番外編2:最強の悪魔、資本主義に魂を売って【鬼の営業本部長】へ大出世してしまう
「――おい貴様ら! ぬるいぞ! 今月の『幸福の輝魔石・ゴールドエディション』の販売ノルマがまだ3割も残っているではないか! それでよく魔王軍の幹部を名乗れるな!?」
タカシ・ホールディングス本社(元・魔王城)の大作戦会議室。
かつて世界を恐怖させた四天王の4人を前に、烈火のごとく怒鳴り散らしている男がいた。
仕立ての良い高級黒スーツを完璧に着こなし、片手には『今月の売上推移グラフ』、もう片手にはレーザーポインター(魔導具)を握りしめた男。
……そう、我が社が誇る最恐の営業本部長、元・魔王様その人である。
「バルザス! お前は武闘派のくせに、今月は人間の国王へのトップ営業がたったの3件だと!? 筋肉は飾りか! 明日から1日100件の飛び込み営業をしてこい!」
「ハ、ハイッ! 本部長、申し訳ありませんッ!」
かつて人間を震え上がらせた最強の四天王バルザスが、冷や汗を流しながら直立不動で頭を下げている。
会議室の特等席でふかふかの椅子に座り、ぬるいお茶を飲んでいた俺(CEO・タカシ)は、そのあまりのハマりっぷりに感心していた。
「いやあ、素晴らしいよ魔王本部長。前世の我が社の伝説の鬼マネージャーそっくりだ」
「タカシCEO! お褒めいただき光栄です!」
魔王本部長はビシッと完璧な角度で俺に最敬礼を決めた。その瞳には、かつて世界を滅ぼそうとした邪悪な光ではなく、ブラック企業に魂を売り渡した『プロの社畜』のギラギラとした輝きが宿っている。
彼は地下倉庫での砂利の袋詰め労働の過程で、俺が何気なく教えた『営業の極意』と『目標管理制度(MBO)』に目覚めてしまったのだ。悪魔の圧倒的なカリスマ性とトップダウンの統率力を、そのまま「ブラック企業の営業組織」に応用した結果、彼は最底辺からわずか数ヶ月で営業本部長へと上り詰めたのである。
「CEO。来月から、新規開拓エリアとして『隣国の神聖帝国』への経済侵略ツアー(強制出張)を予定しております。私が直々に四天王を率いて、帝国の全貴族にマルチの会員登録を迫る所存です」
「おお、それは頼もしい。しかし、神聖帝国には強力な聖騎士団がいるだろう? 抵抗されたらどうする?」
俺の問いに、魔王本部長はニヤリと、かつて世界を滅ぼそうとした時以上の凶悪な笑みを浮かべた。
「ご安心ください。抵抗する聖騎士どもには、我が最強の暗黒魔法『デス・ノルマ』を発動し、精神が崩壊するまで毎日2時間の『詰めセミナー』を行います。力づくで戦うよりも、経済的に自己破産させて我が社の会員にする方が、圧倒的に効率よく支配できますからね! ククク……ハハハハハ!」
「……うん、お前の方がよっぽど悪魔だな」
かつては「人の心がない!」と泣いていた魔王が、今や資本主義の闇を自ら喜んで撒き散らすモンスターへと進化していた。
有能すぎる右腕の誕生に、俺の社長業はますますイージーモードである。
「よし、魔王本部長。その帝国買収計画、許可する。成功したら来期からの役員報酬は金貨5万枚、さらに我が社の『インフィニティ・ゴッド・株主』の地位を約束しよう」
「ハッ! ありがとうございますタカシCEO! 全身全霊、粉骨砕身の精神で、世界をタカシ・ホールディングスのピラミッドで塗り替えてみせます!」
魔王本部長は再び四天王に向き直ると、「おい貴様ら! CEOのありがたいお言葉を聞いたな! 今夜は全員徹夜でロープレ(営業の練習)だぁぁ!」と怒号を響かせた。
恋愛要素など1ミリも入り込む余地のない、有能すぎる元魔王の社畜覚醒ギャグ。世界の平和(と完全なる経済支配)は、この男のブラックな熱量によって、どこまでも加速していくのだった。
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それではまた、別の作品でお会いしましょう!




