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「しかし、大量にかいこんだな、こりゃ。」
思わず、ジィちゃん家に戻って、荷物を広げて笑う。
中でも、目を引くのはかなり大きな、かぼちゃだ。
明日にでも、例の「歩いて30分位のお隣さん」に料理方法でも聞きにいかないとだな。
「けーきけーき!」
ぜってー食いきれねぇ!とか思いつつ、ついつい勢いで買っちまったケーキ、1ホール。
誕生日につけるようなロウソクまでつけてもらって。
「なんかいいよなー、俺、ケーキにロウソクたてて、なんて覚えねぇな。」
おばさんとこにいた頃は、誕生日にケーキでお祝いなんてしてもらったことないし、クリスマスにプレゼント、なんてのももちろんない。
せっかくのお祝いになるんだし、と思ってついつい買ってきたあたり、俺も浮かれてるんだよな、なんて嬉しそうに今にもケーキに顔をつっこみそうなうりをみて。
「よーし、先に風呂入ったら、お祝い始めような?」
「ぁぅっ。」
頷きつつも目線がケーキから離れない、うり。
「いい子に風呂はいって、30数えて、そしたらケーキと、プリンと、好きなだけ食っていいんだぞー?」
「あやとっあやとっ!!いーち、にーい、はーん、ちーい、ごっ!」
「こら、服ここでぬいでどうするっ!」
途端に、ぐいぐい服を脱ぎながら怪しげな数を数えて風呂へ向かううり。
「数えるのは湯につかってからだぞっ。」
「じゅーう、じゅーいちっ、にーじぅ、じーじゅはっち、じゅーうごっ!」
走りながらうりが数を数える声がする・・・が。
どう聞いても、間違いなく間違ってるだろっ。
「ゃゃゃああああああ!ぁゃとっ!やとっ!」
あー、風呂ついたはいいが、フタあけれねーんだな、と思って。
想像して思わず笑いがこみ上げる。
・・って、笑ってる場合じゃないよな、俺も服ぬいで、入りにいくかっ!
もう、家族、ってきめたんだし、照れる必要もなし、変態でもないし、うんうん、俺オッケー、ノープロブレム、ってやつだ。
「ぁゃとー」
「はいはい。」
「うししししっ」
「はいはい、下向いてー?」
「ぁーぃっ!」
今日は失敗はしないぞ。
しっかり下を向かせて、頭を洗ってやり、お湯をかける。
間違いなく、今話しかけたら上向いて「あーい?」って返事するよなーと思って、あえて無言。
うん、俺、わかってるじゃん?
・・・と。
うりの、木片の首飾りらしいもののヒモが、湯でゆるんだのか、ほどけかけている。
一度湯を流すのを止めて、
「うり、そのまま下むいてるんだぞ?」
「あーいっ!」
お、えらい。ちゃんと下は向いたままだ。
うんうん、成長だよなー、なんて思いながらヒモをぐっと両端を引っ張って直してやる。
「ぅ?」
「ん?いや、ヒモが解けそうだったから、ちょっと引っ張っただけだ。後で解けるようならもっかいやってやるからな?」
「ぃゃっと♪」
「いーえいえっ。」
そして、うりをキレイにした後で、俺も体を洗って、二人並んで湯につかる。
見上げてみれば、満天の星。
さすが、田舎だよなぁ、なんて当たり前の感想なわけだけど。
「うり、星がきれいだなー?」
「だぁー?」
「ほら、月がまんまるだぞー?」
「だぞー?」
「風呂から出たらケーキまるごとなー?」
「うりのけきっ!!!」
と、あわてて出ようとするのをぐっと抱きとめて。
「ほら、数かぞえるぞー、いいかー?」
「ぅー」
「んじゃ俺からな?いーち、にーぃ・・・。」
「はーん、ちーぃ、ごっ!」
「っかー、さっぱりしたなぁぁぁぁ。」
「かー!」
風呂上り、心地よい風が吹いてくる。
二人で体を拭いて、頭にタオルを巻き、風呂から居間へと戻る(うりは走る)。
ほんと風通しがいいもんで、風呂上りにベタベタするとかがないって、いいよなぁ。俺の部屋じゃ、風呂入って、出たらすぐに汗かくもんな・・・なんて思い出し・・・
バタッ。
「うりっ?」
柱の角を曲がったあたりで、うりが転んだ。
「・・・ぅ、ぅ・・・。」
あ、やばい、うりサイレン。
慌てて走り出す。
