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Chapter11

『えー、あー……』

 スピーカーから聞こえてきたのは、間違いなく月見里翔の声だった。



 ――『Si-ca』というドール……。いや、少女のことを思い出して欲しい。

 彼女のことを知らないという人はいないだろう。彼女は人間に近づきすぎたドールとして、世界中から罵倒され続けた。

 確かにオレも彼女のことを壊そうとした。べつにそのことを悔いてはいないし、今さら許して欲しいとも思っていない……。

 けれど、やはり間違ったことだったとは思う。これを聞いてくれている人の中にも過去のことに何か思うところがある者もいるはずだ。

 それでも、世界が彼女を認めようとしない。そのせいで、誰も彼女を認められないでいる。

 だから――

 もう1度考え直して欲しい。彼女が本当に……。

 本当に、存在してはいけなかったのかを。


 人型のドールならいくらでもいる。

 心をもったドールだって……。というか、どんなドールにだって心はある。

 自分のドールを見てみなよ。そいつは、あんたにとって何なんだ?

 共に戦う――仲間、相棒、友……?

 愛情を注いだ――家族、息子……?


 皆が自分のドールを大切に想うように最上心もがみ うらという少女もSi-caを大切に想っていた。

 最上心は、べつに神に近づきたかったわけでも、決してなりたかったわけでもない……!

 ただ、――友達が欲しかっただけなんだ。

 心が……、あいつがどんな想いでドールを作ったのか、誰も知らないだろ……。


 あいつは、人形技師としても機功師としても完璧すぎた。

 あいつは、1人が好きだから、1人でいたわけじゃない。

 ――あいつが1つのチームにつけば、戦争がおきる。

 ――あいつが誰かと仲良くなれば、そいつはたくさんのチームに狙われることになる。

 そうやって、あいつは1人でいるしかなかったんだ。誰もが身に覚えのあることだろ……。


 だから、少しでも……。変わりたいと思うなら。オレを手伝ってくれないか……?

 オレは、Si-caを助ける。たとえ、世界が変わろうとしないのなら――

 オレは世界を敵にまわしても、Si-caは助ける。それで、もしできるなら、それで世界を変えるよ。


 ――人もドールも傷つかないでいられる、戦争のない世界を……!!!


 最後になったけど、オレと戦ってくれる人は、ここ――電波塔前に集合。時間はどれだけかかってもいい。

 それじゃ、待ってる。



 ――それは、とても文章とは言い難い言葉だったけれど。

 その文章でちゃんと伝わるとは思えない。そんな文章なのに。

 それは、どこか暖かく、頭ではなく心に伝わってくる。響く、と言った感じだろうか。

 けれど、人を動かすのは、そういった言葉なのかもしれない。

 ――現に……。いや、わざわざ言う必要もないだろう。

 まあ、強いて言うなら、この行動が世界を変えることになる。それも他の世界を巻き込んで。



 ――町中の人々は、テレビの砂嵐、ラジオのノイズ……。そして、自分の作ったドール、自分と共に育ってきたドール、共闘してきたドール……。

 それらを見つめ、小さく、とても小さく頷いていた。



 ――暗がりの中、ラジオの音と2人の話し声だけが聞こえて来る。

「ふぅ……。あいつ、やっとふっきれたみたいだね。行こう、水月すいげつ

 紅い瞳の青年と、白い髪、白い着物を身に着けた少女が立ち去り、ラジオのノイズだけが静寂を破っていた。



 ――そして……。

「ふふ……。やるわね、キミ?」

 甘ったるい声が響く。

 ――紅い霧がたくさんの蜘蛛を包む中、それは翔へと向けられていた。

「な、何を……?」

「だからぁ……。キミも今放送室を占拠してる子も同じ、キミでしょ?」

 それは、翔たちが同じ存在であることを確かに理解していた。

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