散らばるピースを当てはめていくこと
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次回の更新は、5/15です。
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ご容赦ください。
Q.エイルさんとのお話合いの後、すぐに旭さんにお手紙を出しました。さて、返事が届くのはいつでしょう?
A.その翌日の朝一でした。
何ということでしょう?
更に話はそれで終わらずに、午後には識さん作の試作ワッペンが届いた。皆お仕事が早いんだが?
エイルさんが言ったように、聴診器を持った白衣の大根、包帯を持った白スクラブの人参、すり鉢と薬草を握った同じく白スクラブの蕪、それからその下にマンドラゴラ達を支えるように配置されたリボンを持つ蜘蛛。リボンの中には「マンドラゴラ医療班」と書かれている。
ワッペン自体は丸く、手のひらサイズなので邪魔になりはしないけれど、刺繍糸の緑と白にオレンジは結構目立ちそう。
そう、刺繍糸。つまり大根も人参も蕪も蜘蛛も「マンドラゴラ医療班」の文字も全て刺繍なのだよ。手が込んでいる。
これをマンドラゴラ医療班に関わる人達全員に見てもらうように手配して、旭さんと識さんにお礼状を出して置く。
レグルスくんにも見てもらったけど、「かわいい!」と褒めてた。
アレだな、なんかキャラクターグッズみたい。
マンドラゴラ医療班が周知されたら、マンドラゴラ医療班印の絆創膏とか応急セットとか売り出すのもいいかも。
冒険者だけじゃなく、一家に一つあればそれなりに役に立つやつ。
その日のうちにパトリック先生やエイルさん達医の一族、それから雪樹の一族の人達、冒険者ギルド、マンドラゴラ村の住人と蜘蛛蜘蛛ネットワーク構成員達へと伝達した結果、ワッペンは全員一致で「いいんじゃない?」という感触。
雪樹の人達は魔物との通訳や物資の運搬とかでマンドラゴラ医療班に関わるし、冒険者ギルドは護衛を頼むこともあるかも知れないし、冒険者自身が医療班のお世話になるかも知れないからね。
概ね解りやすいということなので、次男坊さんにも見本を送付。返事待ちと相成った。
さて、マンドラゴラ医療班に関わる仕事は現行此処まで。
他の仕事にも色々進展があったと言っていいのか、悪いのか。
まず運河の件だ。
工事予定地かつ狂暴な魔物の多い家の当主達は、私の案……魔物退治を請け負う代わりに、何処の領地で倒そうが倒した魔物は菊乃井の物。川を浚って出てきた物も菊乃井の物にする。かつ魔物退治の報酬は、工事で利を得る家が払う物とする……を吞むと言ってきたそうだ。
工事がきちんと行われ、運河が開通すればその収益で回収できると踏んでいるらしい。
まあ、私もあんまり吹っ掛ける気はないけどね。
公共工事の一環として、菊乃井家名義で冒険者ギルドに魔物退治ツアーを組んでもらうよう依頼を出す。
強いのは私やラナーさんが焼き払うけど、そこそこのは初心者講座やスキルアップ研修受講者の授業に充てるつもりでいるからだ。
その費用はそれこそ魔物の素材で回収出来る目算が立っている。
オブライエンに調査させたところ、工事区域の魔物は一番強くても名無し。何だっけな? ライギョだっけ? 陸でも何とか呼吸できる類の魚で、討伐難易度は上の下パーティーがいれば何とかなる程度。
でもなー、それが川の中にわんさかいるんだとー。
まずラシードさんと説得を試みて、それに応じて人里から遠い場所に逃げるのであれば追わない。逃げなければ、まあ、うん。無益な殺生は避けつつ、避けきれないものには対応。そんな感じになるだろう。
工事の前に魔物退治をやる予定で、第一回目の掃討予定が年末になるとかで調整中。あんまり遅くなるのは止めてほしい。
こっちは感謝祭の用意があるんだから。
そしてそこに行くまでにロッテンマイヤーさんが産休に入る。
出産予定はパトリック先生の見立てによると秋の中盤から晩秋。
そうなるとルイさんの育休が確実に感謝祭の準備期間と被るんだ。
その間の代理を務める副代官のグレタさんは、仕事の分量的にはルイさんと同等くらいは行ける。けれど経験年数や事案があまりないので、そのへんをどうするかという課題があってだな。
