第2話 サダノブの日常
昼食後、消費されたチョコレートの空箱を尻目に、ジャージに身を包み、僕は日課のトレーニングに出かけた。
高校から始めた応援団。
インターハイや高校野球が始まると、いろんな会場に出張って行っては、一花咲かせるのが主な活動内容だ。
暑かろうが、寒かろうが関係なく、長ランを羽織りゲタ履きで闊歩していれば、いろいろと言いがかりをつけて来る方々もいる。
そんな方々を丁重にオモテナシ出来るように、鍛錬を積むことも我々の大切な活動内容だ。
諸先輩方には、柔道やら空手、剣道に弓道を嗜む方から、カンフーに少林寺、はてはキックボクシングで腕を鳴らす方もいる。
ほとんど全員が、何らかの有段者というのは、公然の秘密で、生徒会からも一目置かれている。
そんな事もあり、僕は合気道を精進する事にした。
妹も護身術という事で、ともに通ってはいるが…彼女もすでに段持ちだ。
下手をすれば、僕が負けるかもしれない。
閑話休題
明日の決闘に備え、今日はランニングを軽めに、体術に重点を置いたメニュー構成だ。
小春日和の穏やかな午後、気の早い菜の花の香りに誘われながら、三時間みっちりと身体を動かして帰宅した。
夕食を済ませ、明日に備えて長ランを準備していると、二人が怪訝そうな顔で部屋に入ってくる。
「あんた・・・」
「お兄ちゃん・・・」
「「まさか、その格好で行くの?」」
「勿論。
決闘を申し込まれたんだ。
正装でないと失礼でしょ!」
僕の返答に、二人が揃ってかぶりを振る。
妹が切り出す。
「お兄ちゃん。
ワタナベ アカリさんって、知ってる?」
「知らん!」
女性名詞に類する単語などは、小学校以来無縁なのだ。
「だよねぇ…。」
妹が肩を落とす。
「あんた、明日はジャケット、パンツにしておきな。」
母が助け舟を入れる。
「何でだよぉ?」
「渋谷109で決闘するような人はいないでしょ?」
聞き返す僕の肩を両手で抑える母。
「とりあえず、母さんの指示に従う!
いいね?」
「お兄ちゃん、今回はママの指示に従って!」
説得する母の横で、妹も手を合わせてお願いしてくる。
「わかったよ。」
二人の説得を受け入れると、安堵した顔で二人は部屋を出て行った。




