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俺とピロ  作者: ベン マウント
12/32

幸せ

休日の夕方ビルの合間に見える空が、夕焼けで赤く染まっている、商店街の喧騒が心地よく感じる、給料日が待ち遠しい、そんな生活をして居た頃に比べ、気持ちがおおらかになっている、いらいらする事が無くなった、金持ち喧嘩せず、と言うが分かるような気がする、金があり力もある、良子も居る、もう、欲しいものは何もない、そんな気分だ、良子の買い物に付き合って、商店街に来ているが、買い物をする良子を見ているだけで、胸がぎゅーんとなるくらいに幸せを感じる、俺って変態なのか、そう思ってしまうほど幸せだ、良子には恥ずかしくてとても言えないが

「何考えてるの、顔がだらけているわよ、美人でも通ったの」

「うん、凄い美人が」

良子の顔がきっとなる、怖い

「嘘だよ、今は良子以外はどんな女性でも美人に見えないよ」

「それでよろしい」

そう言って偉そうに胸を張るゼスチャーをしてから笑い出した

「馬鹿言ってないで帰りましょう」

そう言って腕を組んで来る、可愛い、馬鹿行ってるわけじゃない、本心を言ったのだが、本気に取られても照れ臭い

「荷物持つよ」

買い物袋を素直に渡してよこした、買い物袋をぶら下げ、片方は良子と腕を組んで、幸せを絵に書くとこうなるのかな、そんな事を考えながら、ゆっくりと家路をたどる、不思議なもので金が有ったら、ああしたい、こうしたい、昔思って居た事が、幾らでもできるようになったら、その気が無くなってしまった、今の様な時間が凄く貴重に思えるのだ、そぞろ歩きでのんびり歩いていると、懐のスマホが鳴った、画面を見ると竹林からだった

「隼人、今夜付きあえないか」

挨拶も何もない、男の友とはこんなものだ

「おう、ちょっと待って」

そう言っておいて良子と相談する

「竹林が今夜付きあえって言ってるんだが」

「親友の竹林さんね、行ってらっしゃいよ」

「行ってらっしゃいじゃなくて、良子も行くんだ」

「ええ、私も」

そう確認してから

「竹林、もう一人連れて行くけど良いか」

「ああ、良いよ、奈々子の店で待ってる」

「分かった、じゃあな」

家に帰り、出掛ける支度をすると、良子と二人奈々子の店に向かった、奈々子の店が近づくと

「えっ、此処なの、良いの私が入って」

「嫌な思い出の店だろうけど、此処での事が俺と良子の縁を結んだんだ、それに俺の数少ない友人たちに紹介したいし」

「そうなの、分かったわ、私もいつかしっかり謝ろうと思って居たの、丁度いいわ」

店に入ると竹林はすでに来ていた、奈々子と談笑している

「いらっしゃいませ、あら、隼人君が女性を連れて来るなんて、季節外れの台風が来なければいいけど」

そう言った後良子の方を向くと

「何処かでお会いしたような」

「その節は、大変ご迷惑をおかけしました」

良子が深々と頭を下げる、すぐに思い出せなかった奈々子だが

「あの時の、どうしてあなたが」

そう言って俺の顔を見る

「まあ、座らせてくれよ」

「あっ、ごめんなさい、どうぞおかけください」

席に着くと

「竹林にも丁度いい,色々あったけど、あれが縁で知り合って、今度結婚する事になった」

事の顛末を二人に話す

「それは良かった、おめでとう」

「ほんと、間接的に私が結びの神ね、光栄だわ」

「じゃあ、俺達も、なっ、奈々子」

「そうね」

「隼人、俺も奈々子と結婚する事にしたんだ」

「なあんだ、そう言う事か、良かったな、おめでとう」

「うん、ありがとう、お互い良かったな」

「まったくだ、今日は飲むぞ」

「そうしましょう、今日は貸し切りにしちゃおう、ちょっとまっててね」

奈々子は看板をけしにいった、入り口に鍵をかけ戻ってきた

「良いのか、突然休みにして」

「良いのよ、こんなおめでたい事は二度とないんだから、ちょとお待ててね、祝杯の用意をしてくるから」

だったら、私も手伝います」

「悪いわね、お願いしようかな」

女性は二人キッチンに行ってしまった

「祝いで付き合えと言う事か、だったら良かったよ、何かやけ酒に付き合わされると思ったのだが」

「そう思って居て、彼女を連れて来たのか」

「良いじゃないか、なんか文句でもあるのか」

「そうじゃないけど、奈々子と婚約は何れにしても、お前には言わなきゃと思って居た、だが、むしゃくしゃする事があるにはあるんだ」

「何だ、行って見ろ、話せば少しは気が晴れるぞ」

「お前に言ってもしょうがないんだが、聞いてくれるか」

「おお、女性陣が居ないうちに話せ」

「実はな、わが社の製作部門で力を入れていた製品が有るんだが、画期的な製品で社運を賭けるくらいの意気込みで、事を進めていたんだが、発売寸前でライバル会社がほぼ同じ製品を、先に売り出してしまったんだ、、大打撃も良いとこさ、今更売り出しても後発では、開発にかけた資金の元も取れない進めてだろうし、ライバル会社にヘッドハンティングされた社員が、その会社に行ったようなんだが、まさかここまで遣るとは、それで落ち込んでいる訳さ」

