厳冬
一年で最も寒い時期の厳しい冷え込みが、その日は少しだけ和らいでいた。暖かで平和に思えたはずの昼ごろに、実際には天変地異の日であったことを思い知った。
客が来たのだった。
正しくは客ではなかった。仕事の依頼でもないし、そもそも約束もしていなかった。
そのひとは、突然家に乗り込んできて叫んだ。
「先生、先生! どちらですか? デイです!」
「うわっ、だ、だれ?」
乱暴な扉の開閉音と足音に、怒号のような呼び声が重なった。たまたま居間にいた僕は、反射的に振り返った。
しっかりとした体躯の男が立っていた。驚いたのは男も同じだったようで、視線がかち合う。
「あれ。きみは?」
「だ、だれ……ですか」
先ほどの怒号よりは幾分落ち着いた声が、明確に僕に向けられる。驚きも恐怖も自覚する暇がないまま、僕は目の前の男を見た。
上下が揃いの生地で作られた服を着ていた。町でたまに見かける、きっちりした商売をするひとが着ている服だと思った。短い赤髪も整えられていた。服も髪もゆるゆるした感じがある先生とは、なんとなく正反対の印象を受けた。
男は、僕の質問には答えずに言った。
「突然押しかけ、申し訳ありません。だがよかった。エン先生はどちらに?」
僕は一瞬、息をすることを忘れた。
「エン……先生?」
「そう、こちらにいるはずでしょう」
耳に慣れない言葉がこだまして、体を硬直させた。
そこへ、先生の声がする。
「……デイさん」
聞いたことがないような、低く硬い声だった。
いつの間に部屋から出てきたのか、まったく気づかなかった。「エン先生」という言葉の反芻だけに、感覚のすべての機能が使われていて。
先生は僕の隣へ来て、肩に手を置いた。
「ごめんね」
僕に降り注ぐ声は、いつもと変わらぬ色をしている。
「この方は僕の知り合いだ。少し話をするよ」
「せ、せんせい」
目線が合って、その姿も普段と変わらない。
「びっくりしただろう? ……きみは休んでおいで」
「先生っ!」
だけどすべてが違っていた。錯覚をする。名前を――本当はありふれた呼称でしかないそれでも――呼ぶしかできることはなく、それをしなければ先生が消えてしまうような。
夢中で声を張る僕に、先生はあくまで優しい。
「ごめん、きみをひどく悲しませているだろう」
残酷な優しさだ、と思った。
正確に僕の思いを汲んでいて、だけど欲しくない言葉を降らせる。
先生、どうして謝るの。
どうして、ただ謝るだけなの。
「……ただ謝らせてくれ、それしかできないんだ」
見透かしたような言葉に、より打ちのめされたように感じた。僕は茫然とうべなうしかできなかった。
デイという男に向き直った先生は、声も表情もやはり別人のようだった。
「よくこんな所まで、お分かりになりましたね……」
「すみません。無礼も非常識も自覚しています。でもあのような去り方は、とても」
「デイさん」先生の鋭い語気が遮った。「要件は部屋で聞きます」
先生の部屋に二人分の影が消え、僕も部屋に駆け込む。からだじゅうを流れているものがはちきれてしまいそうに感じるのを、ひたすら耐えた。
男の声は、僕の体におさまらず部屋中反響しているかのごとく続く。
耳になじまない言葉。
先生の声もだ。
足元に暗い穴が広がっているかのように、落ち着かなかった。
しばらくして、先生が部屋の戸を叩く音がした。
「出てこれる?」
毛布をかぶってぐるぐると瞑目していた僕は、はじかれるように飛び起きた。あわてて扉の前へ駆け寄る。
「はい! な、なんですか」
「……大丈夫かい」
先生の声に、一瞬ひるんでしまう。その空白を先生は明確に捉えていたけれど、何も言わなかった。
「頼みがあるんだ。あのお客さんね、デイさんって言うんだけど……しばらく滞在なさるから。最低限、必要な世話をしてもらっていいかな」
