32 久しぶりです!
今回は少し短いかもしれません。
明日は予定通り3本上げます!
「そんなことがあったんですのね…左腕は、大丈夫ですの?」
「平気です。少し動かないだけなので」
夕食の少し前。
ミカはジェシカに、これまでの経緯を説明していた。
と言っても、魔法を新たに作ったことは言っていない。
「それにしても、悪魔を跡形もなく消滅させる魔法なんて、私も聞いたことがありませんわね」
「あはは……」
結局、ミカでも知らないという話にすることにしたようだった。
ミカ自身も、無我夢中で使ったことは実際のことだし、嘘はついていない。
嘘の話をする時は、真実を織りまぜるのがコツだ。
「とにかく……そろそろ夕食の時間ですわね。ミカさんは、ここで待っていてくださいな」
「いえ、私も行きます。セフィア、お願い」
「はい、お嬢様」
ミカは、セフィアの手を借りながら歩き始める。
それを見たジェシカが、慌てながらドアを開ける。
「ミカさん、そんなに筋力が落ちていますの?」
「ええ…まぁ」
そして、夕食を食べに、寮の食堂へと向かったミカだったが、すぐに後悔することになる。
「ミカ様!」
「ミカ様!」
「おケガは大丈夫なのですか!?」
「私たちを守って下さりありがとうございます!」
「そして、すみませんでした!」
「あの時、逃げるような真似をして…!」
「え? え? あ、いや、気にしないで…!」
色んな生徒…学年も違ういろんな生徒に囲まれ、ミカは戸惑いながら気にしないでと言う。
(というか、先輩にも『ミカ様』って呼ばれるのなんか違和感〜!)
そして、セフィアが人払いをし、ミカを座らせる。
ミカは、改めてセフィアに助けられたことを実感し、セフィアが隣にいることに安心する。
「それでは、私はお嬢様の分をお持ち致します」
「うん、ありがとう」
そして、セフィアはジェシカと一緒に列に並ぶ。
セフィアがミカのメイドだと知っている他の生徒は、セフィアが並んだ瞬間、列を開け、セフィアを負けに押し出す。
そんな生徒に少し戸惑いを感じながら、セフィアはミカのためと割り切り、さっさとご飯を取って戻ってくる。
セフィアが戻ってきた時には、ミカはうとうとしていた。
「お嬢様、今日の夕食です」
「……あ、ありがとう」
今日の夕食は、焼き魚にご飯、味噌汁と簡素な盛りつけだ。
その分、量は多めではある。
栄養面は、日本と比べて魚や味噌汁、米の栄養量が桁違いに多いので、心配はない。
「…ん…ん」
もぐもぐと箸を進めるミカ。
左腕を使えないため、少し行儀が悪い食べ方ではあるが、この場にいる全員が事情を知っているため、何も言わない。
それどころか、それを見て涙する生徒まで出る始末。
そんな中でゆっくり食べられないミカは、さっさと食べ終わり、セフィアの手を借り立ち上がった。
「それじゃあ先輩、私は先に戻ってますね」
「え? ええ、わかりましたわ」
ジェシカは、ミカの食べるスピードに驚いたが、ミカはそんなことは気にした様子もなく、足早に食堂を去る。
足早、と言っても、普段のミカの半分程度のスピードなのだが。
「これでは…先輩が戻ってくる前に寝ちゃう…」
「それでもいいと思いますよ。明日、また改めて説明するというのも手です」
部屋に戻ってきたミカは、1番楽な体勢ということで、ベッドに寝転がっていた。
この状態なら、体の筋肉のどこも使わずにすむ。
しかし、眠たいミカにとって、この体勢は苦痛でもあった。
(……そっか、明日でもいいのか…)
そして、ミカは睡魔に負ける。
「セフィア……あとはよろしく…」
「はい、お嬢様」
そして、ミカが秒で寝落ちしたのを見たセフィアは、少し笑みを作った後、いつもの顔に戻り、ミカの服を寝間着に変えて、タオルケットをかけた。
そこで、ジェシカが戻ってくる。
「まさか、あんなに質問されるなんて思いもしませんでしたわ…」
「どうかなされたんですか?」
「ええ…まあ、ミカさんのことに関しての質問ですわ。今までどこにいたのか、だとか、悪魔をどうやって倒したのか、だとかがメインですわね」
そして、ジェシカはミカを見る。
「あぁ…確かに、先程の食堂でも眠たそうでしたわね」
「明日改めて説明するとの事です」
「ええ、わかっていますわ」
そして、ジェシカはシャワー室へと向かう。
ドアノブに手をかけ、振り返りながらジェシカは言う。
「あなたも、今日はもう休んだらどうですの?」
「いえ、私はもう少しお嬢様の寝顔を見てからにいたします」
「……そう」
セフィアは、自由であった。
「……」
朝。
ミカは、いつもより早いタイミングで寝たせいか、普段起きている時間より1時間以上早く起きてしまった。
「…何しよう」
ふと見れば、ベッドの横に椅子があり、その椅子でセフィアが寝ている。
「……そこまで私のことを心配しなくても」
ミカは、『筋力上昇』を使い、セフィアをなんとか右腕だけでベッドに寝かせる。
そして、そこでふと気づく。
「左腕が……少しだけ、動かせるようになってる……」
ミカが力を入れると、左腕が少しだけ動かせるのだ。
今までは動くだけだったが、今では動かせる。
たとえそれが小さくても、確かに治っていた。
「……よし」
そして、ミカは部屋で『リペア』を発動する。
ミカ自身は緑に発光し、ミカの左腕は青色に光る。
(効果が出るのはかなり後のようだから、今のうちに…)
その日、朝のトレーニングをしていた人達の間で、寮の部屋が光っているとちょっとした騒動になったのだが、ミカの知るところではない。