリバーンの暗殺未遂事件から翌日の話になる
妖魔の力を使うウロボロスという組織の存在、新たな十二騎士が迎え入れられたこと、そして新たな聖剣の勇者が現れたことを公表された聖王都中はその話題に賑わっていた。特に新たな聖剣の勇者は民衆は大いに期待と希望の前向きな話題が多く溢れていた
しかし、妖魔大戦終結の記念の百年祭は一時中断という形で、特に飲食を扱う露店を開いていた飲食店はバタついてた
そんな慌ただしい聖王都の飲食店界隈で、貸し切りで開いていた店が一つ
「こんな所にあったのかよレオナルド、道理で気付かなった訳だ」
「だろうなカノン。広い聖王都かつ、路地裏で経営しているうちを見つけるのは短期間ではお前さんでも無理だろうさ、ガハハハハ!!!」
レオナルドは自慢げに笑いながら、カノンが座る席に料理を持ってくる
「店に来いって言われて来たが、わざわざ貸し切りにして何の用だレオナルド?こちとらあんまり暇じゃなんだが?」
カノンは事件後に、国王ユーダ・カリバーンとライブラと共に広場のウロボロス等の存在の公表した場でジェミニアとして立ち
カノンとして、魔法省や各関係機関に赴いたり指示や依頼、ルドン帝国に連絡、リーノ・サイクを隠れ家に受け入れ等で事件発生から休む暇もなく動いており、退けたものの2度も怪人を仕留め損ねたことにも、そして何よりも別の一件で不機嫌で、少々ピリついていたのだ
「理解はしているさ。ただ、オレとしてもお前に料理を振るまいたのもあるが、お前を指名してきた方がいるんだよ。直接話をしたいってさ、お前もロクに食事も取っていないだろ?顔色を見ればわかる」
レオナルドはカノンは不機嫌だけじゃなく、やつれていることにも気づいていた
「それに、お前にとっては少し馴染みのある相手だ」
「…エルフ族か?この魔力の気配は」
カノンが魔力の気配を感じ取った瞬間、店の入り口の扉が開き、耳長の金髪の容姿端麗な女性。カノンの言う通りにエルフ族の女性がカノンの座るテーブルの対面に座る
「…これは驚いた、まさかこんな店に貴女のような方が来るとは。エリザ・カリバーン様」
カノンの目の前に座った人物、この場の民衆の知るものが知るような飲食店には似合わない、第二王妃エリザ・カリバーンが来たのだ
「こうやってお話するのは初めましてですね。カノン・サイク様…それともジェミニア様と呼ぶべきからしら?お話はおばあ様…皇帝陛下から聞いております。貴方の英雄譚、十二騎士として、カノン・サイクという人物としてもね」
「…ルドン帝国の皇帝陛下の孫娘にあたる人物でしたね。エリザ様は…カリバーン王国の第二王妃として嫁ぎ、そして空挺騎士団の団長であるとお聞きしています。お会いできて光栄です…が、一体どういう訳でここに呼び出しのですか?」
カノンは相手が相手なだけに不機嫌な雰囲気を抑えつつも、らしくもなく本題に切り込む
だがそこは王妃である人物であった
「お忙しいことは重々承知しています、ウロボロス対応もほとんどカノン様に依存してしまっていること…そして何よりも、貴方の身内に危害を加えられたことはこちらにも落ち度はありますから」
カノンの不機嫌な雰囲気を察するのと、その一番の理由。メノンを殺されかけたことに起因することであったのをエリザは言い当てる
「貴方がサイクの家の者を大事にしていることは存じ上げております。おばあ様から聞いておりますし、何よりも100年前のカノン様を迎え入れてくれたサイクの人間を心から感謝、恩義を感じているからでしょう?メノン・サイクがナナコに絞め殺されかけたことに相当に怒っている…正直、話を聞いたときは私は青ざめましたよ」
「…流石に皇帝陛下から自分のことを聞いてるだけはありますね。カノン・サイクという人物をよくわかっている…リスクがあったとは言え、ナナコが本当にメノンを殺していたら、こちらも手段も選ばず、誰も救わずにナナコを探し出して殺してます」
カノンの口元は笑ってはいたが、目は笑っていない様子であった
話を聞いていたのか、厨房でレオナルドが食器を落として割っていた
「…こちらも、もしもユキナが殺されていたら冷静でいられる自信がないわね。気持ちは痛いほどわかるわ」
「とは言え、メノンに危険な橋を渡らせたのは自分ですし…それに何よりもそれを救っていただいたのは国王陛下と伺っております」
ユキナとメノンからその時の状況を聞いてはいたカノンは半信半疑ではあった。まさか国王あろうものがライフル銃を持って前線に出てくるなんてことは、カノンには少し信じられなかったのだ。というより普通の感覚なら、あり得ない、そんなことはあってはならないと考える
