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世界の片隅で生きるということ  作者: 鈴音あき


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14/14

野草料理を皆で……

エピソード13の炊き出しイベントの回想です。


実在する巣鴨中学校とは無関係です。

完全なフィクションです。

こんな感じで長閑な雰囲気があればいいなぁというご都合主義な出来事をたらたらと綴ってみました。


歴史によるとその後の作物などは凶作となり、深刻な食糧不足で配給が滞ったり闇米の価格が数十倍にもなったそうです。

巣鴨中学校は1912年(1910年私塾4月に開校)明治最後の年に創立された。


木造二階建ての校舎がコの字型に配置されている。


田園風景の中にポツンと中学の敷地はあるのだが、近づいてみれば校舎は大きく立派なものだった。


戦時中であるため、窓ガラスには米の字のように白のテープが飛び散り防止で貼られている。


敷地内には通学してくる学生の足である馬車や人力車、更に裕福な家庭であれば自動車で通ってくる者の為にロータリーが作られていたのだが、戦争が長引いたまま千颯が入学してすぐ、その広い敷地は全て畑として耕され、じゃがいもや玉ねぎ、今は大根を植え付けたりと、多種の野菜が育てられている。


固く踏みかためられていたわだちなども潰して懸命に鍬を振り下ろして作業したのは、奉仕作業の始めの頃のこと。


鍬がなかなか深く刺さらず四苦八苦していたのを今は登校する度に思い出す。


そして学校までの通学路の脇は無秩序に雑草が生え、もう少し季節が進めば土筆(つくし)が出てくるので、昨年に見つけた時は一人で下校中に黙々と摘み取っては持ち帰っていた。


その土筆やヨモギは園田家でおひたしなどに調理され、食卓に出してくれた。


千颯が下校中に道端にしゃがみこんで何かをしているのを級友たちは不思議に思って見ていたが、高階に見つかり手元を覗かれてしまってからは土筆取りの参加者が増え、持ち帰る数が減ってしまった。


他にも食べられる野草があるかもしれないと帰宅してから調べて、下校時に捜し歩く中学生たち。


近隣で中学生が道端で何をしているのかと噂になり始めたときに学校が実態を把握し、ならばいっその事、地域全体で野草狩り大会を催してみんなで雑炊をつくって食べればいい、と、企画が立ち上がった。


これも学校から自治体へと申し合わせがあって、情報を回覧で流し、日時、場所が決まり、どんどん話が進んでいった。


朝から住民や学生が集まり野草摘みをみんなで力を合わせて頑張り、婦人会の女性たちは雑炊の準備を進め、子供たちは美味しいご飯にありつけるとやる気に充ちて手当たり次第に摘み取る野草を詳しい人に一つ一つ聞いては食べられる物を教えてもらっていた。


この子供たちも自分で野草の見分けがつくようになり、家で料理をするようになるのだろう。


この野草雑炊の炊き出し大会をやろうと言い出したのは高階孝一だった。


彼の能力の高さと行動力のおかげだろうと千颯は思う。


学校のご近所さんとの交流も生まれ、和やかな会となった。


そんな季節の思い出もまた野草摘みの大会ができるのかも、酷くなっていく戦争が終わらなければ開催できないのは確かなこと。


新聞で取り上げられるほどの野草の炊き出しは大成功で「地域での助け合いの美談」として掲載された記事は、巣鴨中学の学生の発案から始まったと、しっかりと書かれて高階と千颯の名前が載った。


思いついたら即行動に移す彼の素早い動きは、学校に掛け合い話を詰めてから町内会へとその足で駆け込み、すぐに情報を流した。


あとは隣組に細分化され近隣住民へと話が回覧されて、炊き出しに参加するかは各家庭に委ねて当日を待つだけとなった。


その日は生徒も教師も住民もほど全員が集結した。


とりわけ子供が元気に親の側で走り回り、いつもは接点のない中学生たちと仲良くなり、学生たちは主に子守を担うことになっていった。


農道や道路、畑の畝の間を縦横無尽に駆け回るチビを追い掛け回す学生、子供たちの体力を舐めてかかった学生は野草採取を済ませて学校の校庭に集まり炊き出しが始まる頃にはへとへとになってしまっていた。


それでも遊びに夢中になりすぎてどこまでも逃げていくガキ大将たちを一人も迷子にせずによく遊ばせていた中学生たちに大人たちは感謝し、双方とも有意義な時間を過ごせたとお礼を言いあっていた。


次々と出来上がっていく野草入りの雑炊もみんなで食べたおかげで美味しくいただき、腹ペコなせいなのだが普段はしかめっ面で叫んだり不満そうな顔で味気ない食事をしていた子供たちは、楽しそうに満面の笑みで雑炊を平らげていた。


中学生のお兄さんたちが雑炊を旨そうに食べているのを見て、面倒を見てくれてたくさん遊んでくれた人に懐かないわけがない。


仲良くなったもの同士で隣にならんで食べていると楽しくなり、味は美味しくないのだ美味しく感じたらしい。


いつもの食事風景を知っている親たちはわが子の態度を見て、呆れていたが好き嫌いも言わずにがっついているのを苦笑いをうかべて眺めていた。

「巣鴨中学で炊き出し。2年の高階君と坂上君の発案で近隣住民との交流。道端の野草を摘んで料理を振る舞う姿に日本男児として頼もしくある。」

とかそれらしいことが新聞で書かれていたのではと想像してみたのですが。

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