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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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《オペレーション・ゴルディアス》 XⅨ : 決戦

 「業」は明らかに苦しんでいた。

 斬の攻撃は、確実に「業」に効いていた。

 再生は大いに遅れ、全身が切り裂かれ、潰されていた。

 斬の凄まじい攻撃の故だ。

 斬は、この日のために命懸けで鍛錬し、その成果が確実に「業」を破壊したのだ。

 大妖魔と合体した「業」ではあったが、その肉体は人間のものを引きずっている。

 但し、明らかに「人間」だけではないことも確かだが。

 それでも人間の形をしている限りは、俺たちの攻撃は通用する。

 「業」が手に入れた《位相反射》は確かに恐ろしい技だが、自分が認識した攻撃にしか適用できないことが分かった。

 斬のお陰だ。


 斬は最初「業」の周辺を狙って攻撃し、「業」が《位相反射》を使わないことを確かめた。

 次第に攻撃と「業」との距離を縮め、「業」は自ら動いて斬の攻撃を受けて《位相反射》を発動した。

 それは斬の右腕を吹き飛ばした。

 斬はその時に悟ったのだろう。

 やはり、「業」は自分への攻撃しか相手に返せないのだ。

 「業」は《位相反射》を本格的に使うつもりだった。

 すると斬は今度は手数の多さで「業」を攻撃した。

 同時に自分にも「虚震鎧」を纏い、「業」の《位相反射》に対する防御を展開したのだ。

 残念ながら「業」の「虚震鎧」は通用しなかったが、「業」も幾つもの負傷を負った。

 短時間で再生はしているが、斬の攻撃が「業」を苦しめて行く。

 人間以上の存在になったのだろうが、受肉している限り、それは破壊出来る。

 斬の作戦が功を奏したのだ。

 やはり《位相反射》は「業」の認識に掛かっており、自分への攻撃でなければ使えないことが分かった。

 だから双子が「タイニー・タイド」のオーデン詩集から見つけたように、「業」が認識しない攻撃は確かに通るようだ。

 斬が無作為に多重攻撃を仕掛けたもので、幾つかは「業」を深く傷つけた。

 もちろん「業」もほとんどの攻撃は回避したり《位相反射》で斬に返したのだが。

 斬は最期に近接戦闘を仕掛け、「業」を追い詰めかけた。

 だが、「業」の《位相反射》によって死んだ。

 俺たちは斬の戦闘によって多くのことを知ることが出来た。

 斬は出来れば自分自身で仕留めたかっただろう。

 「花岡」の宗主としての責任感だ。

 斬はそのために、身を滅することも辞さなかった。

 そして最期にあいつは俺に向かって礼を言いやがった。

 長い付き合いの中で、あいつから礼を言われたのは数えるほどしかない。

 自分が「業」を仕留めることしか考えていなかった斬が、それでも何か別な思いも抱いていた。

 常に仏頂面の男だったが、その内側にある深い愛情を俺は疑ったことは無い。

 愛の故に強い男だったのだ。

 そういう奴が、俺に感謝しながら逝った。





 斬による攻撃に肉体を苛まれた「業」は身体を巨大化させた。

 人間の身体では耐え切れない傷を修復するため、妖魔の肉体に変貌したのだろう。

 身長は一気に80メートルになり、背中には長大な触手が数百本も生えた。

 細身とも言える「業」の体型も筋肉の発達したものに変わっている。

 全身が硬度のある剛毛で覆われ、顔も激しい怒りの顔の鬼に替わっていた。

 妖魔的要素が濃厚になったため、傷の修復が高速で進んだ。


 「聖、行くぜぇ!」

 「おう!」


 俺は「業」に接近した。

 「業」は最初は俺が距離を取ると思っていたに違いない。

 斬のやったように、多重攻撃で仕掛け、手数で傷つける方法だ。

 しかし俺も斬の攻撃で、「業」の再生力の高さを知った。

 「業」は傷つけば苦しむようだが、殺すまでには至らない。

 巨大な妖魔と化したことで、「業」の再生力は異常に高まったようだ。

 だから致命傷を与えるために、接近戦を選んだ。

 多重攻撃は、聖がやってくれる。

 俺の信頼する相棒だ。


 「無駄だ、お前の攻撃など俺に通用しない」

 

 俺の「虎王」の連撃を受けながら、「業」は笑おうとしていた。

 俺はその言葉を無視して攻撃を重ねて行く。

 「虎王」は着実に「業」の身体を切り裂き、爆散させる。

 「業」が《位相反射》を使えば、一発で俺も吹っ飛ぶ攻撃だ。

 当然「業」は《位相反射》を使おうとしていたが、俺たちはその兆しを潰しながら攻撃を続けた。

 俺と聖ならではの戦場の感覚だ。

 何度かは《位相反射》を使われ、俺たちはそのレジストに集中しなければならなかった。

 それでも俺たちは「業」を確実に削いで行った。

 その代わり、俺たちの攻撃で傷が多くなると度々変身を繰り返した。

 異形の怪物の姿が幾度も変わり、俺たちも攻めあぐねて行く。

 俺と聖がやられることは無かったが、「業」へも致命的な攻撃は通せなかった。

 「業」は合間にその身体から膨大な妖魔を噴出させながら俺たちを翻弄しようとした。

 だが、どんなに「業」が妖魔を出そうともはや俺と聖にはほとんど無効に等しい。

 もう妖魔などは何の障害にもならなかった。

 むしろ「業」の変身が厄介だった。

 その度に防御法が変化し、俺たちも有効な攻撃方を解析して変えなければならなかった。

 だが、俺たちも次第に「理解」して行き、新たな怪物になっても即座に攻略法を確立していった。

 それでも俺たちはまだ《位相反射》を警戒し、自分が防げない大技を使わずにいた。

 そのため、既に8時間が経過している。

 もちろん「業」も俺たちに通じる攻撃を一切出せずにいた。

 一方的に俺と聖が「業」を傷つけている状態だ。


 俺と聖の攻撃は徐々に「業」を弱らせて行った。

 「業」の防御を着実に突破する度合いを増して行った。

 俺は戦いながら気付いていた。

 もしも「業」が《位相反射》をより磨き上げていれば、今の戦況は無い。

 俺も聖もルイーサのような再生能力は無いのだ。

 だから何故「業」がこの超絶の能力を進化させなかったのかを考えていた。


 「タイニー・タイド……」


 彼女が「業」を留まらせていたのではないのか。

 「業」をそうさせるために、傍を離れることが出来なかったのではないのか。


 「聖!」

 「おう!」


 俺は一層の攻撃を「業」に見舞って行く。

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