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うりと夏休み  作者: ぬこ@nuko_nuko


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5




 「しかし、大量にかいこんだな、こりゃ。」


 思わず、ジィちゃん家に戻って、荷物を広げて笑う。

 中でも、目を引くのはかなり大きな、かぼちゃだ。

 明日にでも、例の「歩いて30分位のお隣さん」に料理方法でも聞きにいかないとだな。


 「けーきけーき!」


 ぜってー食いきれねぇ!とか思いつつ、ついつい勢いで買っちまったケーキ、1ホール。

 誕生日につけるようなロウソクまでつけてもらって。


 「なんかいいよなー、俺、ケーキにロウソクたてて、なんて覚えねぇな。」


 おばさんとこにいた頃は、誕生日にケーキでお祝いなんてしてもらったことないし、クリスマスにプレゼント、なんてのももちろんない。

 せっかくのお祝いになるんだし、と思ってついつい買ってきたあたり、俺も浮かれてるんだよな、なんて嬉しそうに今にもケーキに顔をつっこみそうなうりをみて。


 「よーし、先に風呂入ったら、お祝い始めような?」

 「ぁぅっ。」


 頷きつつも目線がケーキから離れない、うり。


 「いい子に風呂はいって、30数えて、そしたらケーキと、プリンと、好きなだけ食っていいんだぞー?」

 「あやとっあやとっ!!いーち、にーい、はーん、ちーい、ごっ!」

 「こら、服ここでぬいでどうするっ!」


 途端に、ぐいぐい服を脱ぎながら怪しげな数を数えて風呂へ向かううり。


 「数えるのは湯につかってからだぞっ。」

 



「じゅーう、じゅーいちっ、にーじぅ、じーじゅはっち、じゅーうごっ!」

 

 走りながらうりが数を数える声がする・・・が。

どう聞いても、間違いなく間違ってるだろっ。

 

 「ゃゃゃああああああ!ぁゃとっ!やとっ!」


 あー、風呂ついたはいいが、フタあけれねーんだな、と思って。

 想像して思わず笑いがこみ上げる。


 ・・って、笑ってる場合じゃないよな、俺も服ぬいで、入りにいくかっ!


 もう、家族、ってきめたんだし、照れる必要もなし、変態でもないし、うんうん、俺オッケー、ノープロブレム、ってやつだ。




 「ぁゃとー」

 「はいはい。」

 「うししししっ」

 「はいはい、下向いてー?」

 「ぁーぃっ!」


 今日は失敗はしないぞ。

 しっかり下を向かせて、頭を洗ってやり、お湯をかける。

 間違いなく、今話しかけたら上向いて「あーい?」って返事するよなーと思って、あえて無言。

 うん、俺、わかってるじゃん?



 ・・・と。


 うりの、木片の首飾りらしいもののヒモが、湯でゆるんだのか、ほどけかけている。

 一度湯を流すのを止めて、


 「うり、そのまま下むいてるんだぞ?」

 「あーいっ!」


 お、えらい。ちゃんと下は向いたままだ。

 うんうん、成長だよなー、なんて思いながらヒモをぐっと両端を引っ張って直してやる。


 「ぅ?」

 「ん?いや、ヒモが解けそうだったから、ちょっと引っ張っただけだ。後で解けるようならもっかいやってやるからな?」

 「ぃゃっと♪」

 「いーえいえっ。」

 


 そして、うりをキレイにした後で、俺も体を洗って、二人並んで湯につかる。

 

 見上げてみれば、満天の星。

 さすが、田舎だよなぁ、なんて当たり前の感想なわけだけど。


 「うり、星がきれいだなー?」

 「だぁー?」

 「ほら、月がまんまるだぞー?」

 「だぞー?」

 「風呂から出たらケーキまるごとなー?」

 「うりのけきっ!!!」


 と、あわてて出ようとするのをぐっと抱きとめて。


 「ほら、数かぞえるぞー、いいかー?」

 「ぅー」

 「んじゃ俺からな?いーち、にーぃ・・・。」

 「はーん、ちーぃ、ごっ!」

 

 


 「っかー、さっぱりしたなぁぁぁぁ。」

 「かー!」


 風呂上り、心地よい風が吹いてくる。

 二人で体を拭いて、頭にタオルを巻き、風呂から居間へと戻る(うりは走る)。

 ほんと風通しがいいもんで、風呂上りにベタベタするとかがないって、いいよなぁ。俺の部屋じゃ、風呂入って、出たらすぐに汗かくもんな・・・なんて思い出し・・・

 

