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第61話 四日、③
(滞在地)佐野浦
(原文)
女子のためには、親幼くなりぬべし。
「玉ならずもありけむを」と人いはむや。
されども、「死にし子、顏よかりき」といふやうもあり。
なほ、おなじ所に、日を経ることを嘆きて、ある女の詠める歌、
「手をひてて 寒さも知らぬ 泉にぞ 汲むとはなしに 日頃経にける」
(舞夢訳)
(土佐で亡くした)小さな娘を想う気持ちのためには、親も(気持ちを抑えきれない)子供のようになってしまうものです。
「そんな玉のように美しかったのですか?」と、他人は言うでしょうが、(世間には)「亡くした子供は、美人でした」という「ことわざ」もあります。
今日もまた、(旅は進まず)同じ場所に留まって、日にちだけが過ぎていることを嘆いて、ある女性が歌を詠みました。
手をひたした時には(本来は冷たく感じるのですが)、その冷たさを感じることもない泉(和泉)で(留まって)、水を汲むこともなく(何もすることもなく)、日数だけが過ぎて行きます。