「え。あのひと……帰らないんですか」声に、驚きよりも険が伴ってしまう。
「事情があって」先生は、僕に負けず劣らずの苦々しい顔で答えた。「それと――」
先生が一瞬目を伏せたのが、僕の胸に焼き付いた。
「すぐに行かなくてはならない所ができた。僕は……留守にする」
「……え」
呆然と力が抜ける僕に対して、先生は硬い。柔和のはずの目元が、硬く冷たくて、それは僕に向けられていた。僕から何かを遠ざけ、隠して、拒否していた。
僕は淀みを自覚した。
「あの……」
「ん?」
その淀みは、デイというひとへの、憎しみにも近かった。
他方で、ためらいの気持ちも鋭利に牙を光らせていた。言ってはただではすまない。なかったことにはできない。これまでのようには、過ごせない。
だけど。
こころの中に渦巻く淀みで、おかしくなりそうだった。
嵐が言葉を押し出す。
「――エン」
僕の淀みに、先生が身を震わせた。あからさまなほどにはっきりとした動揺だった。
僕を見つめていたはずの瞳が、彼岸へと焦点をずらす。虚空の先に、ここではないどこか、僕ではない誰かを見つめている。
「あ……」
ためらいだった感情は後悔と罪悪感に姿を変え、僕の首筋に牙をひたと据えた。
「ご、ごめんなさ……せんせ……」
掻き消すように昏い声がした。僕の淀みさえ、まるごと呑み込んでしまいそうな。
「リタ――」
え、と呟いたはずの言葉が音にならない。
ふと視界が陰った。
先生の顔が、近い。
そう自覚した時には先生の腕に包まれていた。先生の肩に顔が当たって視界が遮られる。身動きがとれない、覆いかぶさるような抱きしめ方だった。圧迫する力はどんどん強まり、息が苦しくなっていく。
先生、と喉を動かす。ろくな声にはならないが、振動は肩から伝わったはずだった。
しんと怪訝な無反応を返す先生の様子を、何とか伺おうと身をよじる。
その時。
「――リタ、会いたかった、リタ」
真っ暗な視界の中で、抑揚のない声が耳朶を打った。
僕は、思わずぞっとする。
先生がかたくなに名乗らず僕の名前も呼ばなかった理由が、骨の髄まで染みた。
これは、先生の秘密だ。
「っ!」
突然、眩暈がした。
一瞬遅れて、僕は自分の認識の違いを悟った。
先生に、強く押されたのだった。
バランスを崩したところを掴み、先生は僕の肩を押すようにして歩く。後ろ歩きの僕は、転ばないことで精一杯だった。
「うわっ」
再び体を押されて、つい先ほどまでも伏していた寝台の上に転がる。背中を打った衝撃が痺れるように走った。
だが、痛みにひるむ間もなかった。
倒れている僕に先生が覆いかぶさって、立っていた先ほどとは比べ物にならない拘束が降ってきた。
先生の肩と髪越しに天井が見えている。そのほかのすべては、先生の手中に落ちているかのような錯覚をする。
心底大切なものを閉じ込めるかのような抱擁が、恐ろしい。
先生は僕の体ではなく、ここにないものを抱いている。
ひとたび触れては、現世に生きるものが踏み入れてはならない領域に引き込まれるような、どろどろに溶けた闇のようなものだ。
そこに名付けられた「リタ」は――僕を示すものではない。
僕は必死に力を込めて叫んだ。
「せんせ……っ、先生! 僕は、『そのひと』じゃない!」
僕を縫い付ける力が、凍った。
先生には、ちゃんと聞こえている。震えて動かなくなりそうな喉を、奮い立たせた。
「先生! しっかりして、お願い、こわいよ」
「きみは……」
先生の声は、先ほどの抑揚のない声色ではなかった。顔を上げた先生と、目が合う。
「先生……」
いまだ先生が僕を組み敷いていても、その目を見てほっとした。自然に声がこぼれた。
先生はもう力を入れていない。不気味な亡骸を抱くような、憑き物に支配されたような気配も、消えていた。
