表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第三章連載中 元義妹は元義兄と暮らしたい〜他人になったはずの元義妹と再会したら学校でも猛アタックしてきて困ってます〜  作者:
元義兄は元義妹と暮らしたい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/84

思い出

カーテンの隙間から差し込む朝日は、昨日までのどの光よりも眩しく感じられた。俺は腕の中に収まる凪の温もりを確かめる。


「……んっ……」


凪が小さく声を漏らし、まどろみの中で俺のシャツを握りしめる。彼女はゆっくりとまぶたを震わせ、俺の瞳を見つめた。


「……おはよう、みーくん」


「おはよう、凪。ついに、最終日だな」


「うん……、今日はどこにも行かないよ。お家で、みーくんと二人っきりで過ごすの。……だって、今日からはもう『期間限定』じゃななって『一生』になるからね」


彼女はそう言うと、俺の首に腕を巻き付け、そのまま額を寄せてきた。朝の静寂の中で、二人の呼吸が重なる。俺は彼女の背中に手を回し、その華奢な肩を抱きしめた。


「……ねえ、アルバム作ろう。これから思い出を全部記録していくの」


「いいな。確か使ってないアルバムがあったな」


凪はベッドから抜け出すと、部屋でシャツ一枚のまま、はしゃいだ様子でスクラップブックを広げた。


「みーくん、こっち来て。……ここ、大涌谷のやつ。あ、これは温泉の入り口で撮ったやつ」


彼女は俺の隣に座ると、隙間なく身体を密着させてきた。彼女の柔らかな太ももが俺の脚に触れ、かすかに香る石鹸の匂いが鼻腔をくすぐる。俺は彼女の手を取り、写真を整理する作業を始めた。


「……なぁ、凪」


「ん?」


「これからも大井でたくさんつくろうな」


「……うんっ」


彼女はペンの先をかじり、真っ赤な顔で俺を見上げた。俺はその可愛い横顔に引き寄せられるように、彼女の首筋にキスを落とした。


「……みーくんっ、だめだよ。今、作業中なんだから」


「ごめん、我慢できなかった」


「……もう、ずるいよ。そんなこと言われたら、集中できるわけないじゃない」


彼女はアルバムを放り出し、俺の上に跨るようにして座り直した。その瞳は、俺を捕らえて離さない熱を帯びている。


「ねえ、みーくん。私のこと好き?」


「もちろん、好きだよ」


「……うふふ、いい子。大好き」


彼女の唇が俺の耳元をなぞり、言葉を吹き込む。そのたびに背筋を電気が走るような刺激が伝わる。それから二人で旅行を思い出しながらアルバムを埋めていった。


昼を過ぎても、俺たちはソファから動かなかった。買い出しに行くという名目はあったけれど、彼女は俺の腕から離れようとせず、俺もまた、その柔らかな抱擁から逃げ出せなかった。


「……ねえ、お腹すかない?」


「……すいてる。気持ちは満たされてる」


「……みーくんのバカ。……でも、嬉しい」


彼女は俺の胸に再び顔を埋め、心臓の音を確かめるように静かに鼓動を聴いていた。


「この音、一生聴いていたいな。……みーくん、私を一生愛してくれる?」


「愛してるよ」


俺がそう告げると、凪は俺の胸元で満足そうに微笑み、トクトクと刻まれる俺の鼓動を愛おしむように指先でなぞった。彼女の温もりがシャツ越しに肌へと染み込んでくる。


「うん……なら、一生かけて甘えさせてあげるね」




何度目かのキスを交わした後、凪はふっと肩の力を抜き、俺の胸に額を押し当てた。


「……じゃあ、そろそろ買い物行こっか?」


「そうだね。流石にお腹も空いたしね」


「ふふっ、よし、行こう!」


凪は名残惜しそうにしながらも、弾むような足取りで立ち上がった。俺たちは手を取り合い、少しばかり火照った身体のまま、昼下がりの街へと飛び出した。


外に出ると、夏の強い陽射しがアスファルトから立ち昇っていた。スーパーへと向かう道すがら、前方を歩く二人組の姿が目に入る。


「あ……あれって」


凪が声を上げると、向こうも俺たちに気づいて足を止めた。涼と、千尋だ。

二人は並んで歩いていたが、俺たちの姿に気づくと、パッと距離を置いた。……とはいえ、その動きのぎこちなさが、逆に二人の「近さ」を如実に物語っている。涼は少しバツが悪そうに鼻の頭をかき、千尋は頬を赤らめて視線を彷徨わせていた。


「よっ、お疲れ」


俺が声をかけると、涼は爽やかに笑ったが、その耳は明らかに赤かった。


「……湊か。奇遇だな。お前らも買い出し?」


「ああ。……で、お前らは散歩にしては随分と距離が近いんじゃないか?」


俺がニヤリと笑うと、千尋が「ち、違うよ!」と慌てて手を振った。


「ただ、その……涼が、お土産渡したいって言うから!」


「お土産?」


凪が目を輝かせて二人の間に割り込む。


「ふーん? お土産、ねぇ。千尋、顔が真っ赤だよ?」


「うっ……凪もからかわないで!」


千尋はそう言うものの、涼の方をちらりと見て、とても嬉しそうに微笑んだ。まだ付き合っているという報告はないが、お互いに想い合っていることは誰の目にも明らかだった。


「せっかくだし、このまま二人ともうちに来ないか?」


凪が唐突に切り出した。


「えっ、今から?」


千尋が驚いて涼の顔を見上げる。涼は苦笑しながら、俺の肩を叩いた。


「いいのかよ、湊。お前ら、今は二人きりでいたい時間だろ」


「ああ。でも、この幸せをお裾分けしたくてな。……それに、久しぶりに話したいし」


「……お前、相変わらずだな」


涼はそう言いながらも、どこか安堵したように千尋を見た。千尋が小さく頷くのを見て、涼は観念したように息を吐く。


「……じゃあ、お邪魔させてもらうか。千尋も、いいだろ?」


「う、うん。お邪魔します!」


四人はそのままスーパーへと向かった。凪が俺の手をぎゅっと握り、俺の脇腹をそっとつついてくる。


「みーくん、なんかいい感じだね。私たちに続いて、あっちも……ね?」


「ああ。……なんだか、今日は最高の夜になりそうだな」


涼と千尋、そして俺と凪。夕暮れに染まり始めた街を四人で歩きながら、俺たちはこれからの賑やかな時間を想像して、自然と笑みをこぼしていた。

読んでくださってありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、

★評価やブックマークで応援していただけると更新の励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