0、開幕前夜、ガチャと父上浮気の記憶
親ガチャを引く。
子ガチャを引く。
ガチャガチャガチャ。
この世に、
新たな生命が生まれる瞬間に………
何処かの誰もが、一度はガチャを引く。
ワイは、その親ガチャには成功した。
ワイは貴族の家に産まれた。
親は伯爵様。
有能な母上と、無能で優しい父上。
両親にも恵まれて、ワイのひいた親ガチャに、不満などは全くない。
だけれども………
とても残念な事に………
ワイの両親は………
子ガチャ、
男の子ガチャを引いて失敗した。
つまり、なんというか………
ワイは、無能。
生まれつき無能。
それも頭が、やや強めの無能として、
この世に産まれてきてしまった。
ワイ。頭が無能。
その事には、すぐに自分で気がついた。
他人との頭の性能が違いすぎるから。
どれだけ、その他にめぐまれていても。
ワイの無能なアタマは、それら全てを台無しにする。
幸い貴族の子供として育つ過程で、ワイは無能改善育成教育を受ける事が出来た。
そのおかげか、多少なりともワイの頭の無能さは改善したものの………
完全に無能がなおることも無かった。
ワイは頭が残念無念無能のまま、
子供時代を終える。
そして………
そのまま思春期を駆け抜けようとしていた。
そんな
とある日の事だ。
ワイは広い屋敷で
父上の部屋を訪ねると………
「父上、ワイや。ワイ君がきたで〜」
ワイはいつもの様に、父上の部屋の扉をガサツにガンガンとノックする。
すると………
ドカ! ガタゴト!
と
ワイのガサツなノック音よりも、更に大きなゴツイ音が………
何やら父上の部屋の中からした。
「なんや? 父上〜。大きな音がしたで」
「!!!」
中から、何やら不審な音がする。
「どうした? 入るで、む!」
「………!!!」
ガチャっとドアノブをまわす。
が
いつもは鍵などかかっていない父部屋。
父上の部屋のドアに、鍵がかかっていた。
いつもと違う!
父上の部屋のドアは開かなかった。
それだけで………
もう、ワイの好奇心はワクワクよ
そして………
ガタ!
ガタガタ!
部屋の中からは、尋常じゃないほど大きな音がしている。
あれ?
もしかして、コレはただ事ではない?
父上に、何かがあったのかも知れぬ。
と思った。
「父上、大丈夫か! 無理やりドア壊して入るで!」
「ま、待て!」
部屋の中から、慌てた父上の静止の声が聞こえた。
だが、その時にはもう
ガサツなワイは、ドアをぶち破っていた。
ワイは頭の出来は無能だが
身体のスペックには恵まれている。
恵まれすぎている。
この国の貴族が持つ特有のギフト。
ワイは、それを色濃く受け継いでいた。
そのおかげでワイの身体機能は凄く高い。
ゴリラ並や。
父上の部屋のドアを壊すなど朝飯前や。
肉体は高スペックなのに、無能な頭がそれを台無しにする。
それがワイや。
国ではワイの事は、頭以外は完璧貴族とか評判や。
そんなワイは、ガサツに自分が壊したドアの隙間から、父上の部屋に入る。
父上の姿を見て固まってしまった。
………
………………
………………………
父上の部屋の中では………
そこには自室で浮気真っ最中の、あられもない姿。
ワイ君の父上。
そして半裸の魅惑的な赤毛美女。
そんなモノを目撃してしまった。
それがワイの物語の始まりやった。
父上の部屋の中には、半裸の父上と、
父上の護衛(美人)が
コレも半裸でエライカッコ?
エロイ格好で知恵の輪みたいに絡まってた!
ーーーーーー
ワイの父上は、ワイに似てる。
ワイよりはマシとはいえ頭無能やった。
そして………婿養子や。
そんな無能貴族。
ワイの父上。
母上伯爵家の有能赤毛護衛に手を出した。
………と言うか、ワイが父上の部屋を訪ねたところ、浮気現場に居合わせてしまった。
父親のそんな、アレな場面に遭遇した
思春期真っ盛りのワイは…………
『ファ〜〜〜〜!!!』
ついついイロイロ混乱して興奮。
大声で叫んでしまった。
叫ぶ事でストレスを発散してしまった!
ワイの頭は人よりも劣るんや。
特に異常事態に弱い。
理解不能な事に出くわすと、ついつい発狂して大声をあげる悪癖がある。
今も父上の部屋の前で、屋敷中に轟く奇声をあげてしまい。
使用人が集まってきて………
大騒動になった。
つまりは………
父上危機一発が、
父上ジ、エンドになった。
だってワイの父上。
立場の弱い貴族の婿養子。
しかもワイの母上、超怖い。
ワイの大声の奇声。
それを聞いて駆けつけた使用人達に………
彼等にもガッツリと父上の浮気現場は目撃されてしまい………
使用人の口から………
ワイの有能母上に、その事がバレる。
母上は………
『ぎゃおおおん』
と
父上の浮気を聞いて発狂した。
ワイ君は母上の怪獣のような叫び声を聞いて恐れ慄いた。
ただでさえ母上は有能。
つまりは強い。
怖い。
そんな母上が怒るどころか、
発狂したのをはじめてみた。
そりゃあ、ワイの足なんて、
もうガクブルよ。
浮気に無関係なワイがこれだけ怖いんだ。
父上は、どれだけ恐怖してるのだろうか?
女が本気で怒ると怖い。
そりゃあもう怖い。
特にワイの母上は怖い。
我がプラチナム伯爵家は、昼ドラ並みの修羅の家状態へ………
ワイの父上、
元々は無能で優しい婿養子。
中級貴族の出やった。
その父上は浮気のせいで
有能で怖い母上から責められなじられ………
そんな修羅の住む家ことワイ君家。
そこから父上が母上に叩き出された。
ワイは、その様子を震えながら見ていた。
父上はなにか言い訳していたが………
あまりにも、発狂した母上が怖すぎた。
ワイの記憶は一部とんでしもた。
父上が、どうやって家から追放されたかも、あんまり覚えてない。
◆◆◆
一人の異性を愛するほうが
多数の恋人を作って
かまってあげられないより良い
恋人にかまう時間が足りなければ
恋人は貴方の敵へと化けるだろう