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愛みのリリウム -神に愛された花たち-  作者: 虎依カケル
8章

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64話 変わったこと


 次の日から、リリアンの周りにいる者が変わった。常に側にいた御使いのディアドラだけは変わらなかったが、ほかの者は今までいた者たちと違い、リリアンを丁重に扱ってくれる。そうするようにアルバートから言われているのだろう。


「リリアン様。何かしたいことがございましたら、お話ください」


 今まではリリアンに知識を入れさせようと、スケジュールを勝手に組まれていた。だが、行動の制限がなくなった。アルバートが何を考えてそのようにしたのかはわからない。だが、行動できるのなら、するだけだ。


「象徴の部屋に関しては、本日の夕方には空けさせることができるでしょう」


 ディアドラは部屋を空ける指示をしてくれているらしく、そう教えてくれた。


「象徴の部屋ですが、私がそのまま使います。下手に触らないでください」


 その指示を想定していなかったのか、ディアドラが眉をひそめる。


「どうしてでしょう?」

「前任の者がどのような考えのもとに動いていたのか、手掛かりがあれば、彼女の信者を味方に付けることができるかもしれません」


 その言葉に、彼女は不可解そうな表情を見せた。


「なぜ、あの者らを味方につけたいと思えるのですか? あなたを消そうとしたのですよ?」

「どういうことでしょう」

「先日の襲撃事件は、平民の御使いによって計画されておりました。実行犯を雇ったのも彼らだと、実行犯本人がそう言っております。近々、計画に関わった者を処分することになっています。神に愛されている象徴を害そうとしたのですから、当然でしょう」


 すぐに、そういうことになったのだと思った。実際は別の者が指示をした。だが、メアリーを慕っていた御使いたちを邪魔だと思った貴族の御使いたちは、彼らを排除するために罪をかぶせたのだろう。だが、それは推論でしかない。


 メアリーが象徴として戻ってきたとき、彼女を支持する者がいなくなっていたら、彼女の居場所がなくなってしまう。


 動揺を見せないよう表情を変えず、ディアドラに向かって言う。


「そうなのですね。ですが、少し時間をいただけますか?」

「なぜです?」


 できるだけ堂々と見えるように胸を張る。


「私の知らないところで、事が動いているのはおかしいでしょう? この件は私も無関係ではありません。勝手に進めないようにしてください」


 ディアドラは何か言いたそうに目を細める。だが、ゆるりと頭を下げた。


「かしこまりました。あなたの思うままに」


 その言葉にうなずくと、立ち上がってディアドラに言った。


「少し、外を歩いてみたいです。前回は外に出ることが許されませんでしたから」

「……お供いたしましょう」


 ディアドラは提案を否定せず、後ろについて歩いた。


 教会内を自分の意志で歩いたのは初めてだった。前回はやることが多く、そちらの目を向けることしかできなかった。おそらくそうなるように仕向けられていたのだろう。

 視線を巡らせると、あまり好意的ではない視線をいくつも感じる。お飾りのはずだった象徴が突然我が物顔で教会内を歩いているのだから、当然だろう。一応、通り過ぎれば頭を下げてはくれるが、あまり良い顔ではない。


「メアリー様は、教会ではどのように過ごされていたのですか?」


 ともに行動することになったディアドラは表情を変えないまま答えてくれる。


「あの者はあまりここらを歩きませんでした。主に平民の御使いがいる場所や神のもとの礼拝堂にいました……貴族のくせに、平民と仲良くしていたのです」


 その内容から、象徴派は平民からできているのだと推測ができた。そして、アルバートの側にいるのは、貴族が多いのだろう。


 歩いていると、向かいからアルバートが現れた。彼はリリアンを見つけると、嬉しそうに微笑んだ。


「リリアン様。見つけましたよ」

「アルバート様。何かお約束をしていましたでしょうか」

「いえ、私があなたに会いたいと思ったのですよ」


 アルバートはそう言って目を細めた。彼の目はこちらを向いている。だが、まるでリリアンではない誰かを見ているようだった。


「象徴の儀式を行なう際に必要なものをお聞きしたかったのです」

「そうですね。必要かと思って、紙に書き起こしておきました。こちらをお願いできますか?」


 手紙を差し出すと、彼は嬉しそうに受け取った。


「ロザリー様が行なっていた儀式がよみがえるのですね。今から楽しみで仕方がありません」

「儀式には扱う石が重要となります。今は隣国でしか手に入らないものですから、お早めに準備をお願いいたします」

「石については既に手配を済ませております。過去の文献に石についての記載がありましたので。数日後にはこちらに届くでしょう」


 隣国でしか扱っていない石のため、そんなに簡単に手に入るとは思っていなかった。

 驚いているのに気づくと、アルバートは笑みを浮かべる。


「教会は隣国とも交流があります。その繋がりを利用しただけですよ」

「隣国では違う宗教が栄えていると聞いております。どうして教会は繋がりがあるのですか?」

「隣国にも我が国の宗教の信仰者がおりますから」


 アルバートはさも当たり前のように教えてくれる。この国には他宗教の人間がいないため、とても不思議に感じられた。


「石が手に入り次第、儀式を始めましょう」


 彼はにこりと笑うとその場を去っていった。


 アルバートと分かれてから、象徴の部屋……元メアリーの部屋を訪れた。指示していたからか、メアリーのものは片付けられずに置いたままになっている。彼女の部屋は者が多くなく、それでいて整った部屋だった。本棚にはいくつかの本が収まっており、机にも寝台にも無駄なものがない。女の子らしい部屋かと思っていたが、きっちりとした雰囲気を感じさせる部屋だった。


「彼女の行方がわからなくなってから一度、この部屋を調べております。多少の配置の変更や物がなくなっていることをご承知ください」


 それは予想していたことだ。この部屋自体から何か得ることは難しいだろう。


「ここに、象徴にしか入れない部屋があると聞いたのですが」


 ディアドラにそう尋ねると、彼女は不思議そうに首をかしげた。


「ああ。もしかしたら、あちらの部屋のことでしょうか。鍵がなくて、入ることができませんでした」


 ディアドラが手を向けたのは、物置のようにひっそりとした扉だった。


「メアリー様が鍵を隠して、誰も入れないようにしていたのだと考えていたのですが、象徴にしか入れないのですね。御使いたちが壊して入ろうともしましたが、それも適いませんでした」

「あの部屋は象徴の証を手に入れることで入ることができるようです。私が儀式で証を手に入れられれば、扉を開けることができるでしょう」


 ディアドラは考えるように眉を寄せたあと、こちらを向いた。


「リリアン様。もし開けることができましたら、まず私たちに入らせていただけないでしょうか。もし、あなたに見せられないものがあったら、いけないので」


 彼女が何のことを言っているのかわからなかった。だが、とりあえずうなずいた。


「わかりました。入ることができたら、あなたを一番に入れましょう」


 その言葉を聞いて、ディアドラは承知したというように頭を下げた。



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