AIが治療を拒む?(5)
米医療専門メディアSTATは、ユナイテッド・ヘルスケアが抱える闇を数年にわたって報道してきた。
報道によると、ユナイテッド・ヘルスケアは医療保険金の請求審査に対しては「nH Predict」というAIツールを使用しているという。
このアルゴリズムは生成AIのような高度のものではなく、過去の膨大な患者データに基づく「予測モデル」となっている。
まず、ユナイテッド・ヘルスケアの担当者が患者の年齢、認知能力、運動能力、日常生活の動作レベル、病歴などをシステムに入力する。
するとその入力に基づいて「nH Predict」は類似した過去数百万件のデータと照合し、「この条件の患者なら、介護施設でのリハビリは◯日で十分」という予測値を一律で出す。
本来は患者個々の回復状況に合わせるべきものに対して、ユナイテッド・ヘルスケアはこの予測値を「保険適用の事実上の上限」として適用していた。現場の医師が「まだ歩けないため、もう数週間の滞在が必要」と診断しても、AIの予測日数に達した時点で保険金の支払いをストップ(却下)する仕組みになっていた。
ユナイテッド・ヘルスケアの担当職員は、AIの予測日数と実際の退院日のズレを「1%未満」に抑えるよう厳格なノルマと人事評価で管理されており、AIの予測を超えて保険適用を認めようとした職員は、解雇の脅しを含むプレッシャーを受けていたとされている。
この件に関しては、2023年11月に集団訴訟が起こされている。
原告側の訴状では、AIによって保険金の支払いを拒否された患者が行政法判事などに不服申し立てを行うと、約90%のケースで拒否が覆り、保険金が支給されるという実態が示された。これは、AIの判断のベースそのものが「極めて不正確」だった証拠とされている。
ただ、不服申立てをすれば高い確率で勝てるものの、実際に手続きを行う労力や知識を持つ患者は全体のわずか0.2%に過ぎなかった。ほとんどの高齢患者は手続きの煩雑さや体力の限界から申立てを断念していた。
結果として多くの高齢者が必要な医療を途中で打ち切られるか、自費で高額なリハビリ費用を払い続けて貯蓄を使い果たすという深刻な事態を引き起こしたとしている。
訴えに対してユナイテッド・ヘルスケアは、
「nH Predictはあくまで医師の決定をサポートする支援ツールであり、最終的な医療上の必要性の判断はAIではなく人間の医師が行っている」
と容疑を全面的に否認している。




