表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/36

第33話「戦闘の果てに」

ーフォルフ地方・迷いの森ー


‘天の魔法’を代々受け継いできたユキとの出会いもつかの間、ルスタの部下の襲撃を受けたキラウェル。

ラルフとアルフォンスが警戒していたことが…起きてしまった。


しかしキラウェルは動じることなく、まるで受け入れていたかのような態度である。

男はそんなキラウェルの態度が、どうも気に入らないようだ。


『貴様と出会わなかったら…ルスタ様が死ぬことはなかった…!!貴様がルスタ様を追い詰めたんだ!殺してやる!!!』


男はそう言いながら、クナイを振り回してキラウェルに襲い掛かる。


『…逆恨みもいいとこだわ』


キラウェルはそう言うと、白夜を鞘に戻して臨戦態勢をとる。


『逆恨み上等!俺はここで…貴様の首をもらう!!』


男はそう言いながら、クナイを振り下ろした。

…しかしキラウェルは、これを待っていた。

鞘でクナイを防ぐと、白夜の峰で男の腹を斬りつけた。


『ぐっ……!!』


あまりの痛さに、男は蹲って腹を抱える。


『いい加減にしてください!貴方がしていることは、誰も望まない復讐です!自己満足なんです!』


キラウェルは男を諭そうとするが、男は止まらない。


『うるさいっ!誰がお前の言葉を信じるか!!人殺しのお前の言葉なんか!!』


『!!!』


男が言い放った言葉に、キラウェルの眉が上がる。


『死ねぇぇぇぇ!!!』


男はそう言いながら、今度は銃を発砲した。

キラウェルは間一髪で弾丸を避けるが、右頬を掠めてしまう。

その証拠に、キラウェルの右頬からは血が滲んだ。


『キラウェルさん!!』


その光景を見ていたユキは、思わず飛び出してしまった。


『ユキさん!来てはダメです!!』


しかしキラウェルは、何故だがユキを制した。


『何故です!?だって怪我が………』


ユキはそう言いかけて、続きを言うをやめた。

何故なら、キラウェルの怪我が治ったからだ。

男も、その光景に驚いているようで、握りしめている銃の銃口が震えている。


『な…何なんだ貴様は!化け物なのか!?』


男は、震えながら言った。


『化け物だと思いたいのなら、思っていても構わないわ…。だけど私は、れっきとした人間よ!!』


キラウェルはそう言いながら、男に向かっていく。


『なっ……?!速すぎる!!』


キラウェルのあまりのスピードに、男はたじろぐ。


だがキラウェルは、そんな男に一切動じることもなく、白夜を振り回す。

彼女が放つ全ての技は、峰で放たれたものだった。


『紅蓮斬り!!』


態勢を崩した男に、キラウェルはガクから習得した技を繰り出した。


『ぐはっ……!!』


男は仰け反り、地面に倒れこんでしまった。

峰で斬り付けられた為、そんなにダメージはないのだが。


男が蹲る様を見ていたキラウェルは、白夜を鞘へと戻し、踵をかえして歩き始めた。

ようやく終わった……かに見えたが。


『爆裂大噴火!!』


男は突然、魔法を発動させた。


『!?』


聞いたことがある技名に、キラウェルは振り返った。


地面から無数のマグマが飛び出してきて、キラウェルに迫ってきていた。


『フレイムウォール!!』


キラウェルは咄嗟に、防御技を放った。


地面から飛び出したマグマは、キラウェルが出した炎の壁に当たり、激しく火花を散らす。

暫くして、炎の壁はマグマを弾き返した。


『その技…火神(かがみ)の魔法の技よね?何故貴方が魔法を持ってるのよ!?』


キラウェルは、男に詰め寄る。


火神の魔法とは、生前ルスタが所持していた、火の魔法を強化した魔法のことだ。

彼がキラウェルとの対決に敗れ、自ら命を絶ったのはだいぶ前のことだ。


キラウェルは、火神の魔法はルスタと共に消えたと思っていた為、男が魔法を発動した事すら信じられないのである。

そして男の口から、衝撃の事実が語られようとしていた。




その頃カンナとラルフは、必死になってキラウェルを捜していた。

宿屋や市場…公園や図書館など、様々な場所を隈なく捜したのだが、キラウェルは見つからなかった。


図書館の所で合流した二人は、お互いに肩を上下させていた。

どうやら二人は、走りながらキラウェルを捜しているようである。


『カンナさん!居ましたか?』


ラルフは、カンナに尋ねた。


『ダメです!公園に居ませんでした!』


カンナも、肩を上下させながら言った。


キラウェルは、一体どこに行ってしまったのだろう?

