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百年祭決着 星読み

グランが目を開けると、見覚えのある天井であった。そして周りには本棚が見えたことでここがどこで、自分がどういう状態なのか把握した


「サイクの図書館…またリーノの仕業か?」

『いや、君を読んだのは僕だからね。グラン・グラス君』


グランが見上げた先には、見慣れない怪しげな服装の男が見下ろしていた

グランは立ち上がり、怪しげと男と向かい合う


『初めましてグラン・グラス君、君のことは図書館越しで見させてもらったよ。そして君の経歴も、リーノがまとめてくれたものをよーく読ませもらったよ。商人のグラス家の家系の三男、大魔法使いセルゲイ・ローレルに見出されて、妹…正確には従妹のユリカ・カリバーンと共に彼に弟子入り…魔法学校でも成績優秀で、学校間で行われる戦闘魔法競技には連覇したと…現在は魔装開発学科に所属…しかしその裏ではユキナ・グラスと共に正義の味方としても密かに活動し、セルゲイ死後はカノン・サイクが君の面倒を見てもらい、そして聖剣のゴートに、十二騎士の一人として認めてもらった…そんなところかな?』


怪しい男はグランの経歴を簡易的に一方的に語る


「…あなたは一体何者なんですか?」

『おっとこれは失礼した。君に会えたことが嬉しくて我を忘れてしまったよ』


グランの指摘で怪しい男は我に返り、自己紹介をし始める


『僕の名前は、ドーマ・アシマ…このサイクの図書館に意識と意思を残した残留であり…そしてかつては星読みのアリエスと呼ばれた十二騎士の一人だった存在だ』

「十二騎士の星読みのアリエス!?」


流石にグランは驚く、星読みのアリエスの存在は既にカノンからは老衰で亡くなっているという話は聞いていたのだ


『僕は死ぬ前にここに意識を残したからね…僕が最後に見た予知夢の結末を見届けなればならない責任があったからね』

「…星読みのアリエスは、予知夢を見ることが出来る…カノン先生にも聞いていましたし」

『逸話や吟遊詩人たちはがよく詩にする僕の能力の一つだからね、ただ、あまり知られていないのは僕の予知夢はあくまでも変えることが出来る未来だけだ。確定した未来は見ることは出来ないのが難点なんでな』


ドーマは自身の能力の難点を苦笑しながら言う。独特な雰囲気でありつつも、グランは彼に対しての警戒を緩める


『緊張はほぐれたかな?立ち話もなんだ、茶でも飲みながら話そうではないか』


ドーマはグランにテーブルに座るように促し、そして茶を出す

グランは出された茶を飲みながら、味と水気を感じることに疑問を持つ


「…今のオレの状態って意識だけがここに来ただけで、肉体は眠っている状態の筈なのに…なんで味覚を感じるんだ?原理自体はなんとなくはわかるが…」

『まあ、そういう空間ということにしてくれ…僕もこの魔法を説明するのは少し難しいというか…リーノは普段はここにいるから、飽きないようにしている娯楽の一つなんだろうね。こうやって僕もご馳走になっているから助かっているけどね』


ドーマも茶を啜りながら会話をする


『さて、早速本題に入ろうか。君は僕らの聖剣の勇者、十二騎士のリーダーである聖剣のゴートに十二騎士として認められた以上、君には話さなければならない、そして知る権利がある、いや知らなければならない…僕が見た最悪の未来を…何故、聖剣デインダイトが君を敵視していたのを』

「そういえば…」


グランは自身の右手を見て思い出す、聖剣のゴートに向けられた聖剣デインダイトを掴んだ感触を


「聖剣がオレを殺したがっていた…聖剣のゴートはそんなことを言っていた…」

『勇者様自身は君を殺そうなんて微塵も思わないだろうね、彼は君のような勇気のある者、覚悟がある者…なんであれカリバーン王国の国や民を守ろうした者は…そのどれもに該当している君を相当気に入っているからね…だけど聖剣はそうはいかない、聖剣は世界の危機が迫っていると感知すると、担い手を選び、その脅威を戦うシステムみたいなものだから…聖剣は、グラン・グラスを世界に脅威として認識している』