「うりー、ほーら、ケーキだぞー!?プリンもあるぞー!?いい子は泣かないよなー?」
「ぅぁゃあああああああああ!」
うりを抱き起こしてやり、
「ほら、いいこだもんなー?うり、ケーキたべようなー?」
「ぅぁぁぁああああああ!ぃちゃああああああ!」
ひたすら頭を撫でてやり、
「ほら、痛いとこはどっか投げておこうな?あんまり泣くとケーキたべれないぞー?(むせるから)」
「ううううりのけきいいっ・・ぅっ・・・ぅあぁあああ!うりぃぃ、なかあいも、なかないよぅぅぅぅ・・っ・・・」
「お。えらいぞっ!よし、一番最初にケーキたべような?」
ぐっ、ぐっ、と肩を震わせ、泣き止むうり。
「うりけきすきいいいいいいい・・・・」
ぼろぼろ涙がこぼれているのを、必死でぐぅっと唇かんで。
「よーしよし、うりはいいこだもんな?」
「ぁぃっ!」
「んじゃ、向こうまでオンブしていってやろうなー?」
「あーぃっ!♪」
とたんに、にこっとわらう。
まだ、目には涙たまってるけど、すっげー嬉しそうに笑うんだよな。
ついついつられて俺まで笑顔になるのがわかる。
「ほら、おいでー?」
「あーい!」
うりを背中にのせて、風通しのいい廊下を歩いて、居間まで戻る。
とりあえず、かぼちゃは明日教わるって事で、まずはっ!
「ぉぉぉぉぅあー!」
おお、うりが大喜びだ、ニューサイレンが鳴っている、なんて。
実はかなり俺も浮かれてる。
「こんだけ並ぶと圧巻ってやつだなー!」
「にゃー!」
居間にある、ちゃぶ台。
その上に所狭しと、ケーキ1ホールをはじめとして、プリンが端から端まで。そして、ビールに、うり専用ジュースに牛乳に・・・。
「っきゃぁぁぁぁぁぁあああ!」
「ほらほら、うり、ロウソクだぞっ?」
おお、うりが大興奮だ、雄たけびが聞こえている、って。
22歳にして始めて実感。
家族がいて、そんで、ケーキにロウソクたてて、って、顔がにやけるもんなんだな。
ほんと、テーブルの端につかまってシリ振りながら大喜びして大興奮なうりと、同じようにハイテンションな俺。
明日はお隣さんにかぼちゃの料理方法聞きにいって、とりあえず今日買い込んだ分全部食おう、なんて軽く所帯じみた事を考えて。
「ぁーゃーとっ!ぁーゃとっ!」
「おっけ、んじゃロウソク火つけようなー?」
「ぁーぃっ!あいっ!」
たてたロウソクは、全部で8本。
それに一つずつ、ライターで火をつけていく。
「ぅふぅー」
うり、鼻息でロウソク消すなっ。
「よしよし、一緒に消すんだぞ?」
「ぁぃっ!」
途中で、近づきすぎたうりの鼻息で消えたものの、無事8本に火がついた。
「ぉぉぉぉ!」
「よーし、そんじゃいくぞー、せーの、でけすんだぞっ?」
「せーのっ!」
「ってうりが言うのかっ!って、こら、俺にもっ・・・フー。」
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
うりの合図と共に、一気に吹き消す。
ただ、ロウソクをケーキにたてて、火をつけて、消す。
ほんとそれだけなんだけど、なんつーか、特別感。
「けーきー!」
「ほーら、口あいてみ?」
少しずつ取り分けて、最初の一口はうりに。
あんぐり、とあいた口に入れてやると。
「っじゃー!」
「どしたっ!?」
「んまぁぁぁ♪」
両腕をバタバタさせて、大喜びだ。
・・・んー、いい反応だっ。こんだけ喜ばれたら作る方も満足だよなっ。
「よーし、おめでとー!」
俺も一口。
「おめえとー!」
やけにうまい、田舎のスーパーでうってる、1ホールで1200円の生クリームケーキ。
イチゴと、スポンジと、生クリームだけの、ほんとに普通の、ありふれたケーキ。
「うめえ!」
「んめぇぇぇ!」
うりが犬みたいに、ケーキに顔をくっつけてひたすら食べている。
一口食べるたびに、きゃぁぁぁ、と大喜び。
「ケーキつまみにビールってのも、いいもんだよなっ!よし、うり、ジュースのめのめ!」
「のむううう!」
二人で乾杯して、一気にあおる。
あーあ、手づかみで食べ始めてる子がいるぞ。・・・って、ほんとうまそうに食うよなっ?
