#-01:アポイントメントマン
【小説内の記号ガイド】
* 「」:登場人物の会話。
* 《》:通信などの隠密会話。
* ():登場人物の心の中の声。
* []:AIの初期状態。アナウンスUI。
* ▶ :カメラアングルを動かす、最小限の状況ナレーション。
* ━━:カメラを別の場所・時間へ飛ばす場面転換。
* /////:キャラクターの赤面演出。
━━西暦2056年。地球。
ここはウェルカムマスドライバー(WMD)と呼ばれる超巨大なインフラ施設だ。
WMDとは宇宙資源を迎え入れる巨大なレール。
レールの中は住居になっている。
●ウェルカム・マスドライバー(WMD=Welcome Mass Driver)
地球をひとつの「華」と例えるならば、まるで花弁のように赤道上に建造された、
宇宙資源を安全かつ低コストで地球に「迎え入れる」ために創られた巨大建造物である。
これは、もちろん地球からの物資等を宇宙に打ち上げる用途でも使用可能である。
各国に跨り、赤道上に合計3基が建造されている。
主に海上に建造されており、太平洋、大西洋、インド洋にそれぞれ1基ずつ建造されている。
地球上の各国が手を取り合い協力し、この一大プロジェクトを成し遂げ、人類は宇宙からのめぐみを享受していた。
このプロジェクトを成し遂げるのに大きな推進力となったものが、人類の夢を支えた鋼鉄の巨人、
搭乗型人型汎用作業機械(正式名:多腕多脚式汎用作業機械)「ロボティクス・ワーカー」である。
建造計画は当初、莫大な予算と技術的難易度から難航したが、
ロボティクス・ワーカーの普及により一気に現実味を帯びていった。
開発・建造当初は「ランディング・マスドライバー」と呼ばれていたが、
民間では親しみを込めて「ウェルカム・マスドライバー」と呼ばれ、それがいずれ一般的な名称となった。
ロボティクス・ワーカーとウェルカム・マスドライバー。
この二つの技術が交差する時、人類の未来を大きく変えていくことになる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<ウェルカムマスドライバー住居エリアの構造>
* 【階層1:低所得層・スラム】:地上(海面)〜高さ400m(約100階建て相当)。最も横幅が広く(3km)、空気循環が滞りやすいため下層になるほど過密・劣悪化。工業エリアの騒音が響く。
* 【階層2:中流層】:高さ400m〜800m。最も標準的な都市機能、巨大ショッピングモール、オフィス街が集まる。
* 【階層3:上流層】:高さ800m〜1,200m。最も見晴らしが良く、空気が綺麗。頂点付近は超巨大な避難宇宙船になっていて、WMDから分離・発艦できる仕組みになっている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<ウェルカムマスドライバー全体の構造>
* 居住区本体(WMDコア):長さ150km / 高さ1.2km(1基あたり27億人が暮らす街)
* 宇宙連絡レール(WMDランプ):コアの端から、さらに長さ約400km〜500kmにわたって、細いトラス構造のレールだけが斜め上空へ伸びていく。
* レールの最終到達高度:約80km 〜 100km(宇宙の入り口である「カーマン・ライン」付近)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日の物語はWMDスラム層での出来事
スラム街エリア3番街にある地下ライヴハウス、「モグラの巣」。
ここには駆け出しの名が売れる前のアーティストが夜な夜なパフォーマンスを繰り広げる場である。
今日もひとりの男が壇上で歌っている……
---------------------
アポイントメント☆フィーバー
作詞:アポイントメントマン
作曲:アポイントメントマン
唄:アポイントメントマン
【歌詞】
イッツァッ!ィアポゥィンツメェント~♪
ィアポゥィンツメェント~♪ 俺は大物芸能人の面談を~♪
ィアポゥィンツメェント~♪ しまくるぜぇ~♪
ィアポゥィンツメェント~♪ しまくって 成りあがってみせるぜぇ~♪
ゆぅめっ!(夢) それは大物プロデューサーとの ィアポゥィンツメェント~♪
ゆぅめっ!(夢) それは大物芸能人との ィアポゥィンツメェント~♪
ゆぅめっ!(夢) それは大物映画監督との ィアポゥィンツメェント~♪
俺は~♪ 俺は~♪ 俺は~♪