疑問はあった、何一つここ辺りは無かったが、あの時はそれどころじゃなかったグランはその疑問を頭の片隅に追いやり、聖剣のゴートの魔装鎧を纏い…もっと言えば、ユーゴの魂と意思を憑依させた変身、憑依変身で戦っていたからだ


「オレがいずれ世界の危機になる存在だから、聖剣に敵意を向けられていたということなのか?」

『そこからは僕の予知夢が絡んでくるだろうね…僕が生前最後に見た予知夢は、妖魔王らしき存在が現れ、カリバーン王国を壊滅的な被害をもたらしていたこと…そして、刃のジェミニアによって倒されるものであった』


ドーマは少し間を置き、自身が見た予知夢の事実をグランに明ける


『その時の妖魔王は、グラン・グラス…君だ』

「な…!?」


グランは言葉を失う、自身が妖魔、その中でも最上位の存在の妖魔王になる。その事を到底信じられないからだ


「そんな馬鹿な話…どうしてオレが?いや…」


否定しようとしたグランは、疑問、違和感を感じた


(今、否定しようとしたら言葉が詰まった?なんでだ…オレが妖魔…妖魔王に呼ばれることに心当たりがあるというのか?体と心が否定するのを拒んでいる?)


グランの動揺の様子から、ドーマも気付く


『もしかしたら君自身には心当たりは無いのだろう…でも、何故だか僕の予知夢の事実を何故か否定しきれないって所かな?』


”ウロボロスカードを埋め込まれた?”という可能性をグランは考えたが、”違う”ということを断言出来る、何故か、訳も分からないものの、この可能性は違うと断言出来る、断言出来てしまうことにグランは困惑していた

グランはゆっくり深呼吸をして、気持ちを切り替える


「一体、どういう経緯で…オレが妖魔王に?」

『経緯についてはわかっていない、唐突に現れたということだけだな…君にも心当たりが無いとすれば、君は生まれながらでも無く、ジェミニア…カノン・サイクと出会うまで間に何かがあった可能性があるな』


ドーマの発言にグランは疑問が浮かぶ


「どうしてカノン先生に出会うまでの間なんですか?」

『時期に関しては特定している。僕の予知夢では一か月前に妖魔王が現れた…実のところ、既にこの予知夢の未来は変わっている。君がカノンと出会ったことで私はこの未来を観測することが出来なくなった…グラン、既に未来は変わっているんだよ』

「…オレが妖魔王になる最悪な未来は無いってことなのか?」

『もしくはより最悪の未来が確定したか…割と僕の予知夢ってそういうこともあり得るからね』


ドーマの観測できる予知夢の未来を変えても、それが結果的に最善の未来になることもあれば、避けられない悲劇もある


『大概は良りよい未来か、最悪の事態を避けられているけど…聖剣が君を脅威として認識されているところ、妖魔王になる可能性はまだあるだろうね…聖剣はウロボロスの怪人やウロボロス製の妖魔では無く、君は未だに世界の脅威になり得る存在なんだろうね』

「…聖剣が目覚めたのも、オレの存在が?」

『だろうね…そして因果なのか、そういう運命なのか…君の従妹であるユリカ・カリバーン…今は君の妹であるユキナ・グラスが聖剣に選ばれし担い手、聖剣の勇者として選ばれたのは皮肉の話かもね』

「…もしかしてオレが原因でユキナは聖剣に選ばれてしまったというのか?」


グランの問いに対してドーマも黙ってしまう。ドーマもユキナの経緯を知っているが故であり直接的なことを言うのは避けていたがグラン、当事者はそう思わざる、その結論に行き着くしかなった


