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誰かの温もりを探して 〜現代文学・短編集〜  作者: 忍野木さりや


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25/33

庭のホタル

 

 紫陽花の葉でホタルの光が一つ。

 水辺からは遠い住宅地。夜の庭で灯っては消える淡い黄色。

 二階の窓から顔を出す葛谷聖也は、好奇心に駆られて部屋を出た。暗い一階の廊下を忍び足で抜けて、玄関の扉をソッと押す。

 久しぶりの外。ひんやりと頬を撫でる冷気。大きく深呼吸をした聖也はホタルを探して庭を彷徨いた。街灯の届かない庭の花。夕方に振った雨で濡れた葉を掻き分ける聖也。紫陽花の青い花を裏返した彼は一匹の黄金虫を見つける。だが、ホタルは見つけられなかった。

 

 暑い日差しを遮るカーテン。そっと一階に下りる聖也。母は買い物に出かけているようで、家の中はわずかに埃が浮いている。聖也はテーブルの上の葡萄を三粒ほど掴むと階段を駆け上がった。部屋に飛び込み、窓際の虫カゴの蓋を開ける。皮を破いた葡萄を置くと、暫くプラスチックのケースを眺める聖也。箱の中に黄金虫が一匹。だが、何時迄も、木の枝に蹲る黄金虫は葡萄に興味を示さなかった。


 夜になると庭に出る聖也。雨の乾いた土。外気はひんやりと心地良い。聖也はホタルを探して紫陽花の周囲を歩き回った。広い葉の裏。天辺の花びら。壁と地面の境界まで探した聖也は、もうホタルは何処かに飛んでいったのだろうと悟る。

 気落ちして玄関に戻る聖也。忍び足で二階に戻った彼は、懐中電灯で虫カゴを照らした。箱の中で萎びた葡萄。弱々しく触覚を動かす黄金虫。

 このままでは黄金虫が死んでしまう。

 聖也は焦った。だが、どうすれば良いのか彼には分からない。

 朝までジッと虫カゴの中を眺めていた聖也。窓の外から声変わりをした子供たちの笑い声が聞こえてきた。聖也はソッとカーテンの端を掴む。仲の良かったクラスメイトの男子。鞄を肩に背負った彼らは元気よく家の前を通り過ぎていく。

 アイツらなら、どうすれば良いか知ってるかもしれない。

 慌てて虫カゴを掴む聖也。急いで一階に駆け下りた彼は、驚く母を尻目に外に飛び出した。

 


 

 

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