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39 お母様がおかしいです!

先日は申し訳ありませんでした!

今日からまた頑張ります!

「セフィア、どう?」


「ジェイナ様はどこかに行っておられるようですね」


「よし、なら今のうちよ!」


ダンジョンから戻ってきたミカ達は、窓から部屋に戻っていた。

行く時も窓から出てきたので、最早ここが第2の入口になりつつある。


と、そこでミカは不思議に思う。


「……ね、セフィア。今何時?」


「今は…午後の3時、ですね」


おかしい、とミカは思う。

この時間帯ならば、ジェイナは洗濯物を干し終わり、本を読んでいる時間帯のはず。


たまには違うことをしているかもしれないと思ったが、なんとなく、この時だけはおかしいとしか思わなかった。


「私たちがダンジョンに行ってから何日たったかわかる?」


「まだ1日もたっていないのでは?」


「……それはどうかしらね」


ミカは、ダンジョン内と、外との時間の流れが違う可能性を考えていた。


(ダンジョン内では食事もトイレも必要ないって言うのが意味わからないのよね)


しばらく考えて、ミカは頭を振る。


(考えすぎね。ちょっと寝よう…)


ミカの考えていることを読み取ったセフィアは、ミカの服を脱がして寝間着にする。


されるがままのミカは、着替えが終わるとそのままベッドに倒れ込む。


まだ、昼の3時。


(時間がたっていない…気がする。私の体はもう夜の感覚よ)


いくらダンジョン内では空腹にならないと言っても、時間の概念はある。

だが、それは入っている人だけで、ダンジョンには時間の概念が無かったら。


そうなると、ダンジョン内と外とは、時間の

繋がりは無いことになる。

もしそうなれば、ダンジョンで生まれた魔物が外に出られないのは何となくわかるのだが。


(それだと、どうして外の私たちが入れるのかしら)


矛盾点はそこだ。

何かしらの法則があるのだろうが、もしかしたら入れない人間もいるのかもしれない。


今度、適当に動物でも拾ってきてダンジョンの中に入ってみようかと、ミカは考える。


そんなことを考えていると、扉の奥から、ドアが開く音がする。


「帰ってきましたね」


「そうみたいね」


ミカは寝返りを1つ、扉に背を向ける。


結局、何も解決はしていない。

解決に向かって前進出来ているのかもしれないが、その実感はいまいち無い。


ミカは、『コンバート』させていた鍵を取り出す。

鍵の持ち手の部分に書かれている『30』。

これが30番目のダンジョンに繋がるのなら、急がなくてはならないが。


(肝心なのは、その場所…か)


ミカは、セフィアを見て言う。


「セフィア、30番目のダンジョンってどこかわかる?」


「申し訳ありません、ダンジョン自体はどこにあるのか感覚でわかりますが、何番目かは…」


「そう…」


しかし、こうなると当てずっぽうでダンジョンを探すよりは、魔法を作った方が早いような気もしてくるミカだった。


そこで、セフィアが皿に乗せたクッキーを持ってくる。


「お嬢様、こちらをどうぞ」


「あら、ありがとう」


(考えすぎも良くない、わね。何もしてないと考えちゃうから、息抜きも必要よね)


ミカは、セフィアが差し出した皿を受け取り、体を起こす。

ベッドの上で食べるのは流石にマナーが悪すぎる。


クッキーをひとかじりし、ミカは窓の外を見る。


1年を通して、日没の時間があまり変わらない地域。

ミカは、四季が無いのを少し残念に思っていたが、そんなことはどうでもよくなりそうだった。


セフィアが差し出したミルクを受け取り、ミカは一口飲む。


ふぅ、とため息をこぼすミカを見て、セフィアは突然不安そうな顔になる。


「……? どうしたの、セフィア?」


「お嬢様のお気に召すものを出せなくて申し訳ありません…すぐに作り直してきます!」


ミカが尋ねると、セフィアはそう告げ、部屋から出ていってしまった。


ミカがどういう意味かと聞く暇すら無かった。


「……?」


とはいえ、考え出すとどうしても途中から先程の続きになってしまう。

1人でいると尚更に。


とりあえず、とミカは今後の目標を決める。


(まずは、『30』のダンジョンを探すこと。それと並行して、解除出来そうな魔法を探す、または作る。

……結構大変そうだけど、やるしかないわよ)


