世にも奇妙なOne Night Carnival!
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次回の更新は、4/17です。
エントリーナンバー一番の大根が舞台の脇にズレると、今度は人参型なのに大根くらいの太さのマンドラゴラが出てくる。
こちらもハーフパンツは履いているけれど、上半身は裸族。かつ腰には「2」の紙が貼ってある。
緑の尖りのある長い茎をふぁさふぁさと揺らしてウォーキングすると、こっちもやっぱり舞台の中央へ。
それからさっきの大根とは逆に、腕を曲げて胸の前あたりでわっかを作るように力む。肩の筋肉の盛り上がりが凄いんだけど、人参にも筋肉はないんじゃないかな?
長い茎をふっさふさ振って歩く人参の次は、ござる丸には劣るけどそれなり立派な葉を持つ大根。これも上半身は脱いでいて、下半身はハーフパンツだ。腰には「3」の紙で、舞台に立つとこちらに背を向け、両腕をほんの少し曲げて広背筋を誇示するようなポージングを見せる。
エントリーナンバー五番も六番も大根で、七番が人参、八番が蕪だったんだけど、どれも筋肉を見せるようなポーズを取っていた。野菜に筋肉は無いはずなんだけど、見ているとどれも筋肉質、所謂マッチョに見えてくるから不思議だ。
「ぼでーのムチムチって、もしかしてそのままボディーのムキムキ具合のことなのかな?」
「そう、みたいだねぇ。ござる丸もムキムキ!」
そう、舞台上にはエントリーナンバー「9」の紙を腰に付け、着流しの上をはだけたござる丸の姿があって。
身体を横にむけ、右の手で左の手首を握って胸板と腕の筋肉を見せるポーズをビシッと決めてるんだよね。
それぞれエントリーしている選手が出てくる度に、観客のマンドラゴラから歓声が上がったり蜘蛛達が盛り上がっているのかピョンピョン跳ねたりしてたんだけど、一際マンドラゴラの歓声も蜘蛛達のピョンピョンも大きい。
隣にいたタラちゃんが、そっと単語帳で教えてくれる。
「……今回は大胸筋が仕上がってる? 仕上がってるって、なに?」
「へー、ござる丸、ゆうしょうこうほなんだ? すごいねぇ」
綺麗な夜空の下で、私はパチパチと瞬きを繰り返す。大胸筋が仕上がってるってなに?
レグルスくんは朗らかに舞台のござる丸に声援を送っている。
マンドラゴラの生態なんか解んないことばっかりだ。気にしたら負けなのかも知れない。
そういうのを飲み込んで舞台に目線を戻すと、選手が横並びになった。
司会のめぎょ姫が腕を振ってめぎょめぎょ鳴く。
すると選手が一斉に同じポーズを取る。
真っ直ぐ立っているだけに見えなくもないんだけど、胸と首・肩を強調するように腕を少しだけ横に広げてる感じ。
次にめぎょ姫の号令で、腕は広げたまま左に身体を向ける。
人間で言えばさっきは胸筋と僧帽筋、三角筋、腹筋なんかが目立つポーズだったけど、今度は上腕二頭筋と身体の側面にある腹斜筋のアピールが目的みたい。
もうだいたい解って来たけど、お次は背中だ。
めぎょ姫の声に合わせて選手達がこっちに背中を向ける。
腕を前で広げて力んでいるからか、広背筋に僧帽筋、三角筋、上腕二頭筋がミチミチというかカッチカチっていうか。
そして今度は右側を向いて、一周回ってまた最初のポーズに戻った。
いや、もう、本当に何で人参や蕪、大根の腕がバンプアップしてるんだろう? そして何を見せられているんだ?
このコンテストが始まって以来、何度も同じ疑問が浮かんでは消えていく。
隣にいるレグルスくんは純粋にコンテストを楽しんでいるのか、ニコニコでマンドラゴラ達に拍手を送っていた。
さらにめぎょ姫がめぎょめぎょと鳴きつつ手を振ると、選手マンドラゴラ達のポーズが変わる。
そのポーズはござる丸が登場時にやったポーズだ。
ぼんやり見ていると、あちこちからマンドラゴラの鳴き声が上がって。
「うん? なに? 切れてる? え? ござる丸、怪我してるの!?」
鳴いたマンドラゴラは土に埋まって観戦してる子なんだろう。普通に立って観戦している子達の鳴き声に比べて、言語として聞き取りやすい。これ、多分緑の手のお蔭なんだろうな。
土に入っている子の鳴き声の方は、植物の声として伝わりやすいのかも。
それはそうとして「切れてる」ってなんだ?