下☆剋☆上っ! ゲ☆コ☆ク☆ジ☆ョ☆ウっ! してやるぜぇ~♪
下☆剋☆上っ! ゲ☆コ☆ク☆ジ☆ョ☆ウっ! してやるぜぇ~♪
イッツァッ!ィアポゥィンツメェント~♪
せんきゅーぅ♪♪
---------------------
この歌は彼の十八番「アポイントメント☆フィーバー」という唄だ。
少し彼の紹介をする。
【活動名】
ィアポゥィンツメェントマァン
(アポイントメントマン)
【口癖】
ィアポゥィンツメェント~♪
※めっちゃクセ強発音
※発音時のアクション=ィアポゥィン(下唇を強めに噛んでる。前歯見えてる)ツメェント~♪(めっちゃツバが飛んでる。キチャナイ)
【特徴】
・リーゼント。前髪が50cm飛び出ており、先端はスキージャンプ台のように少し上向きになっている。髪全体がポマードでテカテカしてる。アヒル隊長の模型がリーゼントの真上に鎮座している。
・もみあげスゴイ。
・彼のキメポーズは背中を向けて左脚をピンと伸ばし、右脚は少し曲げ、左手は腰に当て、右手を高々を掲げ、「ィアポゥィンツメェント~♪」と叫ぶ。
・手に持ってるマイクはレトロな銀色の四角いやつ。(モデル名:555SH Series X)
・ジャケットの背中には「あぽ」と「ひらがな」で刺繍されている。ステージの光源具合で「あぽ」の「ぽ」の「°」の部分が光源でイイカンジに溶けて無くなり、「あほ」とも読めるときがある。
・「あぽ」が「ひらがな」なのは、子供にも人気が出てほしいのと、誰でも読めるようにする彼なりの配慮から。彼の供給するコンテンツは【R0】つまり赤ちゃんでも触れられるコンテンツ供給を目指している。
・衣装は白のフリンジ・スーツ(Fringe Suit)だが、パーティーグッズに毛が生えた程度の品質のものしか買えていない。
・普段は電話営業で生計を立てている。コミックシンガーソングライターでフリーランスだが、今となっては電話営業かシンガーか、どちらが本業なのかわからなくなっている。
この時代はAIテレアポインターが主流だが、ハイエンドモデルAIテレアポインターを導入する余裕が無い、
やはり人間のテレアポインターを使いたい、といった企業には彼のような人材が重宝されている。
彼の紹介は以上だ。
観客席はガラガラだ。しかしひとりだけ熱心に、彼のライヴを観に来てくれている若く美しい女性が居る。
年齢は二十歳前後だろうか。
女性客「今日も素敵……、アポイントメントマンさん……」
アポイントメントマン(以下ア)「ありがとうございましたー!」
女性客(パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ)←めちゃ嬉しそうに拍手してる
ア「はぁーあ、今日もお客は数人か……、今日もギャラは殆ど無いな……。というか箱代(地下ライヴハウス会場使用料)で赤(赤字)だな……」
女性客「アポイントメントマンさん!今日も素晴らしかったです!!」
ア「あ、はぁ……、どうも。ん?あーアナタいつも最前列で見てくれてる方?」
女性客「アッハィ//////」(あっハイ)
ア「おーそりゃあどうもね。ありがたいです。これからもよろしく♪ それじゃまたノシ」
女性客「アッ!アノッ!!」(あの!)
ア「えっ?あ、はぃ……、なんでしょう?」
女性客「アノ!モシヨカッタラ!スコシオハナシシマセンカ!!」(よかったら少しお話しませんか?)
ア「えっ?まぁ、いいですけど。どうせヒマだし。近くの喫茶店とかでいいですか?」
女性客「アッ!アッ!アリガトウゴザイマス!」(ありがとうございます!)
ア「あーそんなに別に緊張しなくていいよw 私、そんな大物とかでもなんでもないしw」
女性客「イェ!ソンナコトハケシテ!!」(いえ!そんなことは決して!!)
ア「まぁいいや、行きましょうか?」
女性客「はぃ…/////」
━━喫茶店
ア「あーそうなんだww いやーそりゃ嬉しいな♪」
ひとしきり喫茶店での会話が盛り上がったあと、彼女はこう言った。
女性客「アポイントメントマンさん、まだお時間、ありますか……?」
ア「えっ?あーまぁ、あと少しなら。なんで?」
女性客「よかったら、その……、30分だけでも、カラオケ行きませんか……? あ!すみません!ライヴでお疲れなのに!こんなお願い!」
ア「あ、いや別にいいよ。どうせ明日は休みだし。1時間くらいまでなら大丈夫よ」
女性客「ああああああああありがとうございマゥ!」←若干噛んだ (ありがとうございます!)