菊乃井邸に関してはエリーゼと宇都宮さんが分担して、判断に困るところは私が回すスタイルで行く。
帝都のメイド長を呼び戻す案も出たんだけど、あの蛇従僕を監視なしに置くのはちょっと。菊乃井には有益でも、私にとっては要らんことをしそうな気がして。
主にこう、シュタ何とか家の後ろ暗いこととかを炙りだしてくる、とか。いや、シュタ何とかだけならいいけど、北方の某国の色々を今お出しされても……。
そういやアイツの所には水も蜜柑も送ってないはずなんだけどな。なんで色々出来るんだろう。こわ……。
じゃなくて。
諸々不安はあるんだけど、それは産休育休を取る人もだし、その周囲もそう。そういうのを全て解決できるかは分からないけれど、菊乃井には他所にはない強みがある。
遠距離映像通信魔術だ。
それがかかったスクリーンがあれば、在宅で仕事が出来る。
どうしても判断に困ることや相談したいことがあれば、ルイさんの官舎と繋いだスクリーンで意見を聞くことも出来るし、ロッテンマイヤーさんとお話することも可能だ。
逆にロッテンマイヤーさんやルイさん夫妻からの救援要請にも応えられるし、気分転換にもなるだろう。
やってみないことには、修正点も分かんないし。
ロッテンマイヤーさんのお腹も結構目立って来たし、産休自体には夏の終りから突入する。つまりもうすぐだ。
屋敷にいると仕事のことが気になって休めないだろうから、ルイさんの官舎で過ごしてもらう。
それでも日に一度は遠距離映像通信でお話出来るし、会いに行こうと思えば行ける。
後は――。
ちりっと執務机に置いてある鈴を鳴らして、待つこと暫し。
部屋の扉をノックしてぬっと坊主頭が現れた。
「オブライエン、リューネブルク領の様子は?」
「は。大根先生のお弟子さんの見解では、やはり大規模な土壌改良が必要だと」
「今までのやり方では追いつかない、と?」
リューネブルク領で多発するマンドラゴラ行き倒れ事件だ。
春先から色々対応してるんだけど、中々効果が出ない。
魔術で土を耕し、魔素の多い土地から持って来た土を混ぜたり、菊乃井の土を混ぜたり。
そういうことをやってるんだけど、菊乃井の土も他所の土もマンドラゴラの魔力吸収効果が高くて一か月持たないんだよね。
大根先生のお弟子さんに土壌研究家さんがいるんだけど、その人、私が夏休み中に菊乃井に到着して、菫子さんやヴィンセントさんや他のお弟子さんにリューネブルク領の件を聞いて、サッサとリューネブルク領へ旅立ったんだって。
予め自分がいないときに弟子が訪ねてきたらって、大根先生が紹介状を作ってたそうで、それを持ってサクッと行っちゃったらしい。
助かるけど、フットワーク軽過ぎでは……?
それでその人からの現状報告の書類が届いたんだけど、リューネブルク領の土地というか土には圧倒的に魔素が足りないそうだ。
それだけでなく、土が魔素を取り込む量も物凄く少ないんだって。
魔素を取り込めない土地だから、マンドラゴラが行き倒れる。
それでもマンドラゴラはリューネブルク領にいたいみたい。となると理由だけど、これは大根先生の研究で分かった。
「水が綺麗な土地からは離れたくない、か」
植物が育つには水がいる
土が無くても水と太陽の光があれば、生きていける植物もないことはない。でも土は無いより断然あった方が良い。
土中の魔素含有率さえ上げられれば、マンドラゴラにとってリューネブルク領は過ごしやすい土地になるはずだ。
マンドラゴラが増えれば、その葉っぱから色々出来る。ここを逃す手はないんだけど。
色々考えていると、ふと浮かんでくる物があった。
そう言えば、川底の土って肥沃な土が多いらしい。
前世の古代エジプト文明が栄えたのは、ナイル川の氾濫で肥沃な土が供給され、それを利用した農耕が基盤にあるからとかなんとか。
運河に使う川の、その底を浚って出た土が利用できないものだろうか?
魔物だらけの川だ。死骸もさぞや降り積もっていることだろう。
川から魔物が減らないのは、川自体の魔素が多いからかも知れないし。
これ、一回調査すべきでは?
カチリ、と。
何かが何処かで噛み合った音がした。
お読みいただいてありがとうございました。
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本日の活動報告はお休みです。