とは言え、救ってもらった事実には変わりは無く
「この度は我が姪を救っていただき、感謝しております…その旨を国王陛下にお伝え下さい」
カノンはテーブルから立ち上がり、深々とお辞儀をして感謝の意を伝える
「かの世界を救った英雄の一人に頭を下げられる日が来るとはね…ふふ、やはりこの国に嫁いでよかったと思える」
意地悪く笑うエリザに、カノンはルドンの皇帝の姿を重ねる。孫娘だけあって仕草や笑い方が似ていると思ったのだ
「貴方がカリバーン王家で心の底から頭を下げる相手なんて、ユーゴ・カリバーンぐらいじゃないかしら?」
「…それ以外なら、ユーゴの兄、当時の第一王子とその妻である月光のピスケスぐらいです」
「…妖魔大戦時代のカリバーン王家の話はある程度は伺っています。カノン様がカリバーン王家そのものを信用していないのは重々承知しております」
エリザの言う通り、カノンは当時のカリバーン王家に関しては信頼はしていない。妖魔大戦時代は相当にこのカリバーン王家に苦労させられたことがあるが故であり、これに関してはカノンだけではなく、大半の十二騎士は当時のカリバーン王家に関して良くない印象を持っている者が多い
しかし、あくまでも当時のカリバーン王家である
「私、第二王妃エリザ・カリバーンがここに来たのは、我々カリバーン王家の方針をカノン様…刃のジェミニア様に意思表示をする為です」
エリザは深呼吸をして、言葉を続ける
「ジェミニア様、私達カリバーン王国を信じてください。私達カリバーン王国、カリバーン王家はあなた達十二騎士の味方です。遠慮なく協力を申して下さい」
それは100年前のカリバーン王国や王家を知っているカノンからすれば、エリザの言葉は実に頼もしいことを言っていたのだ。それだけに驚きの表情を隠せず、返答に困っていた
「…意外でしたか?カノン様からしたら、カリバーン王家からこんなことを言われるのは。やはり、信用することは出来ませんか」
なかなか返答をしないカノンに、エリザは表情が曇る
「いえ…あくまでも100年前のカリバーン王家に対してはいい印象はありません。ですが、ユーダ国王の手腕とあなた方の王妃達の覚悟を見ていれば…信用せざる得ない。王妃としても、騎士として戦う、マリー様やエリザ様…例え娘を死なせたという汚名を着てでもユキナを守ろうとし、出来ることなら平穏な人生を送ってほしいと願ったミラー様。結果的に、結局はユキナは戦う道、聖剣の勇者として戦う道を選ぶことになったとは言え…今のカリバーン王家は頼もしいですよ…というか頼もし過ぎる」
ユーダの見事な手腕と、マリーやエリザが前線に出てきたことを知っている故にカノンが思わず吐露してしまう程に、自身の危険を顧みない行動、立場を考えていない行動と思っていたのだ
「…ライブラの仕業だな?この国のトップがそういう行動をやるとすれば、奴の入れ知恵だろ」
ライブラを良くも悪くも知るカノンは、決めつけるように言う
その答えはあながち間違いではなかったらしく
「…というより、妖魔大戦以降の歴々のカリバーン国王と王子の教育係の一人なんですよ、ライブラ様は。あの人ほどに政治と国王として立ち振る舞いとして指導者として最適な方はいないですが…悪い部分を言えば、ライブラ様の大胆なやり方も教わるので…とくにユーダ陛下は影響を受けまくってますね…」
「…あいつ、内政でカリバーン国王を掌握しようとしてねーか?」
カノンから見ても、明らかにライブラの教育の賜物で国王が前線に立つという暴挙に出ているのは、悪影響と言わざる得ない
「まーあ…そのおかげで陛下は大目玉を現在進行形で食らっていますけどねー」
「そりゃ…国王が前線に立つなんて…側近達も黙っていないだろ?」
「いや…一人だけユキナに会ったこと、そして会話したことが息子達と娘達が大激怒しているのが理由ね」
「…はい?」
カノンが思わず間抜けな返事をしてしまう程の理由と、ユーダ国王が怒られている相手達
「彼らの言い分としては、「父上だけユキナに会うなんてズルい、私達、オレ達も会いたかった!」という感じね。流石ユキナ、兄姉達に昔から好かれているし、元々ユキナを追放した際に、ユキナと接点を持つなと厳命した張本人が約束を破ったから、そりゃ全員大激怒…本当は陛下も来る筈だったのですが…」
「自分の子供たちに足止めされているという訳か…いや、ここに来られても話がややこしいことになるだけなんだがな…というか陛下もこの店を知っているのか?」
