再び、宇宙人が。
10月最後の木曜日の夕方。
俺は亜紀ちゃんから緊急の連絡を受けた。
「どうした!」
「タカさん! 宇宙人が来ました!」
「なんだと!」
「今、庭に10人が降りています!」
「何してる?」
「あの、それが、土下座してまして」
「あに?」
とにかく、すぐに帰った。
アヴェンタドールを飛ばして行き門を開けると、すぐに亜紀ちゃんが飛び出して来た。
俺は手を振って玄関を指差し、そこで待っていろと合図した。
「タカさん! まだいるんです!」
「そうか」
俺は一度自分の部屋へ行き、「虎王」を二振り手に持って庭に出た。
「おお! 石神高虎様!」
「なんだ、お前ら?」
「今日はお詫びと、あなた様に今後の服従を誓いに参りました」
「なんだと?」
「大銀河連合」の幹部だと言う宇宙人たちは、俺に事情の説明を始めた。
長くなりそうなのと、敵意が無いのを感じ、俺は家の中に上げた。
ウッドデッキの窓を開けさせる。
「はい、これで足の裏を綺麗にしてくださいね」
亜紀ちゃんが雑巾を全員に渡した。
「……」
全員が一生懸命に、雑巾を使った。
2階のリヴィングに上げ、テーブルに着かせる。
亜紀ちゃんが紅茶でいいかと俺に聞き、俺は何でもいいと答えた。
宇宙人たちに紅茶を配り、ヴァイツェン・ナガノの焼き菓子を置いた。
こいつらが飲み食いするのかは知らねぇ。
「ところでよ、以前はテレパシーだったな」
「はい。今後服従する石神様のために、全員が「日本語」の翻訳機を所持しております」
「日本、およびこの地球の文化も学びました。何か失礼があれば、お教えいただければと思います」
「失礼ねぇ」
「はい。申し訳ございませんが、この地球はまだ発展途上であり、そのために思い上がった連中が以前に大分石神様に失礼を」
「おお! 冗談じゃなく無礼な連中だったな! 「無礼討ち」にしたけどな。ああ、「無礼討ち」って分かるか?」
「はい、もちろんでございます」
「うちの可愛いロボを攫おうとしたり、この地球をぶっ壊すとかな! 亜紀ちゃん、そうだったよな?」
「はいはい! もう頭に来ましたよ!」
「そうだよな!」
思わずやっちゃった皆殺しの上で上空のでかい船もぶっ壊したことで、怒ってないだろうか。
まあ、普通は怒る。
だから、俺は必死に正当防衛だったのだと訴えた。
「それは大変に申し訳ないことを」
「そういえば、上空の船も攻撃したんだけど」
「はい、マザーシップは大破いたしました。クルーの多くが死にましたが、それは自業自得でございます」
「ほう」
随分と下出だ。
でも、あんまり怒ってないようで安心した。
「それで、その復讐に来たわけではないと?」
「もちろんでございます! いえ、実を申せば、先日地球へ向けて小惑星を向けた者が居りました」
「なんだと!」
「ゴラァー!」
亜紀ちゃんが吼える。
「それを、そちらの「#$%&%$」が未然に防ぎ、我々の星系までやって参りました」
「はい?」
話が明後日の方向にぶっ飛んだ。
「我々の統括量子意志決定思念機体「グランマザー」が「#$%&%$」と交渉し、二度と石神高虎様に敵対せずに、絶対服従をすることで何とか星系の破壊をお許しいただきました」
「はい?」
相変わらず、ロボを指すらしい言葉が聞き取れなかった。
「お前ら! タカさんの舎弟になりてぇってかぁ!」
鬼娘が叫んだ。
「しゃてい……はい、その通りでございます。親として仰ぎ、黒いものも白いと頷く。そのような関係でございます」
「待て待て待てぇ!」
「タカさん、いいじゃないですか」
「ばかやろう! こいつらがどんな連中かもまだ分からないんだぞ!」
その時、ドアが開いた。
ロボが入って来る。
いつものようにアヴェンタドールの音を察知して待っていたのだろうが、俺が玄関から入らなかったので、気付かなかったらしい。
「にゃー」
ロボが俺の膝に登って来た。
前足を俺の肩に乗せ、顔をペロペロして来る。