「オレの存在が、ユキナの人生を滅茶苦茶にしてしまった…オレがいなければユキナは王族として、家族とも離れることもなく暮らすことが出来ていたのか…いや」


一瞬だけグランは自責の念を感じたが、ユキナという人物をよく知るグランは


「それはないな、うん。ユキナはどのみちにしてもウロボロスに関わっていただろし、波瀾万丈の人生になっていたと思う…あの暴走機関車が王族の立場とか後先考えなさそうだしな、うん」

『仲がいいね、君たちは』


開き直りに近いグランの結論に、ドーマは苦笑する


「もともとユキナとはそういう関係性なんですよ。従妹、妹の関係じゃなければ惚れてぐらいの、斬っても切れない腐れ縁なんでね」

『そもそも、君が妖魔王になることと、ウロボロスの存在は無関係だからね。もしその兆候があるなら君を真っ先に狙う筈だ…だが、彼らの狙いはユキナと聖剣の力なのがな…幸いなのか、気付いていないのか…カノンもリーノ、僕もだし、セルゲイ君もグラン・グラスには妖魔の気配を感じ取れないということ、現状では脅威になり得ないと判断している…彼らも好き好のんで君を排除しようなんて思ってはいない』

「カノン先生やリーノはそのことを知っているんですか?オレが妖魔王になる未来があったことを?」

『セルゲイ君も知っていたよ、彼とは昔から交流があったからね…カノンもリーノはセルゲイと彼の残した資料から知ったって所だね』

「…その未来を知っていたから、セルゲイ先生はオレを弟子にしてくれたのか?」

『それは…どうだろうね。別に君を監視する方法なんていくらでもあった。でもセルゲイ君は監視目的で君を弟子に選ぶような冷酷は人物ではないよ…それは君の伸びしろがあるから弟子にしたんだと思うよ…というよりそう日記に書いていたらしいからね』


ドーマは一冊の本を開いて見ながら答えていた


「その本は?」

『セルゲイ君の日記だよ、サイク家の人間が読んだ魔法にまつわる本や魔導書はここにコピーされる。カノンの場合はあの帽子でダイレクトで繋がっているから反映されるのは速い…全てを見せる訳にはいかないけど…セルゲイ君が少なくとも君を弟子にしたのは、君の才能を信じて、君の在り方を信じたからこそだよ…セルゲイ君はどこまでもお人好しだ』


ドーマは懐かしく、遠い思い出のように語る


『そしてカノンも君を信じた。意外だったんだよね、カノンが君を信じたのが…彼も妖魔によって大切な人を奪われたから、妖魔に対しては容赦が無い。知れば即座に君を殺していてもおかしくないぐらいにはね…妖魔王になる可能性を秘めているグラン・グラス、君を信じたのは君の在り方と信念によるものだ』

「…力を善い方向に行使する信念」


以前にカノンに式神のアクエリアスのカードを渡された時のことをグランは思い出す


『君がその信念と在り方を間違えなければ、カノンは君の味方であり続けるだろう。カノンも僕も、そして十二騎士達も、数多の妖魔を倒し、殺してきたけど…結局の所、妖魔についてはよくわかっていないのかもしれない。彼は何の目的で存在し、僕たちの世界、オリュートスに破壊の限りを尽くしたのか。オリュートスの知的生命体の半数を死に至しめ、数多の国と文明を滅ぼした彼らの破壊の目的が未だに分からずじまいだった』

「…よく聞く有力な説として、妖魔はどこかの世界で作られた侵略兵器なんて話は聞いたことがありますが…」

『だが、どれも確証はない。妖魔大戦時に妖魔の遺体や生け捕りした個体を調べようとした者達は、妖魔の力に魅入られて発狂するか、遺体であっても妖魔の洗脳を受けて妖魔の尖兵にされてしまう。妖魔の事を深く知ろうとすれば、待ち受けるのは悲劇と死しかない…精神力が強い者でも洗脳されてしまう、妖魔を調べる術はなかったからね、当時も今も』

