二五話 プレイボール
試合開始のサイレンが鳴り響く。
先攻はエストリア王国。
そして先頭打者はセンターを守るミーシャ。
自称天才と謳うだけあって野球の実力は他の素人メンバーよりも秀でていた。さらに魔法での身体能力の上昇が上手く足の速さはずば抜けていたから一番を任せていた。
「カッカッカッ! 先制点はミーシャがもらった!」
ミーシャが高笑いをしながら打席に立つ。
ストライク! ストライク! ストライク! バッターアウト!
結果は三球三振。
「あー、やっぱりか」
ミーシャの三振を見て納得する大地。
「やっぱりって何だやっぱりって! 今のはあれだ、様子見というやつだ」
ベンチに戻ってきたミーシャが大地の呟きを聞いて食って掛かる。
「はいはい。様子見のくせに全部フルスイングで振ってただろうが」
「……ぐっ」
正論を言われて言い返すことができないミーシャ。
「まっ、振らなきゃ当たらないからそこはいいけどな」
「そうだな! 振らなきゃ当たらないもんな!」
「だからってボール球まで手を出すな。相手ピッチャーが喜ぶことをしてやる必要はない」
「わ、わかってる!」
大地が褒めたあとにしっかり間違いを指摘してやると素直に受け取るミーシャ。
二番打者はショートのグレタ。
チビーズの中ではまとめ役といったポジションで言われたことはきっちりとこなす。
グレタは大地の指示通りボール球には手を出さなかったがきわどいコースを突かれて見送り三振。
「すいません」
ベンチに戻って来るなりグレタは大地に謝る。
「気にするな。初打席でヒットを打てなんてムチャは言うつもりはない。ましてや相手はプロだ。そう簡単に打たせてくれるわけがない。だからそんな気負わず守備に集中すればいい」
「はい」
続く三番打者はサードのオデット。
まだ身体が未熟でパワーはないがミート力がある。チビーズの中で騒がしくチームのムードメイカー的存在だ。
オデットは初球からきわどいコースの球を打ちにいってボテボテのサードゴロでアウト。
これでスリーアウトでチェンジになった。
「あー、くそっ!」
オデットはベンチに戻って来るなり悔しそうに悪態をつく。
「初球から打ちにいくのはいいけど、さっきのは初球から打ちにいく球じゃないから気を付けろ」
「……わかったよあんちゃん」
と了承するオデット。
「でもエースの球をバットに当てたのはすごいことだから自信を持て」
「お、おう!」
大地は初回の攻撃を終えてこんなものだろうなと割り切る。
「素人がいきなり塁に出れるなんて都合よくいかないもんだしな」
そう言って大地はプロテクターを付けてグラウンドに行くとシャルと投球練習を始める。
シャルの球はいつも以上に走っており調子はいいようだ。
「自信を取り戻したおかげか」
と考えて大地は一週間前に自信を失っていたシャルのことを思い出す。
☆
「仕方ない。シャル、服を脱げ」
「ぬ、脱げだと!?」
大地の言葉にシャルが素っ頓狂な声を上げる。
「いや、脱げっていっても上着だけでアンダーシャツになれってことだ」
「……むっ。でもアンダーになってどうするつもりだ?」
「歪みを矯正するんだよ」
「歪み?」
「ああ。野球ってのは結構偏った動作が多いだろ? 例えばずっと右で投げたりするから右側の筋肉がついたりするから左側の筋肉とのバランスが悪くなるなって歪みが出てくるんだ。それで歪みが出てくると筋肉の行動を妨げてちまうんだ。んで身体の歪みを見るためにアンダーになってもらったんだ」
「そういうことか」
「この歪みを取れば今以上に球速も上がるかもしれないからな」
「ほ、本当か! すぐに歪みをとってくれ」
「わかったわかった。でも一気に歪みを直すとフォームが崩れるから徐々にだからな」
「うむ」
☆
「ストライーク! バッターアウト! チェンジ!」
シャルの球が冴えわたる。ストレートはいつもよりもノビ、スライダーもキレがいい。
結局魔球を投げていないのにメルキド帝国の一番から三番を一気に三振で打ち取ってみせた。
「よくやった」
「貴様が歪みをとってくれたおかげだ」
大地が褒めるとシャルは照れ臭そうに返す。
これで一回の裏が終わり二回の表。
エストリア王国の次の打者は四番の大地だ。
いよいよ試合になりました。
プレーの中で分かりにくいところがあったら指摘してもらえると助かります。




