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Prologue -夢-
握った手を離すことが出来なかった。
離そうとすればするほど、強く堅く握ってしまう。
……でも、やっぱり離さなければいけないんだ。
わかっていた……。わかっているつもりだった……。
その手を求めちゃいけないことも、そこにいるのが……あいつじゃないことも。
「…………」
目が覚めるとオレは布団の中で丸くなっていた。
まぁ、あれだ、夢を見ていたらしい。
「夢……」
まだ、はっきりと覚えている手の感触を確かめる様に手を強く握る。
「夢、だよな……」
もう一度言葉にすると、目の奥に熱いモノが溜まっていることに気付く。
それは、間違いなく涙だった。
いつから涙を溜めていたのかわからない、ただ溢れ出した涙は止まらない。
「はは……。夢見て泣くか、普通」
しばらく経つと涙を拭い、まだ生温かさの残る手をゆっくりと開く。
手を開くと、手に残った温もりは消えていった。