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よろしくお願いします!
「ぼえぇぇぇぇぇ! ほらほら! さっさと散って! 後は勝手に町でも国でも滅ぼせばいいじゃない!」
なんか物凄く意外な光景だ。
だってミナ、セツナのこと、モノのように扱ってたじゃん!
王位から遠のいたその日から、まったく相手して無かったじゃん!
そう思ってたのは僕だけでは無かったようだ。
「ミナ……なぜ俺を?」
受けた傷に苦痛の表情を浮かべたセツナも、同じように呆然とした表情で問う。
そんな彼に、ミナは引きつった笑みを向け、
「あ、当たり前でしょ? いくら私が人類を裏切ったからって、あんたには魔物がはびこる世界の、唯一人間が住める国の王になってもらって、それで、王妃になった私の傀儡になって働いてもらう予定なんだから!」
え? なに? ツンなの? デレなの?
僕には良く分からない世界なので、思わずツッコんでしまったのだが、
「…………ふっ、そうか、ならば俺も未来の王妃のため、もう少し頑張らなければな!」
なんか、セツナには理解出来たらしく、槍を支えに立ち上がった。
そんなセツナに、ミナは自分が言ってしまった台詞と、セツナの笑みに戸惑いの表情を浮かべ、
「ちょちょ! べ、べべべべべべ別に、そんな意味じゃ…………………が? がはっ!」
血反吐を吐きながら膝を付いた。
「ミナ!」
魔物が持つ粗末な槍に腹を刺された彼女の元に、槍を振るい崩れるようにして彼女を抱きとめるセツナ。
「ふははは! 魔物一匹殺せぬのに、何が最強の歌姫だ。もうお前など用済みだ。そこの王子と一緒に血祭りにしてやる!」
ボロボロの二人に、魔物たちが襲い掛かる。
「大丈夫だミナ! お前だけは、お前だけは俺が守ってやる!」
ミナの腹を刺していたゴブリンを薙ぎ、周囲を威嚇するように槍をぶん回すセツナ。
慌てて距離を取る魔物たちだが、それも一瞬のこと。
「うおりゃぁぁぁ! 我がローゼンリッター家秘伝の槍術、受けて見ろ! くっ!」
槍の振り終わりを狙う魔物の攻撃に、じわじわと傷を増やすセツナ。
そんな彼の後ろで、腹から槍を抜いて応急処置が終わりながらも俯いていたミナの顔が上がった。
「ねえどうして? どうして私を守るの? 私、人類裏切ったんだよ? 他にも色々人を騙してんだよ? あんたの事だって騙して、王位まで失わせて……それなのに何でよ!」
嗚咽を漏らしながら真実を叫ぶミナ。
セツナはその告白に一瞬だけ手を止め、そのまま槍を繰り出しゴブリンを仕留めた。
「あははは! 確かにお前に騙されて親父には怒られるしお袋にも殴られた。こびへつらってた奴らが手の平反して侮蔑の視線も受けられた。でも、それから俺の世界が変わった。耳触りのいい言葉を吐き擦り寄って来る者の代わりに、口と態度はマジで悪いが、本音で話せる者たちが出来た。書類一枚で分かった気でいた町や村を周り、肌で感じることが出来た」
まあ、何度も死にそうな目に合ってるがなっと再び笑うセツナ。
「こんな体験。普通の王族じゃ出来なかったろ? だからお前に言う。『俺をだましてくれてありがとう。視野の狭い王族から解き放ってくれて、ありがとう』」
「セ、セツナ…………」
攻撃の隙間に、チラリと笑みを向けるセツナに、ぽろぽろと涙を流すミナ。
「え………………お前誰? ちょっと前までバカで、俺様で、甘言が大好きで、調子に乗って姉上に婚約破棄言い放った、あのバカ王子はどこ行ったの!?」
思わずこぼれた声に、この場で戦ってる関係者全員の首肯を感じた。
王位を失ったのが切っ掛けか?
僕らとの濃い~~~~~い時間が、彼の緩慢だった心に変化を起こしたのか?
それは本人に直接聞いてみないと分からないが、
「たかがちょっと強いだけの人間二人に、いつまで時間を掛けてる! 一気にやってしまえ!」
どうやら彼に残された時間は、思った以上に少ないようだ。
さすがに今から行っても、間に合わない。
そう思いながらも、
「ヒルダ! 東門をジオルドに任せて今すぐ来てくれ! マリアーナ! ヒルダが来たらそのまま飛ぶ、三〇分で良いからこの門に絶対防御魔法を張ってくれ!」
出来り限りの指示を飛ばす。
その間にも、魔物の群れがセツナたち迫る。
(間に合わない!)
そう誰もが思った瞬間。
ザンッ!
セツナと魔物たちの間に、星々が集まって出来た流れるような銀糸を持つ美少女。
そう、姉上が立ちはだかったのだ!
そんな女神のような姉上の登場なのだが、
「あらあら? 私、魔物に手出しできないのでしたわ!」
にこやかに不戦を声にする姉上。
「何よ! じゃ、何で来たのよ!」
姉上の不戦を自分が持ってきたのも忘れ叫ぶミナ。
そんな彼女をニッコリ無視して、
「あらあらどうしましょう? 私ったら、こんな所に『ゴージャスデリシャススーパーウルトラどんな傷も魔力も体力も完全復活回復薬』を落としてしまったわ」
セツナに向かって優雅に伸ばした指先から、二つの小ビンをこぼした。
この時、
『完全回復薬…………ゴクリッ!』
そう呟いた声は、完全に無視した。
「これを拾って飲むのも飲まないのも、最後まで足掻くか足掻かないか。全てはあなたたちしだいですわ、『王子様』と『歌姫様』」
そう言い残し、呆然としているセツナとミナ、それと魔物たちに向けて優雅にカテーシーを決めて地を蹴り立ち去る姉上。
「セツナ!」「ミナ!」
魔物たちより一瞬早く立ち直った二人は姉上が落として行ったソレを、視線を合わせて頷き合い、一気に飲み干した。
刹那。
「「ぐぎ? うぷっ、か、かれえぇぇぇぇぇぇぇ!」」
火を吐くように開いた口を天に向ける二人。
「あらあら、言い忘れていましたが、それには血行促進のため、カプサイシンの一〇倍の辛味成分を足しておきましたの」
シルヴァーナ・タリスマン。
彼女はどんな時でも、童心のような悪戯心を失わない少女だった。
あれ? これってコメディーじゃなかったけ?
大丈夫です!
これからグズグズになる予定です!
なにで、応援お願いします!