 バタッ。


 「うりっ?」


 柱の角を曲がったあたりで、うりが転んだ。


 「・・・ぅ、ぅ・・・。」


 あ、やばい、うりサイレン。

 慌てて走り出す。


 「うりー、ほーら、ケーキだぞー!?プリンもあるぞー!?いい子は泣かないよなー?」

 「ぅぁゃあああああああああ!」


 うりを抱き起こしてやり、


 「ほら、いいこだもんなー?うり、ケーキたべようなー?」

 「ぅぁぁぁああああああ!ぃちゃああああああ!」


 ひたすら頭を撫でてやり、


 「ほら、痛いとこはどっか投げておこうな?あんまり泣くとケーキたべれないぞー?(むせるから)」

 「ううううりのけきいいっ・・ぅっ・・・ぅあぁあああ!うりぃぃ、なかあいも、なかないよぅぅぅぅ・・っ・・・」

 「お。えらいぞっ!よし、一番最初にケーキたべような?」


 ぐっ、ぐっ、と肩を震わせ、泣き止むうり。


 「うりけきすきいいいいいいい・・・・」


 ぼろぼろ涙がこぼれているのを、必死でぐぅっと唇かんで。


 「よーしよし、うりはいいこだもんな?」

 「ぁぃっ!」

 「んじゃ、向こうまでオンブしていってやろうなー?」

 「あーぃっ!♪」


 とたんに、にこっとわらう。

 まだ、目には涙たまってるけど、すっげー嬉しそうに笑うんだよな。

 ついついつられて俺まで笑顔になるのがわかる。


 「ほら、おいでー?」

 「あーい!」


 うりを背中にのせて、風通しのいい廊下を歩いて、居間まで戻る。

 



 とりあえず、かぼちゃは明日教わるって事で、まずはっ!


 「ぉぉぉぉぅあー!」


 おお、うりが大喜びだ、ニューサイレンが鳴っている、なんて。

 実はかなり俺も浮かれてる。


 「こんだけ並ぶと圧巻ってやつだなー!」

 「にゃー!」


 居間にある、ちゃぶ台。

 その上に所狭しと、ケーキ1ホールをはじめとして、プリンが端から端まで。そして、ビールに、うり専用ジュースに牛乳に・・・。


 「っきゃぁぁぁぁぁぁあああ!」

 「ほらほら、うり、ロウソクだぞっ?」


 おお、うりが大興奮だ、雄たけびが聞こえている、って。

 22歳にして始めて実感。

 

 家族がいて、そんで、ケーキにロウソクたてて、って、顔がにやけるもんなんだな。

 ほんと、テーブルの端につかまってシリ振りながら大喜びして大興奮なうりと、同じようにハイテンションな俺。

 

 明日はお隣さんにかぼちゃの料理方法聞きにいって、とりあえず今日買い込んだ分全部食おう、なんて軽く所帯じみた事を考えて。

 

 「ぁーゃーとっ!ぁーゃとっ!」

 「おっけ、んじゃロウソク火つけようなー?」

 「ぁーぃっ!あいっ!」


 たてたロウソクは、全部で8本。

 それに一つずつ、ライターで火をつけていく。


 「ぅふぅー」


 うり、鼻息でロウソク消すなっ。


 「よしよし、一緒に消すんだぞ?」

 「ぁぃっ!」


 途中で、近づきすぎたうりの鼻息で消えたものの、無事8本に火がついた。

  