先生は身を起こした。
「ごめん、最悪のことを……。怖い思いをさせた」
安堵と罪の意識がごちゃ混ぜに広がって泣きそうだ。喉が詰まる前に言葉を絞り出す。
「先生、僕こそ」
「やめてくれ。きみは悪くない。僕は手に入らないものばかり追いかけて、きみにずっと背を向けている。そのことに向き合わなければ、いつかはこうなると……ずっとわかっていたのに」
一方的な言葉を残して先生は立ち上がる。僕はとっさに言葉が組み上げられなかった。先生のむちゃくちゃな物言いに、ちゃんと言い返さないといけないのに。求めてもいない謝罪や説明にもならないことしか言ってくれないことに、異議を唱えたいのに。
「ま、待って」
離れてしまう恐怖が湧いたら、結局すがりつくことだけで僕の頭はいっぱいになってしまう。
生まれた家から帰る道のりの、空っぽな感覚を思い出す。あの空白は、とても怖い。虚空に穴が開いているように不穏で、不気味に胸が凍るのだ。
「僕は先生といたいのに! こんなの怖くない、先生と離れるほうが怖いのに、なんでわかってくれないの?」
離れるのは、恐ろしくいやなことだ。
それが僕のすべてだった。
だけど、先生は振り向くこともなく告げた。
「その気持ちは、僕がそう仕向けただけのものだ。きみがまんまと僕無しで生きていけなくなるよう、慈悲深いふりをして欺いていたということだよ。だけど僕はきみではなく……別の、死者を見ている」
言葉が切れると同時に扉が閉まる音がした。
まだ追いかけられる、とわかっていても、体が動かなかった。
しばらく呆けていると外で足音がして、すぐ遠ざかっていく。先生が本当に家を出たことを知った。
先生の言葉が、僕の皮膚の上でずっと踊っている。
呑み込めず、捨てることもできない。表層を漂うことだけを繰り返す。
それでもようやく、残滓を探すかのように腰を上げた。先生の部屋に向かって、はたと人影を認める。
「あ……デイ、さん」
「やあ。先生から話は伝わりましたか。突然無礼なことをして、すみません」
赤目を友好的な色に染め、朗らかに言う。僕は急速に現実が動き出すのを感じた。
「えっと……だ、大丈夫です、聞きました」
「うん、じゃあよろしく頼みます。えーっと、きみの名前は?」
からだの内側がずくりと痛んだ。
恐れをしまいこんで、答える。
「あ……リ、リタ。です」
「――リタ?」
デイさんの声色が変わった。
「え? そう……です」
「……あのひと、まさか。それ、本名?」
「ほ、本名です、けど」
デイさんは、深く息を吐いた。
「あの……」
「どうやら、俺はずいぶん業が深いところへ闖入してしまったようですね」
「えっと」
「リタさん」居心地が悪いようで、くすぐったくもある呼び方だった。「俺は、デイと言うんだ。首都の辺りで、本の編集の仕事をしているんです」
言いながら、僕を椅子に座らせた。
知らない家で初対面の相手にも、慣れた動作に見えた。たぶん先生とは全然違ったタイプの、なんというか器用なひとなのだろうと思う。
「エン先生とは、二年ほど前に研究録をまとめるお手伝いをすることになって、知り合いました」
ケンキュウロク、と慣れない単語を口の中で繰り返す。エン先生、という言葉は必死に聞き流すことにした。
「そう。あの方は気鋭の学者で、この国にとって非常に重要な研究をしているんです、研究の足跡をまとめることも大きな意味を持つんだよ」
どこか遠い国の話のように聞こえた。
デイさんは、そんな僕の脳裏を理解していた。
「とまあ、その先生の小間使いらしき方にこんな講釈を垂れるのは無意味なはずなんだけど……リタさん、ピンと来ないって顔してますね」
「う、あの……知らなかった。先生は確かに何か調べてるみたいだけど……そんな」
首都で、国にとって重要な研究をする気鋭の学者?