「聞いたことはありましたが…妖魔に取り込まれる危険性が高い為、法的に妖魔の死体解剖や実験は禁じられていると…」


妖魔の脅威や攻撃手段や対抗手段は知られている、記録には残っている。だがその詳しい生態は未だに解明されておらず、逆に利用する方法なども解明出来ていない。遺体解剖や生態調査が実質的に不可能であるからであった


「そう考えれば…ウロボロスという組織、ある意味ではとんでもない偉業を成し遂げてはいるのか?妖魔の力を解明して、それをウロボロスカードという魔装具として成立させた…到底許されない事をやっているから、アレを認めたくはないですが」

『確かにどんな手段を使って妖魔の力を制御に至ったまではわからないけど、連中の技術力に関しては評価せざる得ない部分はある…もっとも、ああいう悪趣味な連中だからこそかもしれないけどね』


グランが遭遇したマグス、ミーラをウロボロスカードを埋め込んだハザマ。少なくともこの二人に関しては常人が理解できない悪趣味な存在であるとドーマは考えていた


「…ドーマ様。オレは結局どうすればいいんですかね?人々を苦しめるであろうウロボロスは倒さなくてはならないのはわかっているけど…」

『不安にさせてしまったのなら申し訳ない。君がこのオリュートスの生きとし生ける者の敵、妖魔王になる可能性があるなんて言えば不安になるだろう』


グランの心情を察して、ドーマは謝り。咳払いをして言葉をかける、グラン・グラスの今後にとって大事なこと、心得


『力を善い方向に使うという在り方と信念を持ち続けてくれればいい。どんな絶望があってもこれだけは折れてはダメだ、捨ててはダメだ。ユキナ・グラスが聖剣の勇者としての希望であるなら、君は可能性持つ者だ。今の僕にはこの先の未来はわからない…元々未来なんてものは誰にもわからないものだ。だけど君自身が見つけ出した在り方と信念を間違えなければ、未来はより良いモノになるに決まっている』


ドーマは堂々と言い切る。例え未来を観測できずとも、戦友と友が信じたグラン・グラスはより良い未来を切り開くと

ドーマの堂々と、強い口調にグランは驚きながらも


「そんな簡単な事で?」

『それが大事なことなんだよ、グラン・グラス…君とはもっと話したいけど、そろそろ時間のようだね』


ドーマがグランに自身の体を見るように促すと、グランの体は透けていた


「現実のオレが目覚めようとしている?」

『君はあの戦いから4日間寝ていたからね。随分と速い回復だな…君自身と現実で何らかやっているようだね』

「4日?オレは、4日間も寝ていたんですか?」

『そうだろね。ユーゴが魔装鎧越しとは言え無理やり君の体を動かしたり、担い手じゃないの関わらずに無理矢理、聖剣デインダイトを使ったんだ。合わない魔法行使で、君の魔力神経が焼き切れる寸前…といより焼き切れたんだろうね』


オリュートスの生物が魔力を持つのは魔力神経と呼ばれる神経組織から魔力を生み出し、生まれながら、もしくは訓練次第ではあるが、その者に適性のある魔法の属性はあり、例えばカノンは風、紅の魔女なら火である

適性のない魔法を無理矢理行使すれば、魔力神経に負担がかかり、グランのように焼き切れて倒れてしまう可能性もある


「そうでもしないと、女将さんは助けられなかったから…あれから4日経っているのか…」

『何が起きているかは君自身の目で確かめるがいい。僕には君たちと一緒に戦うことは出来ない…だけど、せめてここで君たちの見届けて記憶しよう…君たちの物語の語り部としてね』


星読みのアリエスこと、ドーマに見届けられる形でグランはサイクの図書館から消えていく

百年祭の事件から4日、様々な事態が動き出した現実へ

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