「そうなのか、厳しいな、危ない様なら俺の資金遠慮なく使え、それと追加でまた振り込むから頼むよ」

「お前、わが社の資本金を越えてるんだぞ」

「悪い、どんな方法でも良いから、生かして使ってくれ、全てお前に任せるから」

「そうか、そう言って貰うと助かる、お前の資金が有れば、わが社は絶対潰れない、有難い事だ」

「ところで、その製品は何なのだ、物は」

「蓄電池だよ、電気自動車とか、家庭の蓄電に使える、従来の製品より五十パーセントは、性能がアップしている優れモノだ」

「へえー、五割アップか凄いのか」

「現時点では画期的だ」

「それをライバル会社が同じものを」

「そうなんだ、量産体制も整えて発売しようとした矢先にこれだ、付いてないよ」

「その製品、俺に見せてくれるか」

「良いけど、お前が見たって」

「俺の友達に、丁度そう言う研究を,個人でやっているのが居るんだ、そいつに見せて、知恵を借りれば、ライバルよりいい製品にして、発売できるかも、そいつがこの間言って居たのが、確か電池だったような気がする、いいアイデアが浮かんだって」

「そうなのか、お前なら秘密は大丈夫だから、じゃあ、見てくれ、何かプラスの材料が有れば良いのだが、明日俺んとこに来れるか」

「ああ、分かった」

「おまたせぇ」

「お待たせしました」

祝いの用意が出来た、飲んで食べて楽しいパーティーの始まりだ、会話が弾む

「そうか、風邪で寝込んだとき」

「うん、助かったんだ、此処での話を知っているだろう、そう言う女だと良子には先入観があったんだが、親の悪行の為グレていたなんてね、付きあってみて、結果こう言う訳さ」

「本当にあの時は御免なさい、迷惑をかけてしまって」

「もう良いのよ、お陰で隼人君も独身に終止符が打てたし、終わり良ければみんな良しって言うじゃない」

「良子、もう良いんだ、そのおかげでお前と知合えたんだから、不思議だな、その時、良子が良い子にしてたら、俺達は知り合う事はなかったんだからな」

「そうね、何だか複雑な気持ち」

「もうどうでも良いだろう、親父さんも以前の悪が信じられない程、良い人になったしな」

「そうだそうだ、もういいんだ、楽しくやろう」

こんな会話の中、良子のわだかまりもなくなったようだし、紹介も終わったし、後は楽しくやろう

良子も奈々子も楽しそうだ、竹林も会社の事は会忘れ楽しんだ、俺は近頃楽しい事ばかりだが、今日は特に楽しかった、午前零時を過ぎるまで、四人で楽しく過ごした、そして解散となったのだが、帰り際

「良子さんて、令嬢なのに家庭的なのね、良いお嬢さんで良かったわ、大事にしてやってね」

「ありがとう、本当そうなんだ気が利くしな」

「まあ、デレデレね」

「うん、本当に大好きなんだ」

「もう、惚気るのもいい加減にして」

背中をパーンとたたかれてしまった

「勇、隼人君惚気すぎ、良子さんが大好きだって、そんな事堂々と口にする人だったっけ」

竹林は奈々子に勇と呼ばれているようだ

「そうなんだ、隼人は良子中毒で顔を見ないと居られないんだとさ、こんな奴とは知らなんだ、もう良子さんにメロメロで、見てられないよ」

「もう、いいから早く帰って、熱くてしょうがない」

笑って追い出されてしまった

「あなた、どうしたの、そんなに惚気ていたわけ」

「惚気じゃないよ、本心を言ったら、怒られたんだ」

「まったく、しょうがない人、私に直接言いなさいよ」

「いや、本人には恥かしくて言いずらいよ」

「そうなの、まあ良いか、気持ちは分かっているから、良いか、でもね、私はその何倍もあなたが好きなんだからね」

そういってから

「帰りましょう」

照れるように言って腕を組んできた、こんなに幸せで良いのかな、しみじみとそう思う、そんな夜だった、三十を過ぎてこんな、問答をするなんて、以前なら恥ずかしくて、絶対言わなかった、考えられない事だった



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