仕事よりも体調とばかり向き合い戦っている、先生のイメージとつながらなかった。
「招かれざる客が詮索するのは愚劣だろうけど……訊かせてもらうよ。きみは、なぜ先生のもとに?」
答えられなかった。先生がうしろめたい手段と称したことが、今更頭に浮かんだからだ。
関係のないことだと思っていたのに。いざ誰かに、堂々と言えないなんて。
こころの底からそう思えていなかったことを、後悔する。
「……まあ察しはつきますよ」
「ごめんなさい、その」
「リタさんが謝ることじゃないだろう」
「でも僕、やっちゃいけないことをした、労働者として」
「ん?」
デイさんは、机を挟んでも距離を埋めるのがうまいひとだった。先生の優しさとは違う、力強さがあった。ずっと欠けているものを、どんどん埋めていく会話をする。率直で、不安に揺さぶられない。
――そうだ、先生のことは、欠けていることだらけだ。
飢えているものを補ってくれるなら、客でもなんでもよかった。
先生がいないということが、僕の今のすべてなのだ。
「名前、呼んじゃって……それで出て行っちゃった。先生は名前、絶対教えてくれなかったんだから。あれはやっちゃいけないことだったんだ」
「え。まさか」
「デイさんが呼んでたから……名前、初めて知って、それで……」
「あちゃー、俺が地雷を踏みぬいたってことですね。それは、なんと謝ればいいか……」
失態だ、と言わんばかり額に手を当てる。
反応がわかりやすくて、僕は自分がほっとしたことがわかった。
このひとには、秘密がない。触れてよいものが何か、立ち入ってよい範囲はどこか、終始気にする必要がない。
デイさんは、手を口元に滑らせて、ふむと喉を鳴らして思案した。
「まったく……あのひと、名前さえ言ってこなかったんですか」
「僕の名前もさっき初めて呼ばれました」
たぶん違う誰かを呼んでいた、と付け加えるべきなのか決めかねた。
「うーん」デイさんの声には、ため息と悩むような呻きが混じっている。「そういえば、先ほどの『労働者として』っていうのは?」
「えっと……先生、最初に僕にそうに言ったんです。だから僕は先生に言われた『仕事』だけやるべきだったんだ」
「きみの仕事って?」
「挨拶したり、体調を訊いて、買い物したり……片付けしたり、いろいろです」
「なるほど。きみは先生に雇われた『労働者』として、先生の世話をしていたと」
僕は頷き、デイさんは表情を引き締めた。
「リタさん。きみはたぶん、先生の機微をうまく感じ取ってきたんだな。名前も知らないひとと四六時中付き合うのは、相当に大変なはずだ。そしてね、労働者というのは、確かに仕事の内容に応じた労働力を提供する」
グラスを介さない瞳は、飴のようなつるりとした光沢が浮かんでいるのがよく見える。茶色がかかった赤い瞳はこれまでに見たことがなく、惹き込まれた。
「だけど、当然の疑問や不満を改善していく権利くらいは持ち合わせているものだ」
真剣に僕の目をまっすぐに見返すから、なおさらだ。虚偽の映らない水面のようだった。
「名乗らないなんていうのは、雇用者としては不誠実な行為だよ」
「不誠実?」
「きみを騙すような行為ってことだ」
――慈悲深いふりをして欺いていたということだよ。
先生の言葉が蘇り、こころに刺さる。
「ましてや、こんな子どもをやりこめているなら、奴隷と呼ばれても異は唱えられないだろう」
こころの奥深くを突き刺すことばかりでも、ここは僕が触れられなかった場所だ。
先生のことを知りたくて、なのに目を向けてはいけないような、恐ろしさを感じていたところだ。