一人で行ったとするなら、範囲は限られているはず。

またキラウェルも、そんなに遠くに行っていないはずだ。


ふとカンナは、ある場所を思い出した。

リンカの村へ向かう際に、どうしても通らなければならなかった…あの場所である。


『ラルフさん!迷いの森に行ってみましょう!』


『まだそこは捜してなかったな…よし、行くぞ!』


カンナとラルフは、迷いの森を目指して走り出した。


走りながらカンナは、キラウェルがただただ無事でいることを…ずっと心の中で祈っていた。




さて、場所を禁断の地へと戻そう。

一旦戦闘を止めたキラウェルは、何故かルスタが持っていた火神の魔法を扱う、黒装束の男と会話をしていた。


『ねぇこたえて!貴方は一体何者なの!?』


男を睨みつけながら、キラウェルは言った。


男は暫くの間無言だったが、黒装束のフードをとり、顔を(さら)した。

キラウェルは男の顔を見て驚いた。

何故なら…ルスタそのものだったからだ。


『え…?まさか……ルスタとは…』


驚きのあまり、言葉が続かないキラウェル。


『双子の兄弟だ。俺が兄で、ルスタは弟だ』


男の言葉に、キラウェルは驚きを隠せない。

近くにいたユキも、驚いた表情をしている。


『貴様は…たった一人しか居ない、我が弟を殺したんだ…!俺は…俺は…貴様を許さん!!』


男はそう言いながら、今度は剣を鞘から引き抜いた。


『我が名はルーク!俺の名前を、嫌という程覚えさせてやる!覚悟しやがれ!!』


ルークはそう言いながら、再びキラウェルに襲い掛かってきた。


キラウェルは白夜を鞘から素早く引き抜き、ルークの剣を受け止めた。

刃が擦れ合う音が、森に響き渡る。


『ルークさん、聞いてください!!私はルスタと戦いましたが…殺してなんかいません!!』


キラウェルはそう言いながら、ルークの攻撃を全て受け止める。


『嘘つけ!貴様が弟をその白夜で斬り裂いたんだろ!わかっているんだ!!』


怒りを露わにするルーク。


『切り裂くわけないじゃないですか!ルスタは…ルスタは私と戦った後、自ら心臓を刺して自害したんです!!』


キラウェルのこの言葉に驚いたルークは、攻撃を止めた。

止めた剣は、キラウェルの喉ギリギリで止まっていた。


『ルスタが…自害した、だと?』


信じられないのか、声が震えるルーク。


『信じられないかもしれませんが…本当の事なんです!現に私は…ルスタから、一生消せない傷を負わされました』


キラウェルはそう言うと、フードをとって顔を晒した。

あの火傷の傷痕が…露わになる。


『!?』


ルークは、無言で驚いた。


彼はおそらく、自分の弟が…ここまでやっているとまで思わなかったようだ。

くっきりとある火傷の傷痕に、ルークは顔を逸らした。


『傷は消えませんが、私は彼を恨んでいません。ルスタは、自分の使命を果たせたと感じ、自害したんだと思います』


キラウェルはそう言いながら、フードを深く被った。


真実を聞かされたルークは、ガックリと膝を落とした。

心なしか肩が震えているようにも見える。


『何故だ…何故なんだルスタ!死ぬことはなかっただろう!?』


ルークはそう叫びながら、地面を殴り続ける。


『落ち着くのじゃ…お若い者よ』


その時、キラウェルの後ろから老人の声が聞こえてきた。

セルネア法皇国の、法皇であった。


『法皇様!』


法皇の登場に、少しだけ驚くキラウェル。


『キラウェル殿…怪我はありませんかね?』


『は、はい。大丈夫です』


キラウェルのこの言葉を聞いた法皇は、優しく微笑んだ。


『わしは魔法の力で全てを見ていた。お主の弟は、自ら死を選んだのじゃ。キラウェル殿はそれを止めようとしたのじゃが…間に合わなかった』