十二騎士の一人、破戒のレオこと、レオナルドの店だから、国王の立場であれば知っていた可能性はあるだろうと思いつつもカノンは聞いた
「むしろ常連だった。今じゃ密かに城を抜け出すことはなかったけど、ユキナが生まれる前は結構お城から抜け出しては聖王都の町に繰り出していましたよ。当人は民の様子を視察しているだけって、言っていたけど…完全に遊びに来てたし、頻繁にこの店に来ていたからね…この店はレオナルド様が店主していることや、知る人ぞ知る名店みたいな感じだから密かに密談するのもうってつけだったのもあるし…それに、ここは陛下とミーラの馴れ初めの場だからね」
「というと?」
「ミーラは昔ここでウェイターをしていたのよ。商人の家柄としての勉強の一環として、そこから陛下に一目惚れしたミーラに気付いたマリー様と私が取り持って、陛下がミーラを妻として迎え入れたのよ。ここは陛下にとっても、私達にとっても思い入れがある店だからね」
「あ、そういう経緯でミーラ様が王妃になったんですか。マリー様とエリザ様は政治的な結婚だろうなと思ってましたが…」
「ミーラに関しては、純粋な恋愛結婚よ。まあ、マリー様も私も陛下を愛していることには違いないけど、ミーラは素性を知らないまま一目惚れしていたから、つい面白くなって」
「面白くなって」
エリザは当時を振り替えながら微笑む。国王ユーダと王妃ミーラの意外過ぎる馴れ初めの秘話に、カノンは困惑してしまう
「ミーラは容姿も仕草も性格的にも、陛下の隣の立たせるには丁度よかったからね。マリー様は近衛騎士団長として、私は空挺騎士団長としての役割があったから」
「王妃の内、二人が騎士団長というのもスゲェ国なったもんですが…しかし、空挺騎士団か…」
空挺騎士団、カノンの時代には存在しなかった概念
「オレが生まれた時代じゃ元々魔装鎧があったことと、ドラゴンとワイバーンが妖魔に一方的に狩られて、既に竜騎兵という存在は無くなりましたが…空戦ではなく、空挺とはな…」
「空戦能力を有する魔装鎧が無くなったことで、飛行能力を有するのがエアライダーぐらいになったことと。現行の魔装鎧の運用方法として、魔装鎧を纏った騎士を目的地に高高度から降下させて展開、そしてこちらもミサイルなどで攻撃支援を行う…本来の空挺騎士団の役割はそれですね」
「話には聞いていたが、運用方法としては確かに効率的か」
「もっとも、空戦能力を持った妖魔や怪人には歯が立たない現実を叩きつけられましたからね…紅様とユキナがいなければ私も空挺騎士団も全滅していました」
「話は聞いています。それでも未知数な相手に、誰一人死人を出さなかったのは相当な手腕と判断だと思います」
落ち込んでいるエリザに、カノンは御世辞ではない本音を言い
「オレも怪人を2度も仕留め損ねていますからね」
自身の失態を言うカノン。想定外の脅威、想像以上の脅威を持つウロボロス相手に最善の手を打つの困難故に、今回のカリバーン王国の手腕、現場の判断能力にカノンは素直に尊敬しているのだ
「それでも互角に戦えて撃退しているのは事実。我々も全面的に協力するとは言え、ウロボロスの相手はやはり十二騎士に依存せざる得ないかと…情けない話ですが」
「現状はそうせざる得ないです。空中の市街地で仕掛けてくるとなると、エアライダーでの火力では過剰にりますし、小回りが利かないか…騎士団の装備も過剰火力装備にならざる得ない…」
騎士団の魔装鎧なら、ミサイルや銃火器の使用は可能である。だが周辺の被害も馬鹿にならない上に、それ以外の問題が様々ある
「万が一鹵獲された場合に、逆に利用される恐れもあるが…それ以上に、怪人や妖魔が罪の無い一般人を利用されていた場合が最悪だ」
「被害を抑え無ければならない場合、その怪人や妖魔を殺すしかなくなる…過剰火力では尚更…確かに、騎士達の士気も落ちるし、民衆も恐れますね…しかし、それは十二騎士達も同様では?ミーラや魔族の女性は何とか元に戻せましたが」
「いや、まだ解析や術式の構築に時間がかかっているが…奴らの妖魔の力のみを破壊する術式を、魔法省と共に開発中です。ミーラ王妃や、魔族の女将さんの時は、どちらもウロボロスカードを何とか取り出し、破壊したことで元に戻せましたが…どちらも何度も狙ってやるには難しい技ですが…」
「今構築している術式はそれとは違うモノってことかしら?」
「ええ…対ウロボロスの怪人や妖魔、その力の源、ウロボロスカードを破壊することに特化した攻撃術式をね」




