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第64話 五日、③
(行程)難波津
(原文)
「今日、波なたちそ」
と人々、終日に祈る験ありて、風・波立たず。
今し、鴎群れてゐて遊ぶ所あり。
京の近づく喜びのあまりに、ある童の詠める歌、
「祈り来る 風間と思ふを あやなくに 鴎さへだに 波と見ゆらむ」
(舞夢訳)
「今日は波が立ちませんように」と、皆が一日中、お祈りをしたことに、(神仏からの)霊験があって、風も波も、立ちません。
ちょうど今、海の上では、カモメが群れて遊んでいる場所が、あります。
(ついに)京(の都)が、近くなって来た喜びのあまりに、とある子供が、歌を詠みました。
(とにかく無事な航海をと)祈り続けて航海を続けて来ました。
(神仏の霊験で)ようやく風がおさまっている時となりましたが、どうして、海を飛び回って遊ぶカモメたちが、白波に見えてしまうのでしょうか。