法皇はそう言いながら、ルークに手を差し伸べる。


『お若い者よ、お主には弟の分まで生きるという

使命が残されておる。その使命を(ないがし)ろにしてはならんぞ?』


法皇にそう言われ、ルークは大声で泣き叫んだ。

彼が落ち着くまで…キラウェルはそのままにした。




禁断の地から、法皇とユキと共に出てきたキラウェル。

泣き疲れて途方に暮れる、ルークも一緒に出てきた。


キラウェルの姿を真っ先に見つけたカンナが、彼女のもとへ駆け寄っていった。


『キラウェルさん!!』


『カ…カンナさん!?』


キラウェルはカンナが抱きついてきたため、少しだけ驚いている。


『心配してたんですよ!?いきなり居なくなるんですから!』


そう言うカンナの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。


そういえば…どこに行くか、カンナさんに伝えてなかったな。

キラウェルはふと、心の中で思った。


『…ごめんなさい』


キラウェルは、素直に謝った。


『本当にもう…!でも、無事で良かった…!』


カンナはそう言うと、キラウェルの右手を両手で包み込んだ。


『ところでお若い者よ、キラウェル殿に脅迫文を送ったりしたかね?』


キラウェルとカンナから少し離れた所では、法皇とルークが会話している。


『脅迫文?何のことですか?』


ルークは小首を傾げている。

この様子から、本当に知らないようだ。


『いや…わからないならよろしい。忘れてくれ』


『…?』



ようやく一同が、落ち着きを取り戻した…その時だった。


『止まれ…キラウェル・J・シャンクスよ…』



森の奥から、男性の低い声が聞こえてきた。

キラウェルは、この声に聞き覚えがあった…。

何故なら、たくさん聞いてきたからだ。


『グ…グラディス!!何故ここに!?』


グラディスの突然の登場に、キラウェルは驚きを隠せない。


『早まるな…俺は忠告しに来たんだ』


グラディスはそう言うと、キラウェルに一通の手紙を差し出した。


『お前の故郷に…帝国が建国された。その帝国も…フェニックスの魔法を狙っている。俺の独自の調査でわかったことだが、信じるか信じないかは…お前自身だ』


グラディスはそう言うと、キラウェルが手紙を受け取ったのを確認したら、踵を返して立ち去ろうとする。


『ま…待って!私を襲いに来たんじゃ無いの!?』


キラウェルの問いに、グラディスは振り返った。


『ブラウン家の当主は、ファラゼロ様だ。ファルド様ではない…。その手紙はファラゼロ様からだ、後で読むといい』


グラディスはそれだけ言うと、立ち去ってしまった。


自分の故郷に…帝国が建国。

しかもその国も、フェニックスの魔法を狙っている。

ブラウン家とはまた違った一族なのだろうか?

深まる謎に、キラウェルは頭が混乱してきた。


しかし、グラディスから渡された、ファラゼロの手紙を読めば何かわかるかもしれない…キラウェルは、そう思うようになった。


『カンナさん…宿に戻りましょう、手紙を読まないといけません!』


『わかりました。急いで戻りましょう…もう陽が暮れてきていますから』


カンナにそう言われ、キラウェルは空を見上げる。

確かに陽が暮れてきており、一番星が瞬き出している。


帰り道を歩いている途中で、法皇がルークを送って行くからと、三叉路で別れた。

キラウェルたちは、来た道を戻っていった。


そしてキラウェルは…衝撃の事実を、これから知ることになっていくのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