焦っていると、タラちゃんが尻尾で地面に文字を書いてくれた。
『選手への応援です。身体の出来上がりがキレッキレ』ってあるんだが?
首を捻ると、レグルスくんが隣で叫んだ。
「ござる丸ー! ずどーん!」
ずどーん? 何が?
驚いてレグルスくんを見ると、キラキラのおめめが眩しい。何事も全力で楽しめるのはレグルスくんのとても良いところだよね。
っていうのはさて置き。
どういうことなのか聞いてみると、そのまま眩しい笑顔で答えてくれた。
「きんにくがおおきくて『ずどーん!』ってかんじだなって。ござる丸のきんにくへのおうえんだよ。まえにござる丸がたいかいがあるっていってて、そのときにきんにくをおうえんしてほしいっていってたの。いま、おもいだした!」
「筋肉への応援……? えぇっと、筋肉を褒めればいいの?」
「そうだよ!」
「そっかー……」
そっかー……としか言えなくて、夏の夜。
周りのマンドラゴラ達も、応援するマンドラゴラを思い思いに褒めているようだ。聞こえてくる鳴き声に、それっぽく聞こえるやつが混じっている。
「あにうえも、おうえんしてあげてね?」
「う、うん。えぇっと……」
レグルスくんとタラちゃんがきゅるんっとした可愛いおめめで見上げてくる。
うーん、筋肉を褒めるとは?
レグルスくんの可愛さに対する褒め言葉ならなんぼでも湧いて来るけれど、筋肉に対する語彙なんかは鍛えて来なかった。私が鍛えてるのは、だいたいレスバか煽りかマウント用の貴族用語集みたいなもんだからな。
周囲からは「めぎょめぎょ」「ござござ」に被さるように「腕が暴君ニワトリの手羽先かい!?」とか「良い導管出てるよ!」とかも聞こえる。大根の導管って外から見えるのか?
期待するようなレグルスくんのおめめと、タラちゃんのおめめに焦りつつ。
「えぇっと、えぇっと……。ござる丸ー! 肩にキングベヒーモス飼ってんのかい!?」
「おお、あにうえ! かっこいい!」
「え? そう?」
「うん! おれもー! ござる丸ー! しあがってる! しあがってるよ!」
何が? とは言うまい。だって筋肉だろう?
めぎょ姫の声に、次々とポーズを変えていくマンドラゴラ達に、声援が雨あられと降り注ぐ。
よく聞いていると、褒め言葉もとっているポーズや強調する場所で変わるみたい。
さっきのござる丸お得意の……得意なのか? ポーズだと、上腕筋や胸筋、三角筋に僧帽筋が褒められる。
次に見せた横向きで腕を後ろで組むスタイルはというと、胸筋と腹筋・腹斜筋周りの褒め言葉がかかった。
なんか「バキバキだ!」とか「脇腹で洗濯できるぞ!」とか。うちのメイドさんは洗濯板使わないんだけど、菊乃井の町で見たのかな?
そんな中、ちらほらと緑のみずみずしい葉や茎を褒めるゴザゴザやぴぎゃぴぎゃがあって。
「葉っぱも褒めるポイントなの?」
「うん。カッコいいマンドラゴラ……イケドラゴラは、はっぱがふぁさってできるのがじょうけんなんだよ!」
「ははぁ、そういえば聞いたことがあるような?」
アレは大根先生が越してくることになったときの話か。
レクスの装備を作るのに、マンドラゴラから出来る繊維が必要になったんだけど、葉っぱを毟って材料にって言うので、ござる丸がかなりショックを受けてたんだよね。それだって私の魔力を注げば一晩でふぁさって出来るくらいにはなるから、特に問題にはならなかったはず。
そんなことを考えながら舞台の選手を見れば、たしかに皆葉っぱがみずみずしく長い。
それも「緑の中の緑!」とか「茂ってる! 大草原!」とか讃えられているのか何なのか。
聞くともなしに聞いていると、すっと横からお茶が差し出される。
タラちゃんが出場しないマンドラゴラと協力して、お茶を持ってきてくれたみたい。
受け取って飲んでいると、耳にゴザゴザとともに言葉が入って来て思わず咽る。
「『そこまで葉っぱを伸ばすには、太陽の下で眠るしかない日もあっただろう!?』って、普通に光合成してただけでは……?」
「あにうえ、しっかり!?」
鼻にお茶が入って、滅茶苦茶痛かった……。
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