#-01:リョウコ
【小説内の記号ガイド】
* 「」:登場人物の会話。
* 《》:通信などの隠密会話。
* ():登場人物の心の中の声。
* []:AIの初期状態。アナウンスUI。
* ▶ :カメラアングルを動かす、最小限の状況ナレーション。
* ━━:カメラを別の場所・時間へ飛ばす場面転換。
* /////:キャラクターの赤面演出。
━━西暦2056年。地球。
超巨大なインフラ、ウェルカムマスドライバー(WMD)商業施設エリア。
WMDとは宇宙資源を迎え入れる巨大なレール。
レールの中は住居になっている。
とある掃除婦の独白|リョウコ・カザモリ
私は今日もWMD内の商業施設を清掃に来た。
21世紀を半分過ぎても、私のお掃除スタイルは21世紀になったばかりの頃とあまり変わらない。
各種お掃除があって、カートでそれらを運びながら各フロワを掃除している。
特に誰から感謝されるワケでもなく、私は毎日を掃除して過ごす。
今日も無事、1日が終わる。
私は食品売り場の割引品をいくつか手に取ると、足早に家路を急いだ。
楽しみにしているドラマの再放送がある。
別に録画したり配信で見ればいいんだけど、
リアルタイムで晩ご飯食べながら見たいというナゾのコダワリがある。
今日も間に合えばいいな。
遠くの景色に見える大きなガラス越しに「ロボティクス・ワーカー(RW)」と呼ばれる人型の大きなロボットで、WMDの外壁清掃をしているスタッフが見えた。
あぁ、あたしもRWに乗ることができたなら、
あんなふうにカッコよく鋼鉄の巨人を駆って掃除ができるのかな、楽しそうだな、
そんな風に思った私の足は、既にRW教習所に向かっていた。
思い立ったが吉日。その日からの行動は早かった。
職場の上司にはシフトを調整してもらい、RW教習所に足繁く通う。
幸い貯金はあったので教習の費用は借金することなく用意できた。
というかどこも人手が足りないらしく、免許取得の優遇制度もあって、安く取得できた。
RWの小型種だけど、別に軍に入って戦闘をするワケじゃないので小型種で十分だった。
昔のバイクの免許で言ったら中型免許、400ccまでの排気量のバイクに乗れる、
そんな感覚のRWの免許だ。私は念願の【RWによる】WMDの外壁清掃の仕事をはじめた。
WMDの滑らかな曲線を描く床面をRWを自在に駆って清掃するのはたのしい。
RWの脚部にはローラーダッシュ機構が備わっていて、まるでスケートでもするかのように掃除できる。ぶっちゃけめちゃんこたのしい。
そして私たちが清掃することでWMD内の冷却効率や地球温暖化を防止するメカが効率よく動くらしい。
まるで私たちは、地球の巨大なエアコンを掃除しているような気持ちになった。
先日、久々昔の元同僚の人とカフェでお茶した。
元同僚の人はメカ音痴で、私のようにRWに乗ったりというのはムリなのだそうだ。
それで若干、元同僚は私に対してコンプレックスを抱えている。
あなたはいいわね、適性があって。私は未だRWにも乗れず、こうして地面で小さく掃除しているだけ。
私は貴方が羨ましいわ、と言われた。しかし私はこう、返した。
掃除の作業にどちらが上とか下とか無い。私はRW乗りの清掃員になってしまったけれど、
RWじゃ入り込めない、人間の生活に根差した細かい場所の清掃は貴方達が未だに必要。
ロボット掃除機もあるけれど、人間の繊細な判断力、行動力が求められる分野はまだまだある。
だからどうか、貴方も誇りをもって、掃除をして。
誰からも感謝されなくても、誰かがきっと見ている。
少なくとも私は貴方のことを尊敬している。
これからもお互い違うフィールドでがんばりましょう。
そう、私は同僚の彼女に伝えた。
彼女はやっぱりアナタには敵わないわ、と少し呆れたように私に言った。
お互い、身体に気を付けて日々を過ごしましょう。
お互いのささやかな楽しみのために毎日を生きましょう。
また逢う日まで、さようなら。
私は今日もWMDの外壁を誇り高く、磨き上げる。
━完━
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【用語】
・ウェルカム・マスドライバー:略称「WMD」。宇宙資源を迎え入れる巨大なレール。レールの中は住居になっている。
・ロボティクス・ワーカー:略称「RW」。人型汎用作業機械。全高15メートルの搭乗型ロボット。
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【ロボティクスメイカー|設定紹介】
ロボティクスメイカーの公式サイトはコチラ↓
https://robotics-maker.jimdofree.com/
本編第1話の前日譚です。
本編第1話はこちら▼
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