「うまいか?」
「うまぁぁぁぁぁああ!」
こくこくっと頭を振りながらも(顔中についてる生クリームやらプリンやらが飛ぶ・・のをいちいち追いかけて口に入れる)手を止めないうり。
「そーかそーかっ!」
その頭をくしゃくしゃと撫でて、ケーキについてたロウソクを台にたてて、火をつける。
満月の光でかなり明るい、今夜。
ランプの光と、ロウソクと、月光だけでも不自由なんてないし、聞こえてくるのはうりの声と、蛙の鳴き声と、虫の声。
どんだけ騒いでも隣に聞こえて怒鳴り込まれる心配も、苦情を気にする事もない。
「ぷぅー。」
「・・・うり?」
「うー?」
うり、屁こいたっ!
「ぶはっ!食いながら屁ぇこくなっ!笑っちゃうだろっ?」
「うり、へーこいたー!」
「こいたこいたっ!」
「きゃぁぁぁぁあ♪」
やべぇ、腹がっ!
ヒーヒー言いながら笑い転げて、つい俺からもっ・・・
「ブッ!」
「!!!!」
「やべっ。」
「ぁゃとこいたー!」
「ああ、こいたっ!」
「きゃぁぁあああああ!くしゃっ!」
「くさいとかゆーなっ!」
鼻を押さえて走り回るうりを捕獲して、横腹をくすぐる。
「きあぁぁああああ!じゃじゃじゃじゃじゃっ!」
面白い笑い声だすなっ!つられるだろーがっ。
思わず噴出した隙にうりが逃げ出して、定位置(プリンとケーキの真ん中)に陣取り、にやにやしながらまた食い始める。
やべぇ、なんか、ほんとに幸せだなって実感。
別に何も特別じゃないし、有名シェフ、とか、予約いれねーと入れねえレストランとかなんかカケラもないのに、こんだけうまいメシ食ったのっていつ以来だろう。
エアコンもないし、CDもテレビもビデオも、ない。
月光と、ランプと、ロウソクだけなのに、なんか明るいし、楽しい。
暇、だるい、っていうのが、穏やかで、それがやけになんつーか、嬉しいっていうか、楽しいっていうか、幸せっていうか。
うまくいえないけど、体中の感覚っていうのが開いてるっていうか、麻痺してるところがないっていう感じ。
何食ってもうまいし、何してても、いい意味で神経全開って感じで、すげぇよく眠れて、朝は目が覚めて、ありえないくらい健康的。
周りがカラフル、とか昔よくいった言葉かもしれねーけど、ほんとに、これか!って感じで妙に頷いてみたり。
うまい、とかじゃなくてなんとなくで酒のんで、だるくなったら寝て、また朝になって、っていう感じじゃないんだよな。
今夜、しみじみそう思う。
そして、酒はうまい、けど。
「うりー、布団いくぞー?」
「いーよー?」
スプーン握り締めたまま、顔中ベタベタにして丸くなって寝ているうりに声をかける。
「よし、そんじゃ顔拭いて、布団いこうなー?」
「いーねー?」
寝ぼけているうりの顔を拭いてやり、抱き上げる。
軽くて、柔らかくて、ひんやりして。
「ゃゃとー」
「はいはい、ねるぞー。」
うん、今夜も涼しく眠れるな。
うりと宴会の続きの夢でもみるか!




