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よろしくお願いします!
「ミナ! 無事か!」
西門に飛び込んできていた魔物たちを横に払い、颯爽と登場するセツナ。
信じられないかもしれないが、セツナも普通に強い。
忘れがちだが王族であるセツナは、子供のころから一流の剣士や魔道士に身を守るための訓練を受けているのだ!
それで人並み以上の戦闘力が無ければ、まあ、色々マズイだろう。
それに最近、色々あって王族なのに割とヤバ目の実戦経験も多い。
比較するのが、勇者並みの武力や魔力を持つ僕らだということだけだ。
「ミナ! 今すぐ助けるぞ!」
話の流れを知らないセツナには人類を裏切り魔物側に付いたミナの姿は、魔物たちに囲まれた助けなければいけない、ひ弱で健気な愛する人に見えたのだろう。
現実はちょっと違うのだが、新しいオモチャが来たとニヤニヤしている姉上が、真実を語ることはないだろう。
それに、
「ふはははは! こいつ、知ってるぞ! この国の王子様だ! 殺せ殺せ殺せ! その首を掲げ、主都まで進軍しようではないか! いや、やっぱ生け捕りにしろ! こいつを盾に、この町を! さらに主都に攻め込んでやろうではないか!」
デグルドにとって降って湧いたような幸運。
彼女の命令で魔物たちが方向転換し、セツナに牙を向いた。
「あらあら? このままではアレ、五体満足じゃいられませんわね?」
飛んでくる小石をその場から動かず、上半身だけで軽快に避けながら姉上がミナにほくそ笑む。
その間にも、セツナに襲い掛かる魔物は増えていく。
正直、物凄くマズイ。
あの状態の姉上を動かすには、僕が直接行って懇願しなきゃならない。
でも僕もここをどうする?
僕が頭をフル回転してる間に、
「ぐわあぁぁぁぁ!」
セツナの左肩を、ゴブリンナイトの槍が貫いた。
バランスを崩し、馬から転げ落ちるセツナに向かって殺到する魔物たち。
「あらあら? たいへん! でも~。私は大切な人質ならぬモノ質を取られていて、動けませんわね。どうしましょう?」
………………どうやら姉上は手を出す気が無いようだ。
「くっ! なんの! こんなことぐらいで、俺の愛はくじけん! 今行くぞミナ!」
落馬と同時に転がり、魔物の追撃を避けたセツナが、立ち上がりながら長槍を振るう。
「ええい! 面倒臭い奴だ! もう殺しても構わん! こ奴の屍をさらして進軍してやろうぞ!」
デグルドの声に反応し、魔物たちから一切の手加減が無くなり、次第にセツナの腕から、足から、鮮血が飛ぶ。
まだ致命傷を受けてはいないようだが…………。
「マリアーナ! 十分だけここを頼む。一匹たりとも魔物を門から入れるな! ヒルダ! 今すぐ南門に来てくれ!」
姉上を動かすための懇願内容を考えつつ、西門に向おうとする僕の耳朶に、
「ぐわあぁぁぁぁぁ!」
『マガツー君』から耳朶に直接響く悲鳴。
二の腕と太腿。
四肢と腹に剣戟や棍棒、槍の一撃を受けたセツナの悲鳴だ。
「ぐぅぅぅぅ! こんな…………」
体ごと槍を突き刺した魔物と一緒に、地面に倒れ込むセツナが見えた。
「やばい。全然間に合わない!」
予想以上に予想外の事が起こりすぎて、なんかいろいろ間に合わない。
そう思い、
「姉上姉上! お願いです! セツナたちを助けて!」
走る僕の絶叫に、
「あらあら? それはまだ先でよろしくなくて?」
この状況に、まったく動じて無い姉上の声。
その声に、思わずモニターを確認した。
ああ。
姉上、こうなること知ってたな。
駆け出した足を止め、僕は思わずモニターを見入ってしまう。
だって、
「ぼえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
いきり立つ魔物を、さらにいきり立たせ、振り上げた獲物を動かせなくさせた、
「なにっやってんのよあんたたち! コレは私のよ! 殺しちゃダメでしょ!」
ミナが、倒れ込むセツナと魔物の間に滑り込んできたのだから…………。
最後までお読みいただきありがとうございます!
さあ、なんかこの作品では珍しく、ちょっとだけ緊迫してきました?
よくわからない空気の中、物語は最終局面へ!
行くと思います。
多分。
そんな迷走し続ける作者に、応援を!




