プロローグ:RICOのイブニングカフェ
《ジングル♪ ~カフェ風の軽快なBGM~》
RICO
「こんばんは。『RICOのイブニングカフェ』の時間です。
今夜は――全国の女性が気になっている、あの話題から!」
(SE:ティンベルの音)
「“バレンタイン特集”ですっ!」
(拍手の効果音)
「さて皆さん、あの『The Queen’s Choice』でも話題をさらった、
――“全女性の敵”とも言われている、GAIALINQのCOO、一ノ瀬直也さん。
バレンタインデーでもさぞかしチョコレートを貰うのだろうなぁと、
世の女性たちは気が気じゃないようです」
(ざわつくスタジオ)
※※※
亜紀
「もう、“全女性の敵”とか言うのやめて! ……さすがにそれは言い過ぎよ」
玲奈
「直也が女誑しという誤解が、また拡散してしまいそうですね」
麻里
「しかもこの言い方だと逆に、“そういう男性に惹かれがちな女”を
かえって引き寄せちゃうタイプの煽り文句ね」
※※※
RICO
「そして、ディレクターさんにも確認してみたんですが……。
実際問題、リスナーさんからもすごくたくさんお便りをいただいているみたいなんです」
(SE:紙の束をめくる音)
「たとえばこちら。
“GAIALINQの一ノ瀬直也さんにチョコを贈りたいのですが、どこに送ればいいですか?”
――はい、こういう質問が番組にも山ほど届いております!」
(笑いとざわめき)
「しかも! 五井物産の広報部にも問い合わせが殺到していて大変らしいんですよ。
いまちょうど、バレンタイン商戦の取材に来ているテレビ局が、
わざわざ五井物産大手町本社前でその様子を中継しているそうなんですが……」
(BGMが少し下がり、ニュースリポート風のSE)
レポーター(音声のみ)
「――はい、こちら五井物産前です。
“五井物産のGAIALINQ広報の方も対応に追われており、
『現在、特定の個人宛てのプレゼントは受け取っておりません』とのことです。”」
RICO
「……だそうです。
さぁ、気になるのは――一ノ瀬直也さん本人のコメントです!」
(ドラムロール)
「ではここで、GAIALINQ広報経由で届いた直也さんの正式コメントを発表します!」
(ピンスポットSE)
“バレンタインチョコレートを頂くよりも、
皆さん、ぜひフードバンクや全国の子ども食堂への寄付をお願いしたいと思います。”
(沈黙)
RICO
「…………えっ!? 」
(間)
RICO
「――これで終わるの? バレンタイン、廃止!?」
※※※
亜紀
「ちょ、ちょっと待って、それ、誰もハッピーにならないやつ!」
玲奈
「……ああ、直也らしいといえば直也らしいですけど」
麻里
「“正しさの暴力”ね。
バレンタインにSDGsを突きつけられた女の気持ち、考えたことあるのかしら」
※※※
RICO
「えー……実はですね。直也さんの幼馴染の方にも先程聞いてみましたが……
直也さんは、小学生の頃から、クラスの女子はもちろん、別のクラスの女子、更には別の学年の女子、果には他の小学校の女子からまでチョコレートを貰ってしまい、それが原因でクラス内外が険悪な雰囲気になるのを嫌がって、小学5年生くらいから、チョコレートの受け取りを拒否するようになってしまっているという衝撃的な情報を入手しました」
《ジングル♪ ~不穏に転調するカフェBGM~》
「それから、中高とバレンタインチョコレートの受け取りを拒否し、大学生の時にも、ガールフレンドからの本命チョコレート以外は拒否していたらしいです」
※※※
亜紀
「これ、どう考えても莉子自身がもともと知っている情報じゃないの?」
玲奈
「しかし、小学生時代からモテる男だったとか、どんだけ……」
麻里
「私はバレンタイン前に別れてしまったから、チョコレートを渡す機会にすら恵まれなかったの(涙)」
※※※
RICO
「でも、直也さんの、その幼馴染の方は、毎年チョコレートをプレゼントして、ふつうに受け取って貰ってきたという事ですから、そういう方以外は、もう諦めが肝心かも知れませんね。ふふふっ」
※※※
亜紀、玲奈、麻里
「はぁ!?(怒)」
亜紀
「何それ? ケンカ売っているのかしら!! 要するに有象無象からは受け取らないってだけでしょ。だったら私からだって受け取ってくれるわよ!」
玲奈
「今のは完全にカチンときましたね。いい根性していますね、莉子は!」
麻里
「……せっかくいい飲み友達になったと思ったのに、そういう態度でくるのね?
莉子……いいわ。もう受けて立ちましょう。“元カノ”は伊達じゃないのよ!」
※※※
RICO
「さて、それではまずここで一曲お届けします。
この季節に必ず耳にする事が増える一曲――『バレンタイン・キッス』」
《♪楽曲イントロ~フェードアウト》
――ここから、“恋と正義とチョコレート”の狂想曲が始まる。
※本編はカクヨムにも掲載しています。




