別視点 今川終焉間近
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけると幸いです。
また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。(ただし、誤字報告だけで、お願いします。)
なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。
〜義元side〜
ぐぬぬ、伊勢め。河東を取られてしもうた。しかも将軍家を使って和睦なぞ、片腹痛いわ。突っ撥ねてやったわ!腹立たしい!河東を取り戻さんで、なんの和睦か!!そしたら、武田の山猿から横槍の打診が来たじゃと?!側面をついてやるから報酬を寄越せじゃと?!悪くない手じゃが、山猿に根こそぎ持っていかれそうで腹立たしい!伊勢め、何でそんなに勢いがいいんじゃ。扇谷の阿呆どもは何で邪魔をせんのだ。今こそ背後をつくべきぞ。頭が痛いわ。一度寝て、考えをまとめるか。
翌朝のことじゃった。富士が噴火でもしたような断続的な音で目を覚まさせられた。何事かと聞いたのじゃが。
「湯日城落城」
「野田城落城」
「岸の城落城」
「岩田山城落城」
「二つ山南北砦陥落」
「城之腰砦陥落」
「堀之内砦陥落」
「田中城落城」
「八幡山砦陥落」
「小川城落城」
「当目砦陥落」
「東浦城落城」
「花倉城落城」
「持船城落城」
「滝沢東西城落城」
「潮城落城」
「横内砦陥落」
「朝日山城落城」
「大谷砦陥落」
「石脇城落城」
「犬間城落城」
「久野山城落城」
「方上城落城」
「入野城落城」
「花沢城落城」
「朝比奈城落城」
「石上城落城」
「向山砦陥落」
「宮島城落城」
「花沢砦陥落」
「丸子城落城」
「徳順寺城落城」
「船越砦陥落」
「狩野山砦陥落」
「小瀬戸城落城」
「尾佐渡砦陥落」
「相俣砦陥落」
聞こえたのはそこまでじゃった。膝が落ちた。腰が砕けたのかもしれぬ。何が起きておる。この後も、落城やら陥落のあとに誰かが討死と聞いた気がするが、覚えておらぬ。駿府は落ちたようじゃ。母は、龍王丸はどうなった。それよりも清水より西は落ちたと?!どこじゃ、いや、もう終わりか?再起は無理では?誰かが呼んでおる?
「御屋形様!治部大輔様!栴岳承芳!しっかりせぬか!!」
「はっ?師よ、すまぬ。呆けておったわ。」
「致し方ありますまい。しかし、してやられました。三河です。今月の初め、幕府の仲介が入った頃には、遠江・信濃が落ちておったようにござりまする。」
「遠江の者たちは?」
「三河が逃したとは思えませぬ。捕まったか或いは。」
「先程の注進は?」
「水軍による攻撃と同時に情報遮断をやめたのでしょう。見えますかな?清水辺りの海の中に山が見えるのは?」
「あれは何じゃ?」
「三河の、鉄で出来た南蛮船らしゅうござる。話には聞いており申したが、虚報とばかり。あのような大きな鉄船が浮くなど絵空事でござる故。」
「三河は真に神子なのか。駿河から公家どもがおらんなるわけよ。真の神子ならば、帝も動かせよう。」
「しかしながら、一矢報いねばなりますまい。」
「武家ならばさようさな。ところで山猿は?伊勢は?」
「伊勢の勢いが良かったのは、三河と繋がっておったからでしょうな。河東から一歩も出てきませぬわ。それと武田は去りました。」
「去った?!山猿に何があった?」
「太郎と次郎は頭が弾けたと。」
「弾けた?!」
「さよう。頭が柘榴のように飛び散ったとか。その上、躑躅ヶ崎が落とされたと聞き、飯富がようやくまとめて逃げるように退いていきました。」
「はぁっ?三河は同時四国攻めを?ありえぬぞ!三河守は龍王丸とほぼ変わらぬ年であろう!その初陣が四国落としとか!ありえぬぞぉ。」
「実際に南信濃と甲斐を落としたのは陸奥守のようでござる。」
「あの舅殿めが!!なんちゅう奴に味方しとるんじゃ!」
ええい!仕方がない。生きるか死ぬか。たぶん、死ぬじゃろうが。一矢報いねばのぉ。まだ、二十五じゃというのに。死ぬのか。今川当主なぞにならねば。いや、神子と同じ時期に生きておらねば、はぁ。長生きできたのかのぉ。
〜九英承菊side〜
御屋形様が覚悟を決められたか。しかし、弟子を師たる己れよりも先に死なせたりはせぬ。駿河の公家どもはほぼ去っていたが中御門侍従がおったはず。あの方は昔から星見が得意であった。翠光院様や龍王丸様を連れて、砥鹿明神の許へ行っておられよう。ならば、今川家は存続出来る。御屋形様が死なぬならば、この戦の落とし所は、私が全責任を負って死ぬことか。いつなら砥鹿明神の都合が良い?戦中であろうな。死場所を用意してくれるとは剛気なことよ。砥鹿明神!
義元は
幕府からの和睦が九英承菊の策とは知りません。
ええ、幕府側はびっくりでしょうね。
お願いされた側から突っぱねられるなんて