……イッツァッ!ィアポゥィンツメェント~♪
せんきゅーぅ♪♪
ア「ごめんね、なんか結局箱と一緒になっちゃった♪」
女性客「うううううう嬉しいでっす!!!」
ア「あ、君の番だよ♪ほら、マイク」
女性客「あ、はぃ/////」
━━(女性客めちゃんこウマイカラオケがはじまる)
ア「……………しゅごぃ」(すごい)
女性客「えっ?あっ!そんな!アポイントメントマンさんにくらべたらそんな!私なんか!」
ア「いや!それキミ才能だよ!すごいよ! 早速来週(地下ライヴハウス「モグラの巣」で)新人枠のイベントあるから! 出なよ!!」
女性客「えー…、いやぁ…、んじゃあひとつお願いがあるんですけぉ……(けど)」
ア「ん?なに?」
女性客「新人枠に出るんじゃなくて、もし差し出がましくなければ、その……、私の歌唱力にそこまで魅力を感じていただけているのなら……」
ア「はい……」
女性客「一緒にユニット組みませんか!!すでに構想はあるんです!!」
ア「……」
ア「……」
ア「……」
ア「……ぇ?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
---------------------
【女性客の構想】
---------------------
【ユニット名】
アポイントメントダンディー&アポイントメントレディー
【各アーティストのなまえ】
◎アポイントメントダンディー|APPOINTMENT-MEN-KAI(アポイントメントマン|改)
◎アポイントメントレディー(元:女性客)
【口癖】
同じ
ィアポゥィンツメェント~♪
※めっちゃクセ強発音
※発音時のアクション=ィアポゥィン(下唇を強めに噛んでる。前歯見えてる)ツメェント~♪(トレーニングの末、ツバは飛ばなくなった)
【アポイントメントダンディーの特徴】
●衣装:フリンジ・スーツ(Fringe Suit)の色が黒&金のライン入りになっている。サテン生地。
(20世紀に活躍した某カンフースターが着用していた黄色い衣装
「イエロー・トラックスーツ(Yellow Tracksuit)」「イエロー・ジャンプスーツ(Yellow Jumpsuit)」風の黒&金のライン入り)
●フリンジ(Fringe)またはタッセル(Tassels)が、さらに長大化。なんかキラキラしている。
●グラサンかけてる。レンズはマジックミラーみたいなギラギラした色だが、ちゃんと裸眼並みに、ほぼ暗くならずに視界が確保されている。
●肌はヒサロに行ってめちゃめちゃ焼いている。
●メンズ用のピンクの口紅を付けている。
●髪はサラサラアフロヘア。以前よりも清潔感が増している。アヒル隊長の模型に加えてシラコバト(白子鳩)がアフロの中に居候している。
【アポイントメントレディーの特徴】
●衣装全体は基本的にアポイントメントマンを踏襲しているが(白のフリンジ・スーツ(Fringe Suit))、生地の質が彼女の財力で品質が上がっている。サテン生地。
●肌は彼女の美しい白い肌と衣装の白を合わせてそのまま。ヒサロとかで焼いてない。
●口紅はナチュラルピンク。
●グラサンとアフロはアポイントメントダンディーとお揃い。
●ただし彼女のアフロの中にはスズメが居候している。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ア「……」
ア「……」
ア「……ぇ?あー……、えっと……、、、おじゃましましたぁ……」
女性客「いやいやいやw あのw ドン引きしないでくださいw」
ア「というのは冗談でw よく出来てるね、これ。このアイデア、いつから?」
女性客「3年前から……」
ア「俺、活動始めてまだ半年くらいの頃ぢゃん…。その想い、無碍にはできん……。 謹んで、お受け致す」
女性客「あああああありがとうゴザイマス!!」(ありがとうございます!)
───その後の彼らの活躍は、
飛ぶ鳥を落とす勢い
破竹の勢い
日の出の勢い
昇竜の勢い
当たるべからざる勢い
騎虎の勢い
人気うなぎ登り
人気絶頂
引っ張りだこの人気
全盛期
向かう所敵なし
カリスマ的な人気
となりました。
二人はいつまでも歌いながら幸せに暮らし、
そしてその歌を聴いた人々も笑顔に、幸せにしていきました。
彼らはこれからもたくさんのイベントに出演することとなりますが、
それはまた別のお話。
━完━
---
【用語】
・ウェルカム・マスドライバー:略称「WMD」。宇宙資源を迎え入れる巨大なレール。レールの中は住居になっている。
・ロボティクス・ワーカー:略称「RW」。人型汎用作業機械。全高15メートルの搭乗型ロボット。(小型種=7メートル以下/中型種=10メートル以下/大型種=15メートル以上)
本編第1話の前日譚です。
本編第1話はこちら▼
https://ncode.syosetu.com/n9533le/5




