Chapter8
「月見、4体ずつでいいよね?」
オレの後ろ――背中合わせになった皐が周りの蜘蛛を顎で指す。
まあ、蜘蛛というか……。あれは何なんだ?
鎌みたいな口の機械に足が8本ついている。それもかなりデカイ……。
オレなんか丸呑みだねアレは……。
しかも、8体もいるわけで……。まあ、とりあえず――
「颯ッ!」
オレの横のドールが銀色の光に包まれる。
そして、その光の中から放たれた4本の銀色の光、それが1体の蜘蛛を貫く。
「えっと、確か……。颯の基本仕様が質量変換で、オレとの能力が呪縛系の技、だっけ……?」
オレは、横の大きくなったドラゴンを横目に呟いた。
この世界のオレから教わったことだ。――まあ、半分くらい理解できてないけれど……。
「とりあえず、行けぇっ!」
オレは、ドールに――颯に詩歌への想いを伝えていればいい。
あれから、この世界のオレと練習してきたように。――勝てたことはないけれど……。
――――オレたちがこんなことになっているのは、この世界のオレの頼みを聞いたからだ。
その頼みの内容は――
『1人のドールの顔を見て来て欲しい』
現在、実質上この世界を束ねているとかいう奴らのところにあるドールの顔を見て来い、というのが彼の頼みだった。
彼は、颯や紅椿の兄弟と言えるドールを集めているらしい。
それらのドールは、オレたちが颯たちを受け取った時に言っていたように『主を選ぶ』のだそうだ。
そのうちの1体であるドールの顔を見て来て欲しいと言う。
正直、意味不明だったけれど、彼の表情が真剣だったから、オレたちはその頼みを受けたのだ。
それで、何で変な蜘蛛に襲われているかと言うと――少し前のことになる――――
この世界のオレから戦い方を教わったオレと皐は、巨大な建物の前に立っていた。
「これはデカイな……」
「月見、ビビってる?」
皐……。男にそんな嬉しそうな微笑を向けられても嬉しくないぞ……。――むしろ、キモイ……。
「ん……? 月見?」
いや、ホント……。
「なんか、あっさり入れてくれたな……」
「コレクターってのは、コレクションを自慢したいもんなんじゃない?」
「知らん」
「ホント、月見って男には厳しい……」
皐が何かブツブツ言っている間に、目的のドールの所まで着いたわけだけど……。
「顔を見てくるだけでいいって言ってたっけ……?」
オレは多分震えていただろう。目の前にいるそれは……。
「ボクたちじゃ、助け出すなんて無理だって言ってたでしょ? それに、この世界の月見でも助けようとして何度も失敗してるって」
そう……。この世界のオレがオレたちに頼んだのは、もう自分がそこに行くことができないからだ。
「だけど……ッ!」
「月見、ちゃんとあの子の顔を見て、笑ってればそれでいいって言ってたでしょ?」
確かに彼女は笑っていた。柔らかそうな頬を朱色に染めて、優しそうな微笑みを浮かべている。
――しかし、その胸は開かれ、おそらく心臓にあたるであろう場所にある歯車、それに棒が刺され歯車の動きは止められている。
――やっぱりダメだ。怒りが込み上げてくる。
「なあ、ドールってのは心があるんだよな?」
オレは震える声で皐に問いかける。
「はあ……。しょうがないし付き合うよ」
皐は肩を竦めてみせる。
オレたちのドール――颯と紅椿が光に包まれたかと思うと、オレたちは何処かに飛ばされた。
何が起きたのか考える暇すらなかったね……。
――ただ、そのとき見たんだ。そのドールの、彼女の首に付けられた首輪を……。
『Si-ca』
その首輪に刻まれた、彼女の名前……。