それに加えて、ミカにはまだ学院生活が残っている。


忙しい日々になりそうだ、とミカが思っていると、セフィアが戻ってきた。


「お嬢様、申し訳ありませんでした…こちらでどうでしょうか?」


「? ありがとう」


ミカは、わけも分からず2杯目のミルクを受け取る。


コップを傾け、口をつける。

すると、セフィアが不安そうに口を開いた。


「ど、どうでしょうか?」


ミカは、セフィアの不安そうな表情の意味がわからないが、素直に感想を言う。


「普通に美味しいわよ?」


「そ、そうですか……ありがとうございます」


「?」


セフィアの行動の理由が分からず、ミカは頭を捻るばかりだが、セフィアは単純に不安になっていたのだ。


ミルクを飲んだ時に漏らしたため息。

本来は、ミカの一息ついたため息なのだが、セフィアには落胆のため息に見えてしまった。


メイドであるセフィアにとって、主人を落胆させるなんて言うことはこれ以上ない失態。

急いで作り直したのだが、その必要は本当は無かったのである。


セフィアが安心し、ミカはますますわからないといった顔をする中、ジェイナが部屋に入ってきた。


「……ミカ、少しいい?」


「お母様。セフィア、これお願い」


「はい、お嬢様」


ミカは、持っていたクッキーの皿とミルクが入ったコップをセフィアに預け、部屋を出ていくジェイナについて行く。


皿とコップを受け取ったセフィアは、2人に気づかれないように、ジェイナを鋭く見て、見送る。


2人が部屋から出ると、ミカの机の上に持っていたものを置き、窓から外に出る。


盗み聞きする気である。













「………」


「………」


ミカがジェイナに連れられ来たのは、ジェイナの部屋。

本を借りに何度も入った部屋だ。


ジェイナが部屋の端、自分の机の前まで歩き、ミカがその手前、部屋の中心部辺りでに来たところで振り向く。


その顔は、相変わらず笑顔なのだが、その笑顔はどこか…。


(なんか……怖い……?)


ミカは、何となく、怖いと感じた。


今でのジェイナが、暖かく包んでくれるような笑顔なら、今向けられている笑顔は。


(なんだろう……拒絶?)


ジェイナは、ミカに対してこう言った。


「ミカ…学院は楽しいかしら?」


「……う、うん。楽しい、よ?」


感じている雰囲気と、ジェイナの口から発せられた言葉のギャップが大きすぎて、一瞬ミカは何を言われたのか理解が遅れた。


しかし、ジェイナには特に気にした様子は無く、話を続ける。


「そう。それは良かったわね」


「……」


ただ、そのギャップだけが、違和感を醸し出している。

ミカが警戒心を高める中、ジェイナは本棚に向かって歩き始める。


「1つ、忠告しておくわ」


「忠告……?」


今まで、ジェイナの口から忠告というような攻撃的な言葉は出てこなかった。


(突き放された感じ……初めてだよ、こんなの……)


ジェイナは適当に取った本をパラパラとめくり、閉じる。


その行為になんの意味があるのか。

ミカはジェイナの一挙手一投足に注意を向けていた。


そしてジェイナは、口を開く。


「これ以上、この世界の魔法のルールを崩すのはやめなさい」


「………」


ミカは、ジェイナが発した言葉が予想外のもので、固まってしまう。


(『この世界の魔法のルール』……?)


ルールとは一体、なんだろうか。


セフィアに1日でメイドの極意を叩き込んだのだって、魔法を使っているはず。

時間の概念を破壊しそうな魔法を使っているであろうジェイナから言われたことに対して、どこか違和感を覚えたミカだった。













ジェイナの部屋から出て、自分の部屋へと戻ってきたミカは、またもや悩んでいた。


「お嬢様、お帰りなさいませ」


そう言うセフィアの存在にも気が付かないほど、ミカは考え込んでいたのだ。


そのまま、ベッドの縁に座る。


(『この世界の魔法のルール』って……私が魔法を新しく作り続けたことが関係しているのよね。

お母様がおかしくなった…というか、変になったのは、聖武祭の後…『イクス・マグナ・レイ』が原因?)


ミカのイメージでは、どんな物でも破壊、貫通できる_____そんなイメージだ。


それが、まずかったのだろうか。


「お嬢様…?」


「え? あ、ごめんなさい、どうしたの?」


「い、いえ。何度呼びかけても反応がございませんでしたから…」


「あっ……いえ、大丈夫よ」


ミカは慌てて立ち上がり、自身が大丈夫だということを身振りも併せて伝える。


それを見たセフィアは安心したような顔になり、ミカが先程まで飲んでいたコップを持つ。


「温かいものをお持ちしますね」


「ええ…。ありがとう」


ミカは、セフィアの背中を見送り、一旦考えを放棄することに。


ミカは確かに新しく魔法を幾つか作った。

しかし、どれも他人には扱えないような代物であり、使えるように手解きをしたことも無い。


「………どういう、意味なんだろう」

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