第九話 天文十三年織田家の方針
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけると幸いです。
また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。(ただし、誤字報告だけで、お願いします。)
なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。
※2022/10/23から20時更新になりました。
元服式の翌日、今年の方針を話し合う大評定がある。その場に、私も三河織田家の当主として臨席する。吉法師兄上も来年元服する後継として臨席している。
吉法師兄上は、あの後顔を真っ赤にしてしどろもどろになったところを畳み掛けて説得した。最終的に弾正忠家を継ぐことに納得してくれたが、やや拗ねた感じがしたので、だいぶヨイショして機嫌を直してもらった。拗ねる意味が分からない。
さて、大評定の前に、父から由々しき事態が発生したと発言があり、私に影守の状況確認がされた。基本的に、弾正忠家の影守は饗談の仕事だ。私は独立した立場なので、弾正忠家の影守には触れていない。吉法師兄上や認知されている兄弟たちには、饗談の許可を得て、追加の影守を私の元から派遣しているだけだ。あくまで、兄弟に対してだ。当主に対して許可を得るなど、分を超える行いはしていないのだ。
なぜか父が凹んで大評定が進みそうにないから、吉法師兄上を促して大評定を始めさせる。いつの間にか部屋の隅でのの字を描き始めた父を無視して、大評定を進めてゆく。ついでに父を見て笑ったように見えた柴田はいじり倒して、父の横で四つん這いになってもらっている。
尾張の方針は北伊勢進出、本願寺を刺激しない方向でと落ち着いた。私から荷之上の服部も本願寺派なので、強行策は取り消してもらうようにお願いした。端っこで二人寂しく茶を啜っている二人は了承したものとして、服部と和睦する方向でまとまった。和睦で服部に送る進物は三河が負担する。これで何かあっても、尾張に否はない。
さて次は、三河織田家の方針だ。詳細は言わないが、そろそろ北条と今川の間で河東の取り合いに終止符を打つ戦いが起こりそうだと伝える。そして、武田家が二家に恩を売る為、途中介入しそうだとも。武田は北信濃を攻めたい。北条は扇谷上杉を関東から締め出したい。今川は本格的に三河を切り取りたい。その三氏の思いを一致させる和睦がなされる前に三河から打って出ると伝える。
茶を啜っていた父が勝家を放置して、こちらの話し合いに戻ってきた。織田弾正忠家は次代も安泰よ、と吉法師を褒めている。吉法師兄上もくすぐったそうだが嬉しそうだ。勝家は、父に手を伸ばして戻ってきて欲しそうだが、放置しよう。
「坊丸、取れるのか?」
「はっ、今川と武田は落とします。北条には富士川以北を渡して、和睦します。」
「そこまで言うなら勝算があると言うことか。」
「はっ、九割まで詰めてあります。武田が動く頃には十全にして見せましょう。」
「いつものあれか。」
「はっ、誰でも勝てる状況です。」
「任せる。昨年より切り取り次第は渡してある。三河以東・以北は任せる。」
「はっ、必ずや期待に添えて見せまする。」




