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第2章:最凶らしい?ー005ー

「だから、ごめんって言っているじゃなーい」


 彩香(あやか)は謝っているが、いちおうといった感じだ。ふてぶてしさが滲んでいる感は否めない。

 店内の椅子へ腰掛けた雪南(せつな)のダメージは深い。でも昨日ほどでないことは、口だけまとも以上に廻るところから窺えた。


「いや、ワザとだ。ワザとに違いない」

「ひっどいわねー、たまたまよ、たまたま。アンタだって、あんなところにサロゲート、飛ばさないでよ」


 彩香が貫いた黒き怪物の刀先は雪南の代理人体にまで届いていた。そこへ気を込めて粉砕の能力を発動したから、たまらない。怪物と共に塵へ帰した代理人体の衝撃を喰らい、雪南はその場で崩れ落ちた。


 もし円眞(えんま)が飛んでこなければ、餌食になっていただろう。


 ホーラブルと呼ばれる黒き怪物は基本的には屍肉を漁る。ただ血の匂いには敏感で、尚且つ大量に食した直後は興奮状態へなるのか。生者にまで襲いかかってくるようになる。

 大量発生と異形度合いが大きかった今回の黒き怪物たち。雪南が店先に置いておけないと近くのビル影に放り隠した屍体が原因だった。


「自業自得よ」

「ふざけるな、新参者にそれはないだろ」


 彩香の言い捨てに、怒り露わな雪南である。

 慌てて間へ入った円眞だ。

 まず黒き怪物について説明しきれていなかったことを詫びる。元はと言えば仕事中に眠りこけた自分のせいとし、無防備な間を雪南が対処してくれたから助かった事を伝えた。


「まぁ、エンちゃんを助けたみたいなら」


 生真面目な円眞に、彩香も矛を収めるしかない。含みはあるものの、誤爆させた点を素直に謝罪した。

 ただし相手は雪南だ。

「そうだ、そうだ、気をつけろ」

 そうきたから彩香は目を剥く。アンタね〜、と柄へ手を置いた。


 円眞は再び割って入るほかなかった。訊きたいこともあるのだが、口にする暇なんか有りやしない。

 円眞が助けに入る直前に、雪南へ覆い被さっていく黒き怪物の何匹かが消滅していったような気がした。思い当たる節について質したかったが、それより先に場の空気を和らげなければまずそうな雪南と彩香である。

 円眞は仕方なく、雪南の制服の件について切り出すことにした。


「あ、彩香さん。従業員のユニフォームくらい支給してあげたいと思うんだけど、いいかな?」


 向けられた当人は、少し間を開けた後に渋々答えた。


「まぁ、私のミスもあることだし、今回は了解としましょ。ただ支給するにしても上限は決めてね。その血、もう落ちなさそうだから着ないでしょ」

「だいじょうぶだ、血ぐらい。まだ着れる」


 意外にも雪南が執着を見せてくる。

 円眞がなだめるように提案した。


「そ、そうは、いかないよ。それに一着だけというわけにもいかないし」

「また買ってくれるというのか」


 円眞がうなずいた。

 ホントか! と確認してくる雪南は笑顔を浮かべた。

 初めて見せた嬉しそうな表情に、円眞はつい見惚れてしまった。初めて碧き瞳を目にした際と同様な状態へ陥ってしまう。


 だから周囲が複雑な顔つきをしたのを、円眞は気づけなかった。


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