宇宙人たちをまったく気にしていない。
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」」
宇宙人たちが驚いていた。
まあ、表情が動かないのでよく分からんが。
「「#$%&%$」が個人存在に懐いている!」
「こんなことが、今までの観測史の中であったか!」
「ああ! でも石神様も尋常の方ではぁ!」
「そんな! 信じられないほどの高エネルギーだ!」
「神素まであるぞ!」
ひとしきり騒いで、一人が俺に質問して来た。
「あの、石神様はどのような目的で人間社会にいらっしゃるのでしょうか?」
「ん?」
「今は人間の姿をしていらっしゃいますが……」
「俺は人間だぁ!」
「も、申し訳ございません!」
面白くねぇ。
「とにかくよ、今日の所は帰れ」
「はい」
「お前らが何をしてくれるのかは分からんけどな。今のところ間に合ってるんだ」
「タカさん!」
亜紀ちゃんが叫ぶ。
俺は手で制した。
「あ! 一つだけ頼まれてくれ!」
「はい、我々はもう石神様の「舎弟」でございますので」
「俺と一緒に一人ついて来い!」
「はい」
俺は宇宙人を一人、ベンツの助手席に乗せた。
シートベルトを締めてやる。
病院へ向かった。
「響子! 宇宙人を連れて来たぞ!」
「え!」
響子の部屋には、六花もいた。
二人は俺が連れて来た宇宙人を見ている。
身長は130センチほど。
痩せている。
「なにこれ」
「宇宙人だよ! 前にうちに来たって話しただろう! また来たから連れて来たんだよ!」
「着ぐるみ?」
「ちげぇよ!」
「だって」
響子は信じていない。
「おい、何かやれ!」
宇宙人が喉に手を当てて声を震わせた。
「ワレワレハウチュウジンダ」
頭を引っぱたいた。
「おい! なんか決定的なことをやれよ! 疑われてんだろう!」
「タカトラ、もういいよ」
「響子!」
「私、結構忙しいの」
「いつも遊んで寝てるだけじゃねぇか!」
「御機嫌は如何でしょうか、「光の女王」」
「!」
「あんだ?」
「このような場所で拝謁賜るとは思いも寄らず」
「お前、なに言ってんの?」
響子が目を丸くして凝視していた。
「ああ、そうだ! マザーシップを呼べよ!」
「ここでは少々大きさが。では小型のシップをお呼びしましょうか?」
「それでいいや、急げ!」
「はい」
すぐに窓の外が明るくなった。
三角形のちょっとカッチョイイ飛行体が浮かんでいるのが見えた。
「ほら! 響子! 六花!」
「「!」」
「どうだぁー!」
俺は高笑いし、病室を出た。
自分の部屋へ宇宙人を連れて行く。
「部長! 戻ったなら教えて下さいよ!」
一江が俺に向かって言った。
「あれ、それは?」
「おう! 宇宙人だぁ!」
「はい?」
俺は歩いている途中で思いついていた。
こいつらは、うちの監視カメラに写っていなかった。
「おい、誰か写真を撮ってみろ!」
一江がスマホのカメラで撮影する。
「あれ、写らないですよ! 黒いモヤが!」
「そうだろう! おい、今度は写させてやれ」
「はい」
「あ、写った!」
「ガハハハハハハ!」
俺たちは様々なポーズで一緒に写った。
一江と指先を引っ付けてポーズを取らせた。
「お前がE.T.みてぇだな」
「なんですか!」
鷹にも見せた。
窓から小型シップを見せると、鷹は驚いて信じた。
「おし! もう帰っていいぞ」
「はい。ですが、どのように帰ればいいでしょうか。先ほどの場所に戻らないと回収してもらえませんのですが」
「ああ!」
俺は小銭を渡し、銀座線から丸の内線に乗り換えればいいと説明した。
「切符はこの小銭をな……」
切符の買い方も説明した。
「じゃあな!」
「はい、今後ともよろしくお願いいたします」
その夜、ニュースで東京の地下鉄の中で宇宙人のような人物がいたと報道された。
ネットでは動画や写真のサイトで大騒ぎになっていた。