 「ぉぉぉぉ!」

 「よーし、そんじゃいくぞー、せーの、でけすんだぞっ?」

 「せーのっ!」

 「ってうりが言うのかっ!って、こら、俺にもっ・・・フー。」

 「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


 うりの合図と共に、一気に吹き消す。

 ただ、ロウソクをケーキにたてて、火をつけて、消す。

 ほんとそれだけなんだけど、なんつーか、特別感。


 「けーきー!」

 「ほーら、口あいてみ?」


 少しずつ取り分けて、最初の一口はうりに。

 あんぐり、とあいた口に入れてやると。


 「っじゃー!」

 「どしたっ!?」

 「んまぁぁぁ♪」


 両腕をバタバタさせて、大喜びだ。

 ・・・んー、いい反応だっ。こんだけ喜ばれたら作る方も満足だよなっ。


 「よーし、おめでとー!」


 俺も一口。


 「おめえとー!」



 やけにうまい、田舎のスーパーでうってる、1ホールで1200円の生クリームケーキ。

 イチゴと、スポンジと、生クリームだけの、ほんとに普通の、ありふれたケーキ。



 「うめえ!」

 「んめぇぇぇ!」


 うりが犬みたいに、ケーキに顔をくっつけてひたすら食べている。

 一口食べるたびに、きゃぁぁぁ、と大喜び。



 「ケーキつまみにビールってのも、いいもんだよなっ!よし、うり、ジュースのめのめ!」

 「のむううう!」


 二人で乾杯して、一気にあおる。

 あーあ、手づかみで食べ始めてる子がいるぞ。・・・って、ほんとうまそうに食うよなっ?


 「うまいか?」

 「うまぁぁぁぁぁああ!」


 こくこくっと頭を振りながらも(顔中についてる生クリームやらプリンやらが飛ぶ・・のをいちいち追いかけて口に入れる)手を止めないうり。


 「そーかそーかっ!」


 その頭をくしゃくしゃと撫でて、ケーキについてたロウソクを台にたてて、火をつける。

 満月の光でかなり明るい、今夜。

 ランプの光と、ロウソクと、月光だけでも不自由なんてないし、聞こえてくるのはうりの声と、蛙の鳴き声と、虫の声。

 どんだけ騒いでも隣に聞こえて怒鳴り込まれる心配も、苦情を気にする事もない。


 「ぷぅー。」

 「・・・うり?」

 「うー?」


 うり、屁こいたっ!


 「ぶはっ!食いながら屁ぇこくなっ!笑っちゃうだろっ?」

 「うり、へーこいたー!」

 「こいたこいたっ!」

 「きゃぁぁぁぁあ♪」


 やべぇ、腹がっ!

 ヒーヒー言いながら笑い転げて、つい俺からもっ・・・


 「ブッ!」

 「!!!!」

 「やべっ。」

 「ぁゃとこいたー!」

 「ああ、こいたっ!」

 「きゃぁぁあああああ!くしゃっ!」

 「くさいとかゆーなっ!」


 鼻を押さえて走り回るうりを捕獲して、横腹をくすぐる。


 「きあぁぁああああ!じゃじゃじゃじゃじゃっ!」


 面白い笑い声だすなっ!つられるだろーがっ。

 思わず噴出した隙にうりが逃げ出して、定位置(プリンとケーキの真ん中)に陣取り、にやにやしながらまた食い始める。

 


 やべぇ、なんか、ほんとに幸せだなって実感。


 別に何も特別じゃないし、有名シェフ、とか、予約いれねーと入れねえレストランとかなんかカケラもないのに、こんだけうまいメシ食ったのっていつ以来だろう。

 エアコンもないし、CDもテレビもビデオも、ない。

 月光と、ランプと、ロウソクだけなのに、なんか明るいし、楽しい。

 暇、だるい、っていうのが、穏やかで、それがやけになんつーか、嬉しいっていうか、楽しいっていうか、幸せっていうか。


 うまくいえないけど、体中の感覚っていうのが開いてるっていうか、麻痺してるところがないっていう感じ。

 何食ってもうまいし、何してても、いい意味で神経全開って感じで、すげぇよく眠れて、朝は目が覚めて、ありえないくらい健康的。

 周りがカラフル、とか昔よくいった言葉かもしれねーけど、ほんとに、これか!って感じで妙に頷いてみたり。


 うまい、とかじゃなくてなんとなくで酒のんで、だるくなったら寝て、また朝になって、っていう感じじゃないんだよな。

 

 今夜、しみじみそう思う。

 そして、酒はうまい、けど。


 「うりー、布団いくぞー?」

 「いーよー?」


 スプーン握り締めたまま、顔中ベタベタにして丸くなって寝ているうりに声をかける。


 「よし、そんじゃ顔拭いて、布団いこうなー?」

 「いーねー?」


 寝ぼけているうりの顔を拭いてやり、抱き上げる。



 

 軽くて、柔らかくて、ひんやりして。



 「ゃゃとー」

 「はいはい、ねるぞー。」


 うん、今夜も涼しく眠れるな。

 うりと宴会の続きの夢でもみるか!




 





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