僕は膝の上の手をぎゅっと結び、息を呑んで決意を固めた。
「デイさん。どうしてここに?」
「ああ。俺はずっと先生を探していたんですよ。先生はある日、突如として消えてしまったんです」
デイさんが告げた「先生が消えた日」は、僕がここへ来た季節とあまり変わらなかった。
「いろいろ伝手をたどってね、我ながら必死ですよ。逃がさないよう、こうして乗り込んでしまったくらいですから」
デイさんは、ばつが悪そうに苦笑する。
「先生と仲が悪いんですか?」
「そうじゃない……と思ってますけどね、俺は。でも態々消えてしまうからには追ってきても歓迎されないのが当然ですよ」
外で梢の音がして、空白を埋める。
風が出てきたのかと考え、先生の顔が頭をよぎった。
「何か用事があったんですか?」
「用なんて大層なことはありません。こんなことを言っては恥の上塗りですが……俺はただ、先生を支えたいと思っていたんです、ずっとね」
「支えたい?」
「先生は非常に該博な方ですが、いつも何かを韜晦しているような気配がありました」
ぽかんとする僕に、デイさんは付け加えた。
「ああ、本心を隠すって意味です。なんとなく、塞いだような脆さがあったんですよ」
それは、わかるような気もした。
先生は幸せじゃない。先生はひとりきりだ。秋雨の中でそう思ったのは、どれだけ改めたつもりでも、結局どこかで捨てきれなかった。
「俺はその陰りを見て支えたいと思ったんです。叶うなら公私を問わずに」実直な目が、弱った。「そばにいることを正当化できるのなら……家族になりたいくらいです。まあ、そんなに入れ込んで、世間から見れば異常なことでしょう」
家族、という言葉は僕の胸襟を揺らした。
弱いところを、万感を込めた声で打ち明ける響きも。
このひとは強くて、魅力的だ。本心をそのままかたちにして、ひとに見せることができる。先生がいなくなれば追いかけることもできる。自分の信じるもののためにゆるぎなく行動する、こころもからだも均衡のとれた、おとなだ。
僕は、悲しみが広がっていくのを感じた。
僕は先生の家族になりたかった、先生も同じことを言ってくれた。だけどすべて偽りだったかもしれない。仕向けられた気持ちと嘘の返事ではなかったなんて、どんなに強がっても断ずることができない。先生はこんなに立派なひとを家族とすることさえ、拒否しているのだから。
先生は、やっぱりひとりきりだ。
誰も近づかせてくれない。
「う……」
「リタさん?」
「す、すいませ……」
こらえきれない涙が込み上げる。止めなくちゃと思えば思うほど、どうにもならない。目から滴がこぼれて、意図しない嗚咽が追従した。
ああ、だめだ。
だめなのに。
「リタさん、泣いていいんだよ」
デイさんが隣へ来て、肩を抱いた。
「今泣かなくては、きみはずっとこの気持ちに囚われる。きみの時間は止まり、きみの季節は流れなくなる」
思考も感情も、身の内に閉じ込められていく。体の芯からゆびさきまで満たしているのは、悲しみと悔しさだ。
「あのひとのように……隠しこんではだめだ」
同じ気持ちを宿した声がすぐ近くで聞こえる。
その言葉は僕の箍を外した。
「……せ、せんせい、せんせ……どうして。っ……」
涙も言葉も、もはや止めようがない。
僕がデイさんの襟元を握りしめると、デイさんは僕の肩を手のひらでぽんぽんと叩いた。優しく、引き出すような挙措だった。
僕は、枯れ果てるまで慟哭した。
泣き叫んでいる間中、先生のことで頭がいっぱいで、風の音も、自分の声さえも遠く聞